『君と僕との出会いのキセキ』


小説のWeb投稿が趣味の霧島祐也(きりしまゆうや)。彼はいじめっ子だった文月玲央奈(ふづきれおな)と出会い、人生が変わった。彼女の努力で祐也は生まれ変わり、新しい学園人生を歩みだす。
そんな中、季節は秋、学園祭のシーズン。彼は学園祭の実行委員となり、無事体育祭を終わらせた。
心地の良い疲れとともに熟睡した祐也は次の日の朝……

” 人生で一番の山場を迎えていることに気が付き、最高に居心地が悪く感じている最中であった ”


※ 君と僕との出会いのキセキ ~ 文化祭が始まるっ ~ ※


 今僕は人生の分岐点に立っているだろう……命の危機という……

” どうしよう、どうしよう…… ”

そういう思いしか思いつかない。目が覚めるまでの……あの心地よい睡眠が名残惜しい。しかし時間は刻一刻と進んでいく。見る見るうちに学校に行く時間となってしまった。

「あー……学校行きたくない……」

いつも学校に行きたくないと思うけど。ここまで深刻に行きたくないと思ったのは初めてかもしれない。血を見るかも。憂鬱な気分で学校に向かう。

「フゥ」

一定距離歩くたびにため息が漏れていく。そんな時、僕の後ろから聞き覚えのあるひよこのさえずりが聞こえたような気がする……き、聞こえない聞こえない……

「ち、ちょっと! 何よ! 何で急に早歩きになんのよ! 」

視界の隅にカラーひよこが見えた。見ざる言わざる聞かざる……なんて無理か……

「あ、ああ……いたのか……」

苦し紛れに答える。すると予想通りにひよこはくちばしを尖らせて怒鳴る。最近おなじみの光景になったものだが、やっぱり周りの男たちの視線が痛い。そう思うと玲子はやっぱり人気あるんだなー。

「あ、あのさ、きょ、今日よろしくねっ! 」

ん? 玲子が顔を真っ赤にしながら何か言ってたな……

「あ? ああ」

考え事をしていた僕は生返事をした。するとひよこはいつになくピンクひよこになり……「ちょっと用事あるからまたねー」というと上機嫌で校門へと走り去った。
 その後、僕が教室についた頃、メールが来た。珍しいなと思ってみるとしばらく使われていなかった玲央奈のメールだった。やっぱりまだ学校では会話し辛いからこちらで連絡してきたんだろうな。

『今日は絶対に自由時間は全部私のものだから! 付いてきなさいよ! 』

……うん、玲央奈様らしいメールです。そしてかなり返答に困る。困った挙句、取りあえず言われたとおりにしておく。

『よ、よろしくお願いいたします……お手柔らかに』

さりげなくやんわりと……

『は? なんで遠慮しないといけないわけ? 命令よ! 』

……行くわけないよね……

「うーん……どうしようどうしよう」

僕はつぶやきながら教室に入る。あ、そういえばうちのクラスは何の出し物をするんだっけ……当日まで全く関知してなかったな。妙にクラスの皆が目がうつろなまま作業してたからなぁ。僕は彼らに全てを任せて僕は僕で運営委員の仕事のほうに集中してたんだよねぇ。珍しく岩田は何も言わないし……。

「お! 主役のご登場だ! 」

「ん!? 」

僕が教室に入ると明らかに胡散臭いローブをキモ……いや、着込んだ岩田が僕を指さした。するとクラスの皆が振り返る。っていうか、ナニ、ナニ!? このおどろおどろしい教室の装飾は!! これから闇のミサでもするのかい? 

「さて、教祖様、そろそろご準備をよろしくお願いいたします」

” へ? 教祖様? 準備? な、ななな何をするの!? ”

驚く僕をクラスの皆は岩田の指示で取り囲み、一斉に準備を開始した。その有様を後ろで腕を組む月見里(やまなし)先生が……って何で先生もウンウン言いながら納得した表情してるの!!
 僕は教室の隅に追いやられると、早速用意された衣装に包み込まれる。そして、女性陣がニヤニヤしながら化粧を始めた。僕が準備? を始めて三十分ほど、完成したらしく岩田が満足そうな表情を浮かべた。

