盛岡にて | The Watch on Ameba

The Watch on Ameba

魅惑の腕時計たちを紹介

『テンプが回ると、やったっ! って、いっつも思うんだよねぇ』
そう言ったのは、2日目のインストラクターのひとり ”斎藤” 氏


全国大会でも優勝経験のある、エントランスホールに飾られた匠の一人だ
(ご自身のパネルの前で1枚写させていただきました)

『あっ!動いた』 そう最初に声をあげたのは、隣の席の男性だった
講師が覗き込むムーブメントに慎重にセットする手が誰よりも震えていただろう

実は彼は昨日も参加していて
うっかりテンプ(時計の心臓部)に巻かれた ”ヒゲゼンマイ” を伸ばしてしまったのだ

ほぼ全員が初めて触る機械式時計の内部
緊張のあまりの出来事だったのだろう、多少は機械体に触った事のある私も緊張して

思うように外せないで苦戦している最中に
隣で講師が解説していたので、つい夢中になって聞いていた

伸びてしまったテンプを受け取り、講師席の双眼(顕微鏡)を覗き始めると
前面のモニターに映し出される

『うん? あれ? 煽ってるなぁ~ ・ ・ ・ 』
そう言いながら双眼を覗きながら変形しているヒゲゼンマイを整えていく

モニターに映し出されたテンプをあやすようにピンセットがご機嫌を直していく
ちょっと目にする事のできない場面だ

それはまるで息も絶え絶えな瀕死の重傷者が
見る見る生気を取り戻していくように、次第に力強い鼓動を再開していくようだった

むかし、時計工場に勤めていた頃に
機械式MVは手に触れる機会はあったが、カレンダー機能と切替機能だけだった

それでも、テンプの刻む鼓動に心がときめいたものだ
不良化したMVをもらって分解してみたくなって先輩に聞くと

『修正に回すからダメだよ』 といつも言われていた (;^_^A 決りだからね

切替機能やカレンダー機能の組み込みを終え、作動確認する際も先輩たちから
『テンプ触っちゃダメだからね、気を付けてね』 と毎回注意されていたので

”ヒゲゼンマイ” に触れるなんて考えた事も無かったし、見る機会も無かったので
喰い入るように目が釘づけになってしまった

目の焼けるような痛みに我に返ると、瞬きするのを忘れていた (;^_^A

伸ばしてしまったご本人は心臓が喉から飛び出すほど驚いたと思うけど
めったに見ることのできないものを見させていただいた

その男性が2日目は真っ先にテンプを組み上げたのだ
その時の声が 『あっ!動いた』 誰もが声を上げずにいられない瞬間だ

σ(・_・) ガッツポーズ付でした・・・

次々と声が聞こえ始める 『あっ!』 『おぉっ!』 『動いてるっ!』
冒頭のインストラクターの 『テンプが回ると、やったっ! って、いっつも思うんだよねぇ』 に
各インストラクターの皆さんが頷く

時計好きばかりなんだろう

1日目の受講者とスタッフの皆さん


1日目は ”体験コース” として、約7割程度の分解と組み直しなのだが
部品を飛ばしてしまったり、φ1,400㎛(昔で言えばμ=ミクロン)のネジをネジ切ってしまったり・・・
時々、悲鳴に近い声が聞こえればたいてい何かやらかしている (;^_^A

もっとも工場では想定しているので予備のパーツもあるし
3名くらいに1名のインストラクターが付いて必要に応じて手を貸してくれる

とは言え、実際にひとりで組立てている気分は充分に味わえる

時計の専門用語がほとんど判らなくても、理解できるように解説していただけるのは
一切の不良内容を知らされずに渡され、解析しながら規定時間内に修理し、
完璧に修理のできた時計を提出後には面談試験が有るのだそうだ

その内容は
まったく時計の事を知らないユーザーが修理依頼したと言う想定で
故障個所を説明し、修理内容までも理解してもらう必要が有るのだと言う

昼の雑談の時にお聞きした裏話には
『お前、そんな事も知らないで試験官が出来るのか?』
と周囲を笑わせたマイスターも初期の頃いらしたとか (;^_^A 役割演技ですからね

専門家なら当たり前のことでも、無知な素人に伝える難しさは
容易に判るだろうが、それがテストされているからこそ噛み砕いて理解させてもらえるのだろう

2日目の受講者とスタッフの皆さん


2日目は ”初級コース” だが、昨日に引き続き10名が受講し
また、昨年の ”体験コース” や ”初級コース” からのリピーターだけど
皆昨日以上に満足そうな表情なのはモザイクがかかっていても判るだろう

