【オメガバース】
【長女:美思-みこと- 長男:陽翔-はると-】


今宵はクリスマス。部屋をクリスマス仕様に飾って子供達にサンタの衣装を着させクリスマスソングも流して歌って踊った後、クリスマスパーティーをしチキンを多めにしたご馳走に4号サイズのアイスケーキを食べパーティーが終わると美思は直ぐ高嗣に「おふろはいろ」と言い出し一緒に向かってしまった。あれ?陽翔は・・・。いた。いつもなら一緒に行くはずなのにリビングの横に置いてある少し大きめなクリスマスツリーの前で座って点灯している電飾に輝くそれを眺めている様子。
「陽翔、お風呂は?パパ達と入らないの?」
「うん」
「何で?」
「きょうはママとはいりたいの」
「ママと二人で?」
「だめ?」
「駄目なんて言わないよ?でもどうして急に」
「いいの!ママとがいいの」
その様子から何か察しした。入浴以外はほぼ健永の傍には美思がいる。陽翔はそこで無理に健永のとこに入れば美思が何か言うはず。年上の特権だから、と思ったのか陽翔は何も言えず我慢していた分、とうとう限界だったんだよね。気付かなくてごめんね。
「陽翔は我慢強いね」
寂しい思いさせてごめんね。と陽翔を優しく抱き締める。思わず目頭が熱くなり、それに気付いたのか「ママ、だいじょうぶ?」と声をかけてくれた。
「大丈夫だよ。いつも美思がママの事、独り占めしてるからだよね?ごめんね、陽翔。寂しかったよね?」
「ぼくはだいじょうぶだよ」
「陽翔はずっとママとの時間が欲しかったんだよね?」
そう言うとずっと我慢していたのものが溢れ、陽翔が泣き出してしまった。それにもらい泣きして二人して泣いて抱き締め合ってこの時間を大切にしようと誓った。
「今からママと陽翔の二人のだけの時間過ごそうね」
「うん!ママ、ありがとう」
浴室から高嗣の声と美思の賑やかな声がリビングまで聞こえる。二人が出てくるの待ちながら陽翔は再びクリスマスツリーを見つめた。
「サンタさん、きてくれるかな・・・」
「陽翔はとても良い子にしてたからサンタさんは来るよ」
「ほんとう?」
「うん。ちゃんとママやパパの言うこと聞いてたでしょ。美思の言うこともしてたし保育園ではお友達と喧嘩して泣いたけど陽翔から謝りに言ったでしょ。それは凄い事なんだよ?サンタさんは直ぐに分かるんだよ。良い子にしてた子には必ず来て素敵なプレゼントを届けに来てくれるよ」
「サンタさん、きてくれますように」
その場に立ち上がった陽翔はクリスマスツリーの頭上に飾られている星のオブジェに触れ「サンタさん、まってます」と祈った。この一年で凄く成長した陽翔の姿に再び目頭が熱くなった。子供の成長は早く感じる。同時に新たな発見がある。今後の成長も楽しみだな、と持っているとようやく風呂から高嗣と美思が出てきた。
「はる、なにしてたの?」
「サンタさんにおねがいしてたの」
「みこともおねがいする。でも・・・みこと、ふたつもおねがいしたからこないかも・・・」
「え?!美思、二つもお願いしたの?」
「う、うん・・・。ひとつだけだってしってるのにどうしてもふたつおねがいしたくて・・・」
「美思も良い子にしてたからきっと二つ届くんじゃないかな」
「パパ、ほんとう?」
「うん。でも寝ない子には来ないかもよ」
「みこと、ねますー」
「ぼくも!」
「陽翔はまだお風呂入ってないでしょ?」
「はいらなきゃ!」
美思は直ぐに寝室へ行き陽翔は健永と一緒に入浴を済ませ既に眠っている美思の隣で寝始める陽翔。夫婦揃って子供達の寝顔を見つめる。美思の寝顔は健永に似て、陽翔の寝顔は高嗣に似ている。
「パグにはならないでね」
小声で囁いたのにちょうど高嗣が二階の奥部屋に隠していたプレゼントを持って寝室に来てふくれっ面で健永に言葉を返した。
「パグってなんだよ」
「だって昔から似ているだもん。高嗣の寝顔はブサイク」
「おい、失礼だろ」
「本当の事だもん。良い意味でのブサイク。ほらブサかわてやつ」
「言い換えただけじゃん」
「一番パグに見える寝顔、未だにスマホに画像残っているよ」
「消去してやる」
「やだー」
二人して子供達の寝顔を見届けると子供達の寝息が聞こえ始めた。きっといい夢を見ているんだなと思いながらナイトテーブルに置かれた時計に視線を向ける。もうすぐ日付が変わろうとしていた。二人揃って小声でカウントダウン。0時になると健永は陽翔に向けて、高嗣は美思に向けて「メリークリスマス」と囁き、頭にぶつからないように枕元にプレゼントを置いた。美思は大丈夫だったけど陽翔が「ん・・・」と言う声と共に寝返りし健永は少し焦ったが、起きることもなくセーフ。
「よかった。起きなくて」
手を胸に当て平常心になる健永に手を差し伸べた高嗣の姿に目を丸くする。普段こんな事しないのに。手を乗せると静かに寝室を出てさっきまで居たリビングへと戻る。先にソファーに座るように指示され高嗣はキッチンへと姿を消した。持っていると突然リビングの照明が消え残った照明は点灯し続けてるクリスマスツリーのみ。
「高嗣、どういうこと・・・えっ?」
ようやくキッチンから戻ってきた高嗣は結婚記念日に買ったお揃いのペアグラスとシャンパンを持ってきた。テーブルにグラスを置きシャンパンを注いでくれた。このシャンパン・・・クリスマスに人気のシャンパン。このシャンパンは健永が一番飲みやすいと言ったもの。
「覚えてたんだね。俺の好きなシャンパン」
「当たり前だろ」
「高嗣、ありがとう」
シャンパンが入ったグラスを持ってグラスの淵に当て乾杯した。大人のムードに健永は胸が高鳴り嬉しさが溢れ落ち着きが出来なくなっていた。それに気付いた高嗣は方を寄せこう告げる。
「聖夜の記念日だね」
ゆっくり唇を重ねキスを交わした。健永の表情を覗き込めば頬を赤くして目を潤ませていた。何度も、好き・・・。と呟き高嗣も同じ言葉を呟いた。素敵なクリスマスにもう一度キスを交わし二人だけの時間を過ごした。


