不都合な夢(リイシュー)

初出2015年5月31日、2016年9月21日

疲れたよ
心も体も腐っていくような気分だ
あそこ？
あそこがゴールなの？
でもさぁ…
よく考えたら何が待っているかなんて最初から知らないんだよね
みんな知ってるの？
知っていて この道を歩いているの？
僕は何も知らされてないんだよなぁ…








夢の中

蟷螂が俺の体を美味しそうに喰っている

おい、何やってんだ

叫んでも蟷螂にゃ聞こえない

それにしても

本当に美味そうに喰うな…














あ… すいません

すぐ済みますから少し待ってもらえますか？

どうやっても、この鍵が開かないんで困ってるんですよ

え？
合い鍵を持ってるって？

それは助かります！

ここが開かないと貴方を閉じ込めておけませんからねぇ

 …何処へ行くんです？
なんで、そう無駄な事をしようとするんですか？

貴方は此処で産まれたんだから、此処で死ぬのが一番相応しいじゃありませんか

貴方は、いつも私の理解を越えてますねぇ…

ねぇ

どっちがいい？

一つは、お父さんが壊した愛

一つは、お母さんが捨てた愛

どっちも

君の忘れモノだよ…

そうじゃないですよ


いや…
向こうは悪くないです
俺が悪いんです


ほら…
俺は直ぐにカァ～っとなるから
向こうも我慢できなかったんでしょう


金ですか？
全部渡しましたよ
流石に何度も "そんな事" になると、財布は随分軽くなるモンです


まぁ
産まれた時から存在価値が "軽い" ですからね…『振り出しに戻る』ってやつですか！
え？ 振り出し？
どっちだったかなぁ…

そうだな…
楽しいと言えば楽しかったし、楽しくなかったと言えば楽しくなかったですね


騙すとか騙されるとか何ですか？
そんなの人間以外の自然世界じゃ当たり前ですよ
『騙し』は技術
でも、いつも決まるとは限らないです
理由が何であれ、どちらも必死だって事ですね


俺は最初から信じちゃいません…
途中から信じて傷付くだけです


大丈夫
『心』の問題だから血とか見えないですよ
怖がらないで
俺の方が怖いんですから


だって
聞こえるんですよ
体の奥の方から悲鳴がね


どうやら『もう一人の俺』が血塗れで叫んでるみたいです

煩いったら、ありゃしない



























ちょっと待って下さいね

今、鍵を掛けますから…

２度と外に漏れない様に施錠しておきます

あの
光も届かない深く冷たい闇の底へ閉じ込めておきましょう

あんな女々しい輩は居なくなればイィんですよ







お前はどうするかって？

さて…
どうしましょうか

誰かが鍵を開けに来るまで待ってみましょうかね

壊しに来られるかも知れませんが… それでも別に構いません

また
振り出しに戻ればイィんですから！

え？ 振り出し？
どっちだったかなぁ…

冷えた月の明かり

微睡む(まどろむ)世界の片隅で

泥に浸かるアヒル

悪魔の誕生はいつも疑わしいし、それを謳う天使は誇らし気

茨の扉が開く