私の友人の支店長の話
部下が定例配置転換のための転勤の挨拶に廻っていた日に、上得意客の社長が、怒鳴って電話してきた。
いわく、
「なんで、あいつを転勤させるんだぁ! おれは、お前の会社の製品が気に入ってるから買っているんじゃなくて、あいつが気に入ってるから買っているんだぞ! もう、お前の会社からは買わない!」
ガチャン!!
だった。
アワテタ支店長、部下と一緒に社長に、大きめの菓子折り片手に、おっとり刀で出かけた。
「ま、ま、まぁ、会社の制度上のことでして、また、この部下の今後の出世のためにも、転勤ということになりましたので、そこんとこは、ひとつ、 御理解を、、、」
ってな、わけわからない説明、、、
「ま、何年か先には、支店長として帰ってくる可能性もございますので、その点ひとつ、、、きょうは、もう時間も遅いので、、、、」
「いづれ、二、三日中には後任も参りますので、その時また、改めて、、」
何しろ、頭から湯気が上がってますから、簡単には冷えません。
で引き上げようと会社を出てきますと、部下だけが呼び戻されて、、、、
外で待ってた支店長に、出てきた部下も、不徳要領で、はっきりしたことを言いません。
翌日、出てきた部下は?とみますと、かなりヨレヨレになっておりますが、
「ともかく、社長の御機嫌は、ひとまず、落ち着いた、、、、」
とのこと、
昨夜は、
社長行きつけの料理屋にカミさんまで呼び出し、同席され、散々の逆接待で奥さんからお土産まで貰って、、、、
奥さんも、社長の泥酔に愛想が尽き、そこでお別れ、
社長とは、二次会、三次会、鳴り止まぬカラオケの蛮声、近隣に鳴り響き、古い甲羅を担いだ、ママさんも、
「こんなに荒れたのは、もう何年もないわねぇ、、」
なんて、感心されたり、
どこへいっても、
「今日はオレが持つ!」
っていうから、帰るに帰れず、今朝まで、、、、、、、だったらしい。
で、
「最後にタクシーに押し込んだときには、『こらぁ、転勤先では、シッカリやれよ! どこいってもワシのことを忘れるなぁ、、、』って、酒と涙とよだれが混じった顔で言ってましたから多少は納得してくれたのか、どうか、、、」
「今日夕方、も一度、様子見に行ってきます」
(ぶり返さなきゃ、いいが、、、)
ってな、話でありましたな。
ま、こういうように、それほど好かれた営業マンなら、支店長あたりが察して、本人に言う前に、内々社長に会い、
「まだ、本人には言ってませんが、明日あたり御挨拶に来ますんでひとつよろしく、、、」
って翌日、同道すればよかったんですな。
現代は、金、金、費用削減だけが経営者の心得、のようになっておりますればこそ、気に入ったやつからなら、多少高くても買う、書画骨董を買うような気持ちになる人も居る。
のです。
しかぁーーーーし、こういう任侠道、人情に長けた豪快な人間ももう居ない?
ご参考までに、
酒乱というのは、複数同席した場合、先に乱れたほうが勝、でして、出遅れた方は、この場合の営業マンは、いくら飲んでもつぶれないもんですな。
しかし、
私が、酒乱と解っている人と飲む場合、しかも、その日は乱れちゃいけない客などが居る時は、飲む前に、「きょうは二次会で客を帰すから、それまでは乱れるなよ」と相手が誰であれ、事前に釘を打っておきます。
「まぁ、その後はどんなに乱れても良いが、おれは面倒見が悪いから、どぶに蹴落として先に帰るからな」
って言うことも忘れないで。
わたし? 酒乱か、って?
筋の通った酒、ならお付き合いしますよ、地獄の底まで。
しかし、
世に剛毅、勇名を馳せた著名人のなかにも、一滴も酒を飲まなかった、という人も結構いるので、飲めるなんてのは自慢にも何もなりませんよ。
たしか、
アル・カポネもそうじゃなかったか? 間違ってたら御免。
医者で、
「明日の午後、往診の予定がありますので、今夜は一滴も飲みません」
なんておっしゃる方もいらっしゃる。
とても、真似できないですね。
その人は、往診のお宅に入った時点で、だいたい病気の原因が解るそうです。
やはり、凡人じゃないです。
あまり、Art的じゃない話題になりましたので、この辺で、、、、失礼。
ま、
そのうち、命をかけた酒、の話でも書きましょう、、、、、、
参考
阿片王 満州の夜と霧 佐野眞一著 新潮社 2005
ワシのHP http://www5f.biglobe.ne.jp/kingmiya/
メルアド miyachan@mvj.biglobe.ne.jp