「よし、うまくできたな。祐也……いや、教祖様! 」

ん? きょ……きょうそさまぁ? すごいカルト臭がするんだけど……
 戸惑う僕を全身鏡の前に出す。

「…………や、やべぇ…………」

その一言しか僕は出せなかった。正直やばい……

「フム、立派な姿だ! 俺は今、感動している! 」

嬉し涙を浮かべて岩田は拍手喝さいをしている。いや、僕は悲し涙がでそうなぐらいだよ……
 そうそう、今の僕の姿だけど……顔は化粧でかなりビジュアル系になっている。多分僕に化粧をした人がメイクアップがうまいんだろうね。それだけならいいんだけど、服装がねぇ……今黒いローブを羽織っている。中身は着物みたいなんだけど、見るからに怪しい紫色で、薄暗い部屋だととても不気味に映える。胸元には金メッキの首飾りに悪趣味がさらに強化されている。微妙に膝までの垂れた直垂(ひたたれ)が気になる……ズボンはまぁ、予算の都合上普通だった。まぁ一番ひどいのがサークレットなんだけどね。どこから手に入れたのか孫悟空のやつの継ぎ目に手作り感満載のレリーフがあった。

「あ、そうそうサークレットの飾りな、これがうちのシンボルだよ」

「……シンボル? 」

僕がおうむ返しに答えると岩田は満足そうに頷いた。ごめん、どう見ても西遊記の悟空サークレットを無理やりキリンマークの王冠を当てたようにしか見えない……「この部分は俺の提供だ! 」満足そうに答えた月見里先生がとても痛々しい……
 
” こうして僕の一日教祖様体験が始まった ”

なんか薄気味悪い椅子に腰かけてじっとしているらしいんだが……エコノミークラス症候群になってしまわないだろうか……そう思っていると興味津々で入ってきた二人の生徒が……僕に気が付くとクスクスと笑ってこちらを指さしている。とても恥ずかしい。彼女たちは薄暗い部屋からカフェ用の部屋に入る。すると「わぁ~」と声を上げていた。そういえば僕はあっちの方には行ってなかったな、すごい気になる。

「え~! 本当に変わったんだ! すごいね」
「そうね。初めは全く存在感なかったけど……ア、アレアレ! アレが例のやつよ」


「「 アハハハハ!! 」」

何かすごい侮辱されてるような気がしてならない……

彼女たちがクスクス笑いながら僕の座っている目の前を通り過ぎる。明らかに僕は見世物の気がする。しばらく座っていたけど耐えきれそうもない。その時……

「ゆ……祐……也? 」

ひよこのさえずりが聞こえた気がする。気が付かないフリできないよな。振り返ると薄暗い中で更に青白い不気味なひよこがいた……うん、ドン引きしてる。取りあえず無言でひよこを見つめる。すると、ひよこは驚きと焦燥を示し、後ずさった。うん、拒否反応を示してるね。

「ご、ごめん……今日は大事な用事あったんだ……」

そういうとカチコチになりながらひよこは何故か出口から反対のほうに向かってしまった。まともな状況判断すらできないんだろうか。しばらくするとひよこの嬌声? が聞こえた。何だか懐かしんでいるような……更にしばらくすると幸せそうなひよこが出てきたんだが、僕を見るとまたドン引きの表情になり立ち去った。……いったい何が……


ちなみにひよこの大事な用事は……運営委員の人員誘導だった。慌てて戻ってきたひよこは、汚いものを見るように避けつつ要件を話した。

ゲゲッ! もう時間がない……このままで行くしかないのか……」
「……気持ち悪いけど背に腹は代えられないね」

さて、教祖様の格好で誘導することになった僕はというと……これから行う劇の団員だと勘違いされた。午前の部は劇よりも僕の格好ですべて持っていかれたらしい……後でクレームがあったらしいがそんなことはどうでもいい……新たな黒歴史が紡がれた……。
 さて、午前の誘導が終わった後、僕はその恰好のまま屋上で飯を食べていた。フム、この格好だとひよこは来ないらしい。気楽でいいけど……この格好が全てを台無しにしている。
その後、僕はまた教室に連れ戻され、教祖様の席に据え戻された。教室には” 教祖様喫茶 サ○ババ ” とある。
……何となくわかった。後日分かったのだが、喫茶スペースにはお茶やケーキを提供しているのだが、インテリアが宗教っぽいものでまとめられ、さすがに僕のいたところと違って薄暗くなかったようだけど、その分インパクトがある。そして、何よりショックだったのが、過去の自分と立派なカリヘアーになった僕の姿(サイ○バというらしい)が店内に展示されていたようだ。

