第8話 冷徹なる義眼
◆◆オーベルシュタインの野望◆◆ (ラインハルトVSオーベルシュタイン)
オーベルシュタイン
違うでしょう。イゼルローン駐留艦隊旗艦のただ一人の生存者である私は、生き残ったという正にそのことによって処断されようとしているのです。この通り、私の両目は義眼です。弱者に生きる資格なしとした、あのルドルフ大帝の治世であれば、とうに抹殺されていたでしょう。お分かりですか、私は憎んでいるのです。ルドルフ大帝と、彼の子孫と、彼の生み出したすべてのものを。
ラインハルト
大胆な発言だな。
オーベルシュタイン
銀河帝国、いやゴールデンバーム王朝は滅びるべきです。可能であれば、私自身の手で滅ぼしてやりたい。ですが、私にはその力量がありません。私にできることは、新たな覇者の登場に協力すること、ただそれだけです。帝国元帥ローエングラム伯ラインハルト閣下。
ラインハルト
卿は、自分が何を言っているのか分かっているのか。
オーベルシュタイン
無論です。何度でも言いましょう。ゴールデンバーム王朝は、滅びるべきなのです。そして、その後、新しい帝国を創る方は、閣下をおいて他にいません。
ラインハルト
キルヒアイス!オーベルシュタイン大佐を逮捕しろ。帝国に対して反逆の言質があった。帝国軍人として看過できぬ。
オーベルシュタイン
所詮、あなたはこの程度の人か。結構、キルヒアイス中将一人を腹心と頼んで、あなたの狭い道をお行きなさい。キルヒアイス中将、私を撃てるか?私は、この通り丸腰だ。それでも撃てるか。撃てんだろう。貴官はそういう男だ。尊敬に値するが、それだけでは閣下の覇業の助けにはならん。光には必ず陰が従う。しかし、お若いローエングラム伯には、まだご理解いただけぬか。
ラインハルト
キルヒアイス。…ふん、言いたいことを言う男だな。
オーベルシュタイン
恐縮です。
ラインハルト
ゼークト提督からも、さぞ嫌われたことだろう。
オーベルシュタイン
あの提督は、部下の忠誠心を刺激する人ではありませんでした。
ラインハルト
良かろう、卿を貴族どもから買おう。
◆◆二人の誓い 2 ◆◆ (ラインハルトANDキルヒアイス)
ラインハルト
あんな奴ら。あいつらは人を何だと思ってるんだ。支配するのが当たり前だという顔をしてやがる。人から奪うことも、人を踏みつけることも、自分たちには許された特権だとでも言うのか。あいつら腐りきっている。この帝国は腐りきっている。
キルヒアイス
ラインハルト様。
ラインハルト
俺が、あのルドルフを許せなく思うのは、皇帝になって何をしたかだ。自分に媚びへつらう者を貴族に据えた。その結果が、あのていたらくだ。こう考えたことはないか、キルヒアイス。ゴールデンバーム王朝は人類の発生とともに存在したわけじゃない。あのルドルフが創ってから、たかが500年だ。
キルヒアイス
ええ。
ラインハルト
その前は、その前は皇帝などおらず、ゴールデンバーム家もただの一市民にすぎなかったってことだ。もともとルドルフは成り上がりの野心家にすぎなかった。それが時流に乗って神聖不可侵の皇帝などに成りおおせたんだ。
キルヒアイス
ラインハルト様。
ラインハルト
キルヒアイス。
キルヒアイス
はい。
ラインハルト
あのルドルフに可能だったことが、俺に不可能だと思うか。大丈夫誰もいない。
キルヒアイス
ラインハルト様、その様なことを口にされては。
ラインハルト
大丈夫だ。キルヒアイス、お前だけだ。どうだ、不可能だと思うか。
キルヒアイス
(やるかもしれない、この人なら)
ラインハルト
一緒に来い、キルヒアイス。二人で宇宙を手に入れるんだ。
キルヒアイス
宇宙を手にお入れください、ラインハルト様。そして…。