昨年からのリピーターの中には9月に行われる
”いわて機械時計士技能評価試験” の受験者もいらした

私らの様に時計の製造・修理に携わらない者にとって受けられる試験は
機械時計士技能評価試験2級が有る

1級やIWマイスターとなると・・・

国家資格である技能検定制度の一種でもある
国家検定時計修理技能士2級、国家検定時計修理技能士1級の保有者で
なおかつ、機械時計士技能評価試験2級合格後1年以上で1級に受験できるのだそうだ

国家検定時計修理技能士は3~1級があり、時計の修理業務に従事していた経歴が
必要なので、この時点で門戸の狭いものになるだろう

IWマイスターともなると・・・
世界で5名しかいないそうだから・・・
挑戦するのは自由なので止めるつもりはないが・・・ (;^_^A やってみる?

今回の盛岡SEIKOで、私が受験出来るものは何かと聞いてみたところ
一般では ”機械時計士技能評価試験2級” だけなのだそうだ

販売店などの技能者ではない方を中心に考えられているからだそうで
より知識を深めてもらう事が目的だからだそうだ

これには今回使用したCal Y675 が試験に使われ、2時間30分で ”初級コース” 程度の
分解・洗浄・給油・組立て・歩度(時計の誤差)調整・外装装着ができれば良いそうだ

技能育成塾課長とお話しする事が出来たのですが
『受験時期が近付くと受験用と同じMVを練習用に貸し出してもいます』 とのことだ

1日目の ”体験コース” では ”歩度” も測定と調整できたが、本来6姿勢測定するうちの1姿勢だったが
2日目の ”初級コース” では時間の都合で省略

その代わり、マイクロホンがどの音を拾っているのか
また、その音の打点から不具合の見方の、ほんのさわりのような事も聞かせていただけた

帰り際に2日目のスタッフの皆さんの写真を撮らせていただきました


上の写真の前列右2番目の方が、2日間の講師をしていただいた ”観音堂” 氏

この方も、もちろんエントランスホールに飾られた匠の一人


昼食後はスタッフの皆さんとおしゃべりをしたり、
いろいろと裏話も聞かせていただけるのだが喫煙所でインストラクターのおひとりから突然

『普段から接しているんですか?』 と聞かれ、思わず
「離れて20年近くになります」 と答えてしまった (;^_^A 別に問題は無いんだけど・・・ アセッタ

私のように心得のある方が2~3名いらしたようだ
『今年は出番が少なくて、つまんないんだよね』 と笑っていた

年々受講者の数も増えているそうで
今年は発表して間もなく締め切り、一部の方は参加をお断りしたそうだ

いや、それならぜひ回数を増やしてとの声も出たのだが
毎年6月の末に開催している理由と言うのが・・・

傑作と言うか目が点になりそうな理由で
今も思い出すとお腹を抱えて笑い出しそうになる ( ̄ー ̄;

書いても良いのだが
これは生で聞いた方が面白いだろう (。・ε・。) 意地悪なのだ

あ! でも、冗談だったのかも・・・ (;^_^A

ホールでは直売もしているんだけど


ここでしかお目にかかれないだろう
盛岡SEIKO のオリジナルモデル


販路も限られていて
一般の SEIKO のショップには出回っていないそうだ

ショーケース越しなのでうまく写らなかったが (;^_^A いや、ウデだな
”SHIZUKU-ISHI” と銘を打たれたこだわりのかたまりだ

もちろん手に取らせてくれるぞ о(ж>▽<)y ☆

2日目の修了証


この2日で初めて時計内部に触った方がほとんどなんだけど
3~5名に1名のインストラクターがついて手ほどきしてくれるので

特に ”体験コース” なら何の知識も無くても
ただ、時計が好きと言う方でも充分に楽しめるだろう

”初級コース” もさほど変わらないような感じだが、分解度がもう少し進み
洗浄をしてから、給油しながらの組み立てになる

また、バンドも体験コースでは革バンドだったが
初級コースでは、若干難しくなるメタルバンドで、皮と比べると組みつけが少し難易度が高い

工具類はすべて用意されているが
使い慣れたピンセットをお持ちなら、ピンセットだけは持参した方が良いかも知れない

工場見学は、予約をすれば応じてくださるそうだが
節電の関係から土日休みではなくなるそうなので、問い合わせをしてみると良い