「間もなく生徒会主催の演劇が始まります! ご覧になる方はしばらく二列になってご整列ください」

演劇午後の部が始まる。それに合わせて観客の整理が始まり、玲子の声が聞こえる。その声に合わせて僕は集まった観客を整理していく。玲子のほかにも声を張り上げて誘導している者たちもいる。そんな中、観客たちは何故か僕を見て演劇に参加する人と勘違いしている節があった。

「お客の誘導大変ね。これから演技なさるんでしょ? 」
「あ、いや……僕はただの誘導で……」

と否定しているのだが全く信じてもらえなかった。そして劇が始まる。僕は役目を終えたとその場を立ち去ろうとしたのだが、スポットライトを当てる人員が勘違いをし、僕を照らす。急な光に慌てると会場のお客さんが一斉に僕を見た。

「…………」
『…………』

僕とお客さん達は無言で見つめあう……というか完全に僕がさらし者じゃないか! そう思うと一気に顔面が紅潮した。その時、劇のマイクが唸りを上げた。

《コラ! そこのサ○ババ! うちの劇にケチをつけるとはいい度胸じゃないか! 》

いや、ケチつけたんじゃなくて、勝手に標的に……と思っているとどこかの時代劇のようなBGMが聞こえてきた。あ~これはあの有名な……

” 甘えん坊将軍のテーマじゃないか! ”

血湧き肉躍るったぁこういうことだねっ! ちょっと江戸っ子になった気分を味わう……ってそれどころじゃない、何これ!?
 ボー然としていると男の声が聞こえた。

《 ムゥ! ここまで来られては……上様とは言え、亡き者になれば問題はないですな! 者ども出会え~出会え~!! 》

ご丁寧に黒子さんが僕の両腕を掴んで演技指導を始めた。え、ええ!? これってまさか……
 驚いているとステージのライトが消え、スポットライトが照らし出される。そこには将軍様というか女王様の格好をした玲央奈が雑魚敵に囲まれた姿で登場した。
彼女は両目を閉じ立っていたが、剣の柄に手をかけ、日本刀を抜いた。それと同時に両目を開き、ポーズをとりながらマイクで声を張り上げた。

《不埒な悪行三昧! 成敗してくれる! 》

すると、お馴染みの殺陣のテーマが鳴り響いた。玲央奈と取り囲むモブ達は文字通りチャンバラを始めた。どうやって覚えたのかわからない玲央奈の華麗な剣さばきでモブ達も華麗に散っていく。かなり練習したんだろうなーと見ているとスポットライトが僕に重ねて付けられた。っていうかライト超熱い! アツイって!

《クックソ! 思ったよりやるではないか! 》

《殿! お逃げを! 》

僕の体を黒子が演技指導する。それに合わせて何故か司祭の格好をした岩田が声に合わせて演技をしている。……というかどこから湧いてきた! と逃げ出そうとする態勢になった時、左右からお庭番二人が僕の両脇に出てきた。そして、何かを言いかけようとする岩田の脳天を脇刺で貫く「ぬうん」と声を発した岩田は白目を剥いて倒れた。……オイ、あれ本気で脳天に突き刺したぞ! 慌てる僕は逃げようとするも黒子に捕まれ逃げられないっ! イヤ! 助けてっ!

” 成敗!! ”

という声が鳴り響いた。するとお庭番が脇刺で僕を挟むように走り抜ける。それに合わせて黒子が僕の口にガムテープを張り付けた。そのガムテープは絶叫の口の形をしたもので今の僕にはいろんな意味で似合っていた。そしてお庭番の一人が通り抜けた時、黒子が信じられない動きを僕にさせた。

” め、目が回るぅ!! ”

平衡感覚が狂うような激しい回転が加えられた。そして、それに合わせてもう一人のお庭番が通り抜けるとその回転が逆転した。

” オ……オエエェェ!! ”

強烈な吐き気を催した。しかしガムテープで声も何も出ない。僕の強烈に血走った眼と絶叫のガムテープが悪代官の悲鳴のようにリアルに再現される。そう、僕は……

” お庭番に切り捨てられたとき、左右にトリプルアクセルをするという大胆なやられ方を演じていたのだった ”

ワイヤーアクションもびっくりだ。そのあまりにもリアルな動きに観客一同は沸いた。

そして、劇は終了した……

 後になって聞いたのだが、本当はもっと別の劇だったらしい。でも、全てをサ○ババに取られたくないという演劇部の策略により急遽同人甘えん坊将軍に脚本が書き換えられたのだという。そもそも、この劇が玲央奈達がやってるなんて初耳だった。おかげで僕と玲央奈は観客からサインの嵐を受け、自由時間が全くなくなってしまったのだった。……もちろんサ○ババカフェも大盛況だったらしい。
 
