三つ折りの千円札
今年も広島平和記念式典の後に、いつもどおり事前にいっさい連絡していないが受付のところに佇んでいた浴と合流し、まっすぐ喫茶店「エイト」に向かいました。
店の前におばあちゃんがおりました。「また今年も来ましたよ。どうしました?」と僕が尋ねると、どうやら脳に血栓があり、今日は店を閉めて近くの病院に行こうとしたがタクシーが来ないとのこと。8月6日は1年でもっともタクシーが利用される日のためなかなか捕まりません。配車も断られたとのことです。途方にくれているおばあちゃんと喫茶店の中に入りました。原爆で患った骨粗鬆症や最近骨折もして脚が不自由になっていたのに、アイスコーヒーを入れさせてしまい申し訳ないです。今年も73年前の話を聞きました。
ここで浴と2人でスマートフォンという文明の利器を使い片っ端からタクシー会社に電話しました。10分後にタクシーを配車できる会社が見つかりました。ちょうど僕らも広島駅へ戻るところだったので、タクシーに乗り、おばあちゃんを送っていきました。おばあちゃんはものすごい喜んでいました。
その病院は喫茶店から800mほどの場所であったし、もちろんお金は受け取らないつもりだったので断ったのですが、3つ折りにした千円札を置いて降りていきました。そして先の角を曲がるまでずっと僕らを見守っておりました。
喫茶店や弊社の社名でもある「エイト」。確かに、末広がりとか、無限大という意味もある。だが、もう1つ大事な意味があります。それは「物事はなんでも8分ぐらいがいい」ということです。それより多くを求めない。際限なく求めすぎない。心もお腹も資源でさえも8分目がちょうどいい。すべてを求めると戦争が起きる。
今年も運良く会えてよかったです。来年86歳になるおばあちゃん。また来年の8月に来ますね。
千円札は財布の奥にしまっておきますね。来年この千円札でアイスコーヒーをまた飲みに来よう。