LobiとLobi - コンゴ人にとっての「明日」
豊富な同音異義語のあるリンガラ語。「Lobi(ロビ)」もその1つです。Lobiには「明日」という意味がありますが、実は「昨日」も同じ言葉が用いられます。どう見分けるのかというと動詞の活用で分かります。動詞には過去形と現在形、未来形の大まかに3つの活用があるのでそこでわかるのです。もちろん強調したいときは「lobi oyo eleki(ロビ オヨ エレキ)」または「lobi leleki(ロビ レレキ)」が昨日、「lobi oyo ezoya(ロビ オヨ エゾヤ)」が明日となります。始めリンガラ語で話した人が、私のためにフランス語に訳しそうとすると、よく「昨日」なのに「demain(明日)」と言ってしまうことがありますが、lobiで一緒だとわかればこうした間違いもよくあると納得できますところでコンゴ人にとって「明日」が必ずしもそれを言った日の翌日とは限りません。なぜならlobiには「また今度」「いつか」という意味も含まれているからです。今まで日本で暮らし、人との約束を守ることの大切さをくりかえし家でも学校でも教わってきた私にとっては、このいい加減な「lobi」の返答には苦労させられます。何か人に頼んでも、夫が人と会う約束をしても決まって合言葉のように「lobi」と言われます。でもその約束は確実ではなく、気が向いたらとか変更がなければと言った暗黙の条件が付いているのです。ある日、西部のマタディからキンシャサに数日間だけ遊びに来ている夫の友人が泊まっている家までその人を送り届けたとき。帰り際に「じゃあ明日の15時ごろまたここに来るから。Lobi !」と言って別れたので、後で「明日は午後から他の人と約束しているのにいいの?」と尋ねると「ああ大丈夫」との返事。翌日、マタディの友人とは特に互いに連絡もし合わず会いに行く約束はいとも簡単に破られました。その頃いつどこに行くかろくに聞かされないまま、「出かけるから準備して」と夫に言われるばかりで心の準備ができないことが多く、苛立ちを隠せなかったので、こうした軽々しい約束がとても嫌でした。でも日本にいるマダガスカル人の友人に聞くと、「アフリカ人はみんなそうよ」という答えが返ってきました。本当はできないこと相手にを伝えたりすぐに断るよりも、その場の雰囲気を大事にして断らなかったり、相手を失望させないためそのように言うのだそうです。彼女は私に「『オーケー明日ね』と返事しておけばいいんだよ。できなかったとしても問われることはないから」とアドバイスされましたが、逆に私にはできないと思い悩んでしまったほどです今でもこのLobiの使用には慎重になります。本当に「明日」でない限りLobiと言いたくない夫にもよく言っているのですが、私は口約束というのを好まないタチなのです。アフリカ人とまたはアフリカでビジネスをすると、こうした感覚の違いが意思疎通を妨げて作業を難しくしているのはないかとつい疑ってしまいます日本人:「君は明日できるって言ったじゃないか。なぜできていないんだ」アフリカ人:「明日って言いましたけど、昨日あなたと別れてから思わぬ事態が起きたんです、仕方ないでしょう。明日には必ず」リンガラ語では「Bilaka ya Nzambe epolaka te, kasi bilaka ya mutu epolaka」という表現がありますが、それは「神の約束は決して朽ちることはないが、人の約束は朽ちる」と意味です。むやみに人を信用してはならないという格言にあたります。