僕はヘトヘトになってやっと解放された。学園祭も最後のイベントだ。校庭にキャンプファイヤーをしながらその周りをフォークダンスするというお決まりの奴。男性と女性が列に分かれ、踊りだした。

……今日は色々あった。適当に踊りながら僕はフォークダンスの相手を変えていく。ボーッとしていると脳天にチョップが叩き込まれる。超いてぇ! よく見ると赤色のカラーひよこだった。若干口を尖らせている。

「……今日自由時間一緒にいてくれるって言ったのに……」

「……え? 」

疲労困ぱいの僕は聞き返した。すると頬をリスのように膨らませたひよこは「……何でもない! 」とグズりだした。……が、ペア交代ですぐにひよこは姿を消す。横でひよこに緊張して赤くなってる男子をまるでいないものかのように……僕を恨めしそうな顔で睨んでいた。

……フォークダンスでは玲央奈に会うことはなかった。

 家に帰りパソコンを開くとレオさんからチャットのお誘いが来た。

『今日は大変だったわぁー。アンタの止めを刺してからずっとお客さんからサインせがまれちゃって……結局キャンプファイヤー行けなくなっちゃった』
『ああ、そうなんだ』

玲央奈はあれからもずっとファンになった人たちに絡まれていたらしい。玲央奈はめっちゃ輝いてたもんな……黄金色に。

『結局自由時間一緒になれなかったね。ごめん』
『ううん、いいよ。何気に楽しめたから』
『そっか。よかった』


玲央奈にしては珍しく素直だ。僕はというとダブルブッキングを回避できただけでかなり助かっている。だがそんなことを言えるわけがない。知らぬが仏……

『あ、今度さ、埋め合わせっていうわけじゃないんだけど。家に来てよ。正月にお母さんに会えなかったからさ紹介したいんだ』
『え、うん』

……実はもう知ってる。なんて言えない。それは玲央奈の秘密について触れてしまうから。ちょっと躊躇われたけど、でも行くしかないよね。

そのあと僕たちは他愛のない話で時間を潰し、寝た。今日は一杯信じられないことがあったけど、普段の地味な僕とは違って、とても派手な僕でいられたような気がしてちょっと嬉しかった。

そして、今日という日は終わりを告げる。


文化祭が始まるっ END

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ただ今、剣客商売を読んでおります。鬼平犯科帳を読み終えたのですが、作者様急逝のため、作品は未完となってしまいました。

 今更ですが、作者様へ感謝の言葉と哀悼の意を・・・


池波正太郎先生、とても素敵で面白い作品をありがとうございます。そして、お悔やみ申し上げます。


剣客商売は二十一巻あり、今からワクワクしています。これからも面白い作品を発掘しつつ読み続けたいと思っております。

『君と僕との出会いのキセキ』


霧島祐也(きりしまゆうや)趣味は小説のWEB投稿。レオさんこと文月玲央奈(ふづきれおな)と出会い、彼の人生は変わった。最近徐々に小説を書く時間が減っていることを危惧している。土曜日にバイト、そして今週の日曜日には従兄妹の藤島玲子(ふじしまれいこ)と付き合わなければならなくなった。

” 祐也の気は焦るっ! ”


※ 君と僕との出会いのキセキ ~ ひよこのレイコ ~ ※


「ブゥ~お兄ちゃんまたあたしを笑ってる! 」
「あはは。そんなことないって」
「あ~また笑った! 」

少女はそう言うと顔を真っ赤にしてジダンダを踏んだ。でも、僕が歩き出すと、彼女もついてくる。その姿がとてもひよこに似ていた。どこに行っても顔を赤くしながらもついてくる。その姿はとても――

” とても可愛かった ”

「……あ、夢か……」

僕はベッドから飛び起きた。まさか、僕はアイツのことを可愛いと思っていたのか……若干ショックを受けながらも僕は起きた。そう、今日は日曜日、半ば兄貴から強制的に玲子と出かけて来いと言われている。土曜日はファミレスのバイトに出かけた。ん~何かここ最近忙しい気がする。
手早く準備をして、外に行こうとする。その時、隼人(はやと)と遭遇した。