朝を迎え子供達が起きた同時に、「サンタさんが来た!」と騒ぎ始めた。陽翔は高嗣に嬉しそうに報告している。プレゼントきてくれたんだね、よかったね。陽翔が貰った物はライトグリーンのリュック。これを背負って一緒にお出かけしようね。陽翔には言わなかったけどサンタさんの正体はあなたのパパとママだよ。なんて言えない。その中、美思がプレゼント持って健永の前に立った。
「ママ、これ・・・」
健永に差し出したのはサンタさんに頼んだクリスマスプレゼント。もしかして頼んだものと間違えた?焦りが走り、美思の背に合わせ膝を床につき、プレゼント違ったの?と聞くと首を左右に振る。一体どうしたのか。美思に聞くと「えっと、あのね・・・ん、と・・・」と上手く言葉が出ない様子。やっぱりプレゼント間違えたんだ。と落ち込む健永に美思はプレゼントを押し付けた。
「ママにプレゼント」
「えっ・・・」
急な展開に驚く健永に美思は笑みを浮かべ、受け取って。というばかりに差し出している。もしかして気に入らなかったから渡したのかな、と思ってしまい、つい美思に言ってしまった。
「このプレゼント気に入らなかったの?」
「ちがうの。みことからのプレゼント」
「プレゼント・・・?」
「ちょっと、きて」
美思が手で招くと、「みみかして」と言われ健永の耳元でここ囁いた。
「いつもプレゼントもらってるから。みことサンタからのプレゼント」
五歳の娘には正体バレているんだと分かった同時に健永にプレゼントを用意する美思に感激して泣いてしまう。
「ママ、またないてる」
「だって、嬉しくて・・・。美思、ありがとう」
「だから美思、二つだったの?」
「うん。ひとつはみことがいちばんほしかったプレゼント。ピンクのハートのバッグ。もうひとつはパパとママにあげるプレゼント」
「え?!パパにもあるの?」
「うん!でもこれ、パパとママでひとつのプレゼントなの」
既に健永に渡していたプレゼント。それは小さな白色のうさぎとピンク色のうさぎが入ったスノードーム。そういえば高嗣曰く、おもちゃ屋に行った時、珍しく美思がスノードームを見てずっとその場から離れず眺めていた。もしかしてそれをプレゼントするて決めていたかもしれない。手紙にはただのうさぎのスノードームて書いてあったけどそんな理由-わけ-があったとは・・・。健永は涙を流しながら美思を抱きしめた。たくさん、ありがとうを伝えた。
「パパ、ママ。プレゼント、ひとつでごめんね」
「十分だよ、ママは美思サンタに素敵なプレゼント貰って嬉しいよ」
「美思、ありがとうね」
「うん!あとね、これはみこととはるからのプレゼント」
「まだあるの?」
それぞれスケッチブックを持ってきて、ぱら、ぱら・・・と捲り、丁寧に破るとそれを両親の前に差し出した。その絵には昨日クリスマスパーティーした様子が描かれていた。健永がご馳走してる時に子供達がテーブルに座って何かしてるな、と思ってたら、これを描いてたんだな、と今知った。
「健永、これ・・・」
高嗣がある部分を指で示した。二人が描いた絵の端に文字でこう書かれていた。


"パパ、ママ。ありがとう。メリークリスマス"


五歳の娘と二歳半の息子が一生懸命描いた絵に母親の健永が号泣し涙が止まらないまま子供達を抱きしめるとさらに包み込むように高嗣も抱きしめてくれた。家族で抱きしめるの・・・少し久しぶりかも知れない。
「「美思、陽翔。素敵なプレゼントありがとう」」
今年のクリスマスはたくさんの感激を子供達に貰って最高の日になった。伝えきれないほど愛と感謝を貰った。本当この子達の両親で良かった。ありがとう。