■「灯台からの響き」50代男性へのおすすめ度
★★★☆☆ ← 50代男性が読むと新しい発見があるはず
■あらすじ
内容紹介(「BOOK」データベースより)
本の間から見つかった、妻宛ての古いハガキ。
差出人は大学生の男。
亡き妻の知られざる過去を追い、男は旅に出る。
人生の価値を伝える傑作長編。
■キーワード
灯台めぐり、中華そば、商店街
■感想
灯台からの響きの感想を一言でいうと「まあまあ」かな。
なんで「まあまあ」なのかというと、
「ドラマチック感(思わぬ展開)が少なかった」からです。
「淡々と物語が進んで、終わっちゃった」と感じました。
宮本輝さんの文章は相変わらず読みやすく、
灯台からの響きもスラスラと読み進められる小説に仕上がっているのだけど、
それ(スラスラ感)が物語の深みを薄めてしまったように感じました。
「登場人物たちの人物像を、もう少し深く掘り下げて紹介してもらいたかった」
というのが、正直な感想です。
掘り下げすぎるとスラスラと読めなくなるのかもしれないけど・・・。
・主人公について
主人公は62歳の男性で、中華そば屋の店主でした。
夫婦で営んでいた中華そば屋でしたが、妻が急死したことで店は休業中です。
50代のおっさんから見ると、
62歳の男性は少し先輩で身体的衰えは参考になりました。
「ああ。60代になるとこんな風になっちゃうのか」と、
ガッカリしましたけど。
まあ、それは仕方ないですよね。
主人公は、まとまった休業をしたことがないようで、
旅行の経験もほとんどないようです。
店と自宅が近いので、車の運転も日常しません。
ひたすら店に立つ毎日。
代わりの従業員がいない街の中華そば屋さんって本当に大変な労働なんです。
私にはできないです。
この小説の主人公のように、
「休みがほとんどないお店屋さん」って世の中にたくさんいるのだろうか?
そんなことを考えながら灯台からの響きを読み続けていました。
・宮本輝さんらしくない文章
320ページ前後の文章に、
「かったるさ」があったのでここに取り上げてみました。
女性(元小学校教諭)が、過去の出来事を話すくだりなのですが、
かたっ苦しさがあって、リズムも悪くて、
10代後半に読んだ森鴎外や志賀直哉の小説を思い出しました。
とつとつと出来事を語る女性の小学校教諭としての性分が、
文章に現れたのかもしれませんが、
宮本輝さんの文章らしくないなと感じたので、ここに書いてみました。
多くの人は「そんなことないのでは?」と思われると思います。
でも、私は気になってしまいました。
■私が気に入った文章
1.わたしが死んだ瞬間にガン細胞も死ぬ
肺ガンの可能性があると診断された主人公の妻の言葉です。
「そりゃあ、わたしだってもっと長生きしたいけど、
いつ死ぬかは、わたしには決められないもの。
どうしてこんな病気にかかったのかって考えないほうがいいでしょう?
考えたってわからないんだもん。
治療に専念して、駄目だったら死ぬ。
でも、わたしが死んだ瞬間にガン細胞も死ぬ。相打ちね」
(328ページ)
いい意味で心に引っ掛かったので、紹介してみました。
主人公もこの後の文章で言っているのですが、
「含蓄」があるような気がするんです。
2.人生を小さくしてる悪い性分だよ
主人公(康平)の親友であるトシオの言葉です。
「先読みというか、無駄な邪推というか、
とにかく余計な心配ばっかりするんだ。
お前、中学生のときから、そういうことが多かったぜ。
性分だろうけど、康平の人生を小さくしてる悪い性分だよ」
(358ページ)
いいですね。
私も先読みしてしまうクセがあるので、
「そうかも知れないな」と思いました。
「小説を読むのが好きな人間にありがちな傾向かもしれない」
とも思いました。
いずれにしても、私も気を付けたいと思いました。
人生を小さくしてしまったら、つまらないですから。
今回は、50代男性が読むと新しい発見があるはずの
「灯台からの響き」を紹介しました。
本書以外にも「宮本輝さんの小説」をブログで紹介しています。
併せて読んでみてください。
【宮本輝さんの小説】
・人生をやり直すきっかけは不意にやってくる|錦繍(きんしゅう)宮本輝

このブログが少しでも小説選びのお役に立ちましたら幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。