「おっと」「あ、ごめん」

ぼくたちはぶつかりそうになり、お互い声を上げた。隼人は声を上げたあと、しばらく僕をマジマジと見つめて口笛を吹いた。


ヒューッ。お前結構高い服持ってるんだな。全く気がつかなかった。それ” バッロ・ディ・アンジェリ ”のだろ? 」
「え? 兄貴知ってるの? 」

僕は驚いた。兄貴やっぱりファッション系とか得意なのかなと思っていると得意そうに話した。

「まぁ、そりゃな。俺、イタリアでこのブランドの服着てモデルしてたんだからよ」


「え? マジで!? 」

兄貴の予想外の言葉に僕は驚いた。兄貴がモデルの仕事をしていたとか、しかも本場イタリアで。スケールが違いすぎるよ。

「ま、色々あってなー。黎苑(れおん)の誘いもあってね。それで一年イタリアに留学してたんだよ。んで、資金がないから叔父さん頼って出してもらってたんだ。んで、そのお金返そうとしたら叔父さんが……な」
「そっか……そういう事なんだ」
「うん」

僕たちは視線を下に落とした。多分僕たちの頭には同じ姿が想像される。そう玲子だ。僕たちは叔父さんから返しきれないほどの恩を受けた。とても優しい叔父さんだった。その叔父さんが愛した一人娘、彼女の存在。

「……すまんな。これから出掛けるってのにこんなこと話して」
「いや、兄貴のこと全く知らなかったから嬉しいよ。また色々教えてよ。イタリアの生活とかさ」

僕の言葉に隼人は驚いた。そりゃそうだろう。今まで他人との関わりを極力避けていた僕。周りのことなんてお構いなしにいた僕が、自ら相手に接触しようとする。今までの僕を知っていたら皆一様に驚くかもしれない。

「ああ、分かったよ。祐也、ありがとな」

隼人はそう言うと、自分も出かけるからと言い残して、自室に戻っていった。隼人の後ろ姿を見て思った。やっぱり僕は変わった。今まで興味がなかった外界に自ら接触しようとしている。全ては、そう……玲央奈のおかげ……かな。
 そろそろ時間になりそうなので、慌てて僕は最寄りの駅に行って、電車に乗る。そして、学校の駅の次の駅についた。相変わらず繁華街らしく、噴水の前では沢山の男女がソワソワしながら待合いをしている。僕もその一人だ。そして、少し早いかなと思いつつ辺りを見回すと――

” あの玲子も何故かソワソワしつつ僕を待っているようだった ”

ハハッ! アイツ普段強気に話してるはずだが、頻繁に時計を見て不安そうにキョロキョロしてる。その姿がとても……クププッ
ほくそ笑んでいると玲子は僕の姿に気がついた。はじめ嬉しそうに 僕を見つめていると、僕が笑っているのに気がついて、段々と顔色が変わっていった。

「アーッ! 笑っているな! 気がついたら早く呼びなさいよ! 」

玲子は指を指して怒鳴ると、そのまま大股開きでドスドスと歩いてきた。完全に顔が真っ赤だった。まるで大魔神の様相だ。周りのみんなも恐れおののいて見てる。そして、僕の腕を掴むと引き寄せ、そのまま腕を組む状態で引きずり出した。

「チョッ、チョット……」
「うるさい! 」

玲子はそう言うと、顔を真っ赤にしたまま噴水前を後にした。

「う~んこれでいいかなぁ~」

玲子は早速最寄りの服屋に行くと、僕の目の前で、一人ファッションショーを始めた。ん~暇だ。かれこれ三十分ぐらい悩んでは着せ替えをして、僕の前で見せつけてくる。あ~可愛い可愛い……

「ど、どう? この感じ! 」

「ファ~……いいんじゃない? 可愛い可愛い……」

「!! 」

ずっと立ちぼうけで僕は思考が停止していた。あくびをして、死んだ魚の目で適当に反応しつつ、軽く拍手をしながらそんなセリフを言った。すると、玲子は信じられないという表情をしてまた顔を赤くした。

「ちゃんと見なさいよバカ! 」

そう言うと、フルスイングで僕の頬を張っ叩いた。” スパアアァァン! ”と平手打ちの音がフロアに響いた。周りの店員達も驚いて僕を見ている。そう、僕の頬にはとても形のいいもみじ腫れが出来ていた。

