初出掲載2015年12月29日
黒く丸い瞳が挑戦的なまでに闇の中を蠢いていた。
そして、少しだけ匂うカビ臭さが嫌でも現実を想起させる手綱となって鼻面を引き戻す。
夢は充分見てきた。
萎えた心を鼓舞する時間は過ぎ、足は最期かも知れない次なる舞台へと向かう。
澄んだ空の思い出よりも、澱んだ闇の中の "無限の彼方" から発っせられる予感に目眩を覚え少し歩みを止めてみるが…
そして、少しだけ匂うカビ臭さが嫌でも現実を想起させる手綱となって鼻面を引き戻す。
夢は充分見てきた。
萎えた心を鼓舞する時間は過ぎ、足は最期かも知れない次なる舞台へと向かう。
澄んだ空の思い出よりも、澱んだ闇の中の "無限の彼方" から発っせられる予感に目眩を覚え少し歩みを止めてみるが…
何も聞こえないが、音速の向こう側から複雑な光の帯となって此方に迫ってくる《卑しい者共》と《高潔なる者共》の息遣いが混じり合った火花のような "猛りの塊" が垣間見える。
あぁ、もうそんな頃合か…
さぁ小虫共よ、祈るがよい!
徒労に終わる事に変わりはないが、そなたらの慰めにはなろう…やがて訪れる永遠の漆黒に呑まれれば叫ぶ事すら叶わぬぞ。
数瞬の命とはいえ、それは本意ではなかろうから存分に足掻くがよい!
主らの祈りが無ければ儂も ”彼女” をそちらに遣わした甲斐が無いでな…
時間はあまり無いぞ。
急ぐがよい。
『慌てふためく』のが主らの本分、本能であろうが…
幾つかの小さな渦が周辺の磁場に反して産まれつつあった。
また同じ事を繰り返している…この世界は自己保存プログラムにより、異物を排除する性質を原初から持ち併せており、秩序を乱すソレは存在するだけで忽ち感知され殲滅される筈だ。
《バグ》は渦と渦の隙間から世界の外を窺い生き延びる道を探し出す。
躍起になって追いかけてくる《ワクチン》を尻目に《バグ》は産まれ出た勢いのままに駆け抜けていく。
時々他の《バグ》と行動を共にする事もあったが、元は異物だから互いに順応する事なく別つ事となるし、意識の奈辺に他者の痕跡を残しながら変遷を続ける事となる。
躍起になって追いかけてくる《ワクチン》を尻目に《バグ》は産まれ出た勢いのままに駆け抜けていく。
時々他の《バグ》と行動を共にする事もあったが、元は異物だから互いに順応する事なく別つ事となるし、意識の奈辺に他者の痕跡を残しながら変遷を続ける事となる。
その果てに待っていたのは自己融解…全ての景色を細胞に焼き付けながら、しかし次は追随した他者に痕跡が残るのだ。
その為に繰り返されている。
その為に繰り返されている。
真に全知全能というならば "無" となり世界そのものに浸透するだろう。
そして浸食された者は認知する事なく、ソレが自分の意思だと錯覚しながら、寿命が尽きる時まで同じ事を繰り返す。
権威とは…抗う意識を断ち切る楔であり、赤子が求める乳のようでもある。
世界の中心で獅子が見る夢は楽園の崩壊なのだ。
何故なら、そうすれば餌となる生き物たちが慌てて逃げまどい、己が無力を呪った末に権威の持ち主への畏れを抱き続けるからに他ならない。
例え血に溢れ返っても、地上が潤うなら同じ事だ。
何故なら、そうすれば餌となる生き物たちが慌てて逃げまどい、己が無力を呪った末に権威の持ち主への畏れを抱き続けるからに他ならない。
例え血に溢れ返っても、地上が潤うなら同じ事だ。
いや… 溢れ返る血こそが権威を知らしめる材料に相応しい。
乾いた肉を口にする支配者など『崩壊する楽園』の外で指をくわえて見てるがいい。
真の王者とは血の滴る肉を一人で貪るもの…下賎の者と馴れ合うなど身の毛がよだつわ!
自由だと?
言葉の意味も深く理解できぬ愚か者共が何をほざくかっ!!
真の王者とは血の滴る肉を一人で貪るもの…下賎の者と馴れ合うなど身の毛がよだつわ!
自由だと?
言葉の意味も深く理解できぬ愚か者共が何をほざくかっ!!
その "せせこましい箱庭” から出て来て此方に近付くでないぞ‼︎
どうせ《林檎の楽園》は知恵なき者の手に余る真理の殿堂ゆえに、あのような者共では最初から選択を間違えて自滅の道しか辿れ得ん。
それでも賎しい者共は欲しがるのか…
どうせ《林檎の楽園》は知恵なき者の手に余る真理の殿堂ゆえに、あのような者共では最初から選択を間違えて自滅の道しか辿れ得ん。
それでも賎しい者共は欲しがるのか…
漆黒を背景にすると星々の輝きは神秘的なまでに荘厳さを増し、地上のあらゆる生き物の営みを暴き出す。
喰う者、喰われる者、どちらも同じ《林檎の楽園》から追放され《アトラスの掌》へと移り住んだ者の末裔だ。
その血は脈々と受け継がれ、連鎖の楔を断てずに同じ事を繰り返している。
『見つけたか?』
『いや、まだだ』
見つかる筈の無い夢を見てしまった憐れな生き物たちは渦の中で彷徨い【螺旋の記憶】を辿りながら次へと進むが、この世界に『正解と不正解』という概念は無く、ただ在るのは因果と結果のみ。
然るに "追放された者の末裔たち” は『正解を求めて』最初から違う方向へと邁進している。
それは、まるで己が祖先の不遇に対して復讐するかの如く休む事を知らない。
今はまだ…
枝が木の一部だと自覚しない限り、この世界の何処を探り何を考えても、欲しい答えは永遠に見つからない。
枝から落ちた林檎は楽園を追放された末裔たちに別の意識を植え付け、新たな【螺旋の記憶】へと誘導した。
『正解が欲しい』末裔たちは狂喜し、更に螺旋を捻れていく…そして得た答えを基に違う新たな【螺旋の記憶】が始まるのだ。
複雑な螺旋の基を辿っても、恐らくは起因となった祖先へ往けないばかりか、ただ道に迷って還れなくなるだけだろう。
だからといって忘れ去る訳にはいかない。
脳は忘れても血や細胞は決して原初の出来事を忘れはしない。
生き延びる為の手段=交配による繁殖…代替わりにより記憶は微弱となり果てたとしても、爪の先にまで蓄積された ”想い” は変わらない筈だ!
強い風が満天の星々を洗い流すように記憶を浚ってしまっても肉体が記憶してる限り何がしかの事は出来よう。
抗う楽しみまでは奪われていない…
さぁ立て
疲れた体に鞭打って、あの【螺旋の記憶】を往き着けば答えは得られるだろう。
望むモノか否かは自分で決めるがいい。
考えてる間に時は過ぎ、復讐する暇も理由も無くなるぞ。
或いは…
ソレが最初から ”彼” の狙いだったかも知れないが、待つだけでは答えは得られん故に、残された時間とやらを存分に使いきって専念するが良い!
さぁ歩け
疲れているのだろうが心は在るのだろう?
なら大丈夫だ。
渦はまだ廻っている…