「……行くわよ」

そう言うと玲子は、また僕を引きずって、店員達が心配そうに見る中、店を立ち去った。

いやぁ、あの張り手で、僕の心ここにあらずの意識が、本当に現世で亡くなりそうになったよ
 しばらく歩くと、玲子はとある雑居ビルの一角に立ち止まった。ここに何があるんだろう。そう思っていると、玲子はサッサと中に入っていく、当然僕の腕も掴んだままだ。

「ど、どこ行くの? 」
「うるさい。黙りなさい」

玲子はそう言うと階段を上っていく。すると、どこかのタレント事務所だろう。華やかな女の子のポスターがちらほら見えてきた。その中に、玲子がいた。玲子が水着姿でニッコリとウインクしてピースサインをしつつポーズをとっているという内容だった。思わず立ち止まって見ると、玲子は食いついたか。とも言わんばかりに話しかけて来た。

「私さ、モデルやってんだ」
「へぇ……そうなんだ」
「……思ったより反応薄いな……」

玲子は勝ち誇った顔から、一気に残念そうな表情に変わった。確かに玲子がモデルしてたのは驚いたけど、今朝隼人がイタリアでモデルしてたって話してたからなぁ。何か、無意識に比較しちゃったんだよね……

「と、とにかく事務所に来なさいよ」

若干焦り気味の玲子は、僕を無理やり自分の所属事務所に入れる。すると、事務所にいた社長さんと思われる女性の人が僕を見ると、嬉しそうに事務所の応接室に連れて行った。しばらく応接室で待機していると、玲子は大きな写真の入った冊子を持ってきて見せてきた。社長もニコニコしながら見つめている。何なんだ……

「ど、どう? 」
「うん、可愛いね」
「……それだけ? 」

僕は頷く。玲子は目が点になっている。その顔がとてもひよこ見たいで可愛い。うん、ひよこは可愛いよねっ

「はぁ……今までの私は何だったんだろう。無駄だったのかな……」

そう言うと玲子は燃え尽きたように真っ白になった。社長も悲しそうな目で僕と玲子を交互に見ていた。社長さんは何か事情でも知ってるのかな。そう思ったけど、あえて聞くことはしなかった。

 事務所を後にして、僕たちは帰りの途に着く。玲子は青い顔のまま、僕のあとについて行く。まるで調子の悪いひよこが付いてくるような頼り無さだった。チョット罪悪感があった僕はほぼ常連となりつつある喫茶キャッツアイに行った。僕はコーヒーとケーキ、玲子はコーヒーとパフェだった。ん~僕の知る女性陣は皆パフェが好きだな……無表情のまま絶え間なく食べ続けている。そして全部食べ終えると視線を落として外を見つめていた。

” 頬にパフェのクリーム付いてる…… ”

気になった僕は玲子の頬についたクリームを拭ってやる。すると玲子は顔を真っ赤にして怒った。

「な、何すんのよ! 」

「あ、いや。頬にクリームついてたからさ……」

「なら言いなさいよ! 」

そう言うと玲子は癇癪を起こして、僕の言うことを全く聞く耳持たなくなった。仕方なく喫茶店を後にして、駅に行く。相変わらず玲子は僕の後ろを付いてきた。でもさっきのような青い顔じゃなくて赤い顔。プンプンしながらついてくる。それが、今朝見た夢とソックリだった。噴水の前についた時、僕は振り返った。すると、夢の時と同じようにプンプンしながらも玲子は、一定の距離で立ち止まった。そして僕を睨みつけている。その姿を見て思わず微笑む。


「な、何がおかしいのよ! 」
「あ、いやチョットな……」

” 相変わらずお前可愛いな ”

僕はひよこのレイコはいつもこんなんだったと思いつつ、そう言った。すると玲子は口をパクパクしながら信じられないぐらいに顔を赤くした。さながらゆでダコのようだ。

「ば、バカッ! 」

そういうと玲子は僕をグーで殴りつけ、そのまま駅のホームへと走り去った。超イテェ!! 

「な、何なんだ一体……」

僕は一人、痛む頬を押さえつつボーゼンと玲子がいなくなった駅の入り口を見つめていたのだった。

~ ひよこのレイコ ~END


↑申し訳ございません・・・今更ですが25話投稿し忘れていたようです…慌ててうpさせていただきました。ご迷惑をおかけして申し訳ありませんm(_ _)m


『君と僕との出会いのキセキ』


小説のWeb投稿が趣味の霧島祐也(きりしまゆうや)。彼は文月玲央奈(ふづきれおな)と出会い、人生の大きな転換期を迎えた。二人の周りにはいろんな女の子が増えてきた。二人の時間を共有しようと 玲央奈が画策するもあえなく水泡に喫した。
全ては祐也の鈍さと、彼女の努力の賜物である祐也の男磨きそれだった。
悶々とする玲央奈。そして、時期は夏から秋に代わり、体育祭と学園祭が行われるのだった。


※ 君と僕との出会いのキセキ ~ 学園祭始まる前編 ~ ※

さて! 9月に入った。たるんだお前らの脳みそと体を叩き直してやる」

担任の月見里尊(やまなしみこと)先生の言葉に皆がげんなりとした顔をしている。夏休みが終わり秋になり、休み明けのテストが行われる。それが終わると、休む間もなく体育祭と学園祭が連日行われるのだ。ま、テストはともかく、僕はどっちも興味ないしやる気ないけどね。

「……というわけで、体育祭の役割分担はこれでいいな」

月見里先生はそう言うと、次の議題に入る。

「さて、次は学園祭に移ろうか。俺たちの教室の出し物は何がいい? 意見のあるものは挙手してくれ」

「…………」

途端に教室は静かになる。皆ろくな意見を持っていないんだろうな。ま、僕もだけど~

「意見は……ないのか? 」

そういうと月見里先生はそういうことを見越していたのだろうか。紙を用意していたようで、一人一枚配り、どんな意見でもいいから出し物を一つ記入して提出することと言い残し、会議は終了した。

『ん~全然思いつかないや』
『まーそだろうねぇ。うちらはもう決まったよ』


僕は家に帰ると、小説を書き始めた。するとレオさんからのコーリングが来た。小説を書きながら僕はレオさんとチャットを始めた。最近僕は器用になったなと思う。小説書きながらチャットって普通は無理じゃん。だけどずっとしていたら何故か両方両立できるようになった。人間ってやればできる子なんだね!

『へぇ~すごいな。何になったの? 』
『喫茶店だよ~』

フム……手堅く攻めてきたな。僕もそれでいいか。月見里先生に渡された紙に適当に喫茶店と書いて終わらせた。
次の日、月見里先生から提案の紙の回収があり、後日発表のこと。そのまま休み明けのテストが始まった。


テストも終わり、月見里先生からの発表が何故かなく、僕は寝不足のまま学園祭と体育祭の準備を始めた。正直やる気がないんだけど……

「ちょっと! なんでいつまでたっても来ないのよ! 」

聞き覚えのあるひよこのさえずりが聞こえたので、聞こえたほうを振り返ると真っ赤なカラーひよこがいた。完全なまっかひよこ……クププッ

「ダアアア! 忙しいのに何訳のわからないにやけ顔してんのよ! 行くわよ! 」

僕はにやけた顔のままカラーひよこのビンタを食らって失神したのだった。
気が付くと、体育祭実行委員会と黒板に書かれた文字が見える。どういうことだ……不思議そうに見つめているとカラーひよこが悪びれるそぶりもなく言った。

「……あんた体育祭の実行委員だったの知らなかったの? 」

「…………え? 」

僕は言葉を失った。……いつの間に決まったんだ。と考えをめぐらす。しばらくして気が付いた。そう言えば僕寝てたっけ。それをいいことに勝手に決めたのか……。怒りを覚えるが、その時に寝ていた僕も悪い。怒りの方向が分からず迷走している。

「で、でも……あんたが実行委員してくれてたなんて……ちょっと嬉しいかも……」

赤いカラーひよこの言葉を聞いて言葉を失う。そんなに僕の罰ゲームを見るのが楽しいのか……。
 しばらく学園祭の内容が告げられ、僕たちは誘導の係りとなった。競技に参加する人や、催し物の人員誘導など、雑用が主である。他の仕事と比べると簡単らしく、決められた誘導以外は自由時間になっているようだ。しかも特例で複数の競技にでなくてもいい……と。これはこれでいいかもしれない……。

「……何ニヤニヤしてんのよ……気持ち悪いわね」

カラーひよこは僕を睨み付けるがどうでもいい。暇な時間は一人で楽しく時間を使わせて貰おうフフフ……。

「あ、あのさ、迷惑じゃなかったらあたしと自由時間一緒に行動しない? 」

「……え? 」

委員会の会議が終わり、資料をかばんに入れて帰っている時、ふと玲子が何かを言ってきた。暇な時間に何しようかと考えていた僕は素っ頓狂な声を上げて反応した。すると、頬を桜色に染めたピンクのカラーひよこは見る見るうちに真っ赤なカラーひよこに変身した。おー……すごい色の変化! 夕方だから更に赤みが増して……めっちゃ怖い!

「このバカッ! 」

そう言うと玲子は目に涙を浮かべそのまま全力の張り手をかましてきた。ブハッ! 超いてぇ! 
 気を失わなかったことだけは奇跡かもしれない。痛む頬をさすりながら僕は理由もわからず佇んでいた。


『よしっ! じゃあアンタ暇な時間私と一緒に行動しなさい』

レオさんからの命令がチャット画面に出てきた。あまりにも明確な命令過ぎて二度見しちゃったよ。
 僕は痛む頬をさすりながら帰宅し、玲央奈とチャットをしていた。その時、今日あった出来事を報告していた。

『え? 何でさイベントとかめんどくさいよ』
『コラッ! 女の子の誘いを断る男子がどこにいるっ! 』

え? これ誘ってたの? 僕は思わず目を見開いた。誘いじゃなくて、命令だよね……?

『てっきり命令だと思ってたんだけど』
『は? 何言ってんの? 行くか行かないかどっちなのよ』


レオさん完全に強制モードですね。雰囲気的に言って断ったら僕の死亡フラグが立つだろうね。正直断る勇気がない。

『うん、分かった』
『素直でよろしい』

素直……か。素直な僕の意見を言ったら間違いなく僕は地獄を見るだろうね。この場合のレオさんの言葉を言い換えると” 従順でよろしい ”だと思ってる。まぁ、口が裂けても言わないけど。

『ま、誘導だから何も準備いらないんでしょ? 』
『うん、そのまま体育祭と文化祭すればいいよ』
『ふぅん……そっか。文化祭楽しみだね』


レオさんはそう言うと夕飯だからとチャットを退出した。一人PCの前で僕は物思いに更けていた。ふと、玲子の言っていた言葉が分かった気がした。もしかしたらアイツもレオさんと同じで一緒に僕と行動したかったのかなと。そう思った僕は玲子に電話する。

《……何か用? 》

玲子の冷め切った声が聞こえる。取りあえず自分が思ったことを伝えてみよう。

《なぁひよこ……》《ひよこ言うなっ! 》

しょっぱなから玲子からブチ切れられた。イラッとするがここは我慢だ。

《あのさ、お前が迷惑じゃなかったら、自由時間一緒に行くか? 》

《ヒ、ヒウッ! 》

ん? 何か予想外の声が聞こえた気がする。普段のひよこの声じゃない……なんか新鮮だ。しばらく不規則な息遣いと《な、な、ななな……》とか聞こえる。アレ? あの時アイツが言った言葉と違う? 一気に不安感が募る。

《あ、僕の勘違いかな? 迷惑なら……》《い、行く! 行くに決まってんでしょ!

玲子にしては珍しい発言だった。ちょっと声が上ずっていて面白い……クププ。まぁ、可愛い妹のお守りぐらいしてやるか。

《へ、へへ! 文化祭楽しみだねっ!
《お、おう……》


しばらく玲子は上機嫌でいつもの刺々しさがなくて、とても違和感バリバリだったのは言うまでもなかった。

《じゃ、じゃあまた明日っ!

玲子はそういうと電話を切った。たっぷり三十分ぐらい話しかけてきやがった。

「さて、小説書くかな」

僕はチャット画面を閉じて、小説を書き始めた。その時、一瞬レオさんの履歴文字が見えた。ん? なんか引っかかる気がしたけど……まぁいいか。

来週は体育祭。運動が不得意な僕は全然活躍の場はないだろう。普通に実行委員会にいて良かったかもしれない。その時は楽観的にそう思っていた。

” そして学園祭が始まった ”


~ 学園祭始まる前編 ~END

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↑只今読んでいる本鬼平犯科帳!5巻まで行っていますが、かなりおもしろかった。時代劇のものだと思って敬遠したらもったいないと思います。
 基本盗人を捕る話ですが、主人公の人柄、人間臭ささ、そして何より盗人の人間関係(笑)が物語にものすごい感情移入させていきます。
 盗人も人間、捕縛され処刑されたら復讐心が沸いてきますよね。その人間臭さが自分にとってとても面白味のあるところだと思っています。
・・・何気にそういうところが自分の作風と被っているような気がしないでもない・・・