チェンジリング | キネマ方丈記

チェンジリング


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息子に100%の愛情を注ぐシングルマザー、クリスティン役のアンジェリーナジョリー。
クリスティンは女手一つで生計を立て、最愛の息子ウォルターとロサンゼルスで暮らしている。
休日にウォルターと出掛けると約束をしていた矢先、断れない仕事が入ってしまい息子を一人家に残し出勤をする羽目に。
仕事を終え、真っ先に家に辿り着いたのだが息子ウォルターの姿が忽然と消えていた。
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5ヶ月後、ウォルターが見つかったという朗報を受け迎えに行くクリスティン。
しかし戻ってきたウォルターは仕草や話し方、容姿までもが別人であった。
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我が子ではない、本当のウォルターを一刻も早く捜し直して欲しいと訴えるクリスティン。
しかし警察は全く耳を貸さず我々には落ち度はないとの一点張り。
さらにはクリスティンを精神不安定者として扱い強制的に精神病院へと送り込んでしまう。


果たしてこの物語の真実は如何に??

クリスティンは本当に気がおかしくなって息子かどうかの分別もつかなくなってしまったのか?
それとも警察はここまで来たら後に引けない、捜査ミスを認められずマスコミによって世間に広まることを恐れ隠蔽したいが為に病院へ送り込んだのか?

後者の考えが妥当なのだが、アンジェリーナジョリーの演技力もあってか、ひょっとしたらという疑念も湧いてきた。

物語の真相はここでは述べないので映画でどうぞ。
アンジェリーナジョリーの演技はもちろん素晴らしく、夫のブラッドピットの存在がまたまたかすむのは言うまでもない。
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物語の冒頭はモノクロの世界で始まり、1928年ロサンゼルスの街並みと共に徐々に色づいてくる。
アンジェリーナジョリーのメイクや衣装、ヘアスタイルも古き良き時代のアメリカを象徴しているかのようなファッション。
しかし、この映画の役作りの為に体重を落としたのか、アンジェリーナはとても痩せこけていた。
その甲斐もあり、悲壮感や薄幸な感じが痛いほど伝わってきた。
クリスティンは普段は温厚で割と感情の起伏の無い毅然とした女性なのだが、実の息子ウォルターと偽る少年と口論になり怒りを露わにし泣き叫ぶという迫真の演技は一番印象に残っているシーンであり、彼女の辛さが身に沁みてきた。
精神病院でのシーンでは、これまでのどぎついメイクとは打って変わりアンジェリーナは終始ノーメイク。
この瞬間、アンジェリーナだぁと改めて再認識し、軽くホッとした。
どぎついメイクのアンジェリーナは別人のようで、まるで彼女自身が普段のアンジェリーナのチェンジリングなのではと思う程。(笑)
どぎついアイメイクで泣くシーンが多々あるのだがとても見るに堪えない程ぐっちゃぐちゃに崩れてしまってるのだから。
あれほど美しいアンジェリーナジョリーが汚れな一面を見せたのだから脱帽した。

脱帽と言えばもう一人、ジェイソン・バトラー・ハーナー。
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一方、ジョン・マルコヴィッチは珍しく癖の無い健全な牧師役を演じている。
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映画を見る前はジョン・マルコヴィッチがジェイソン・バトラー・ハーナーのノースコット役を演じたほうが良いのでは!?と生意気な事を思っていたのも束の間、見終わった後にはジェイソン・バトラー・ハーナーの演技に脱帽し、彼の1ファンになっている自分がいた(笑)。
彼の役どころは、軽く知能に障害を持っているクレイジーな殺人鬼というかなり難易度の高い役なのだが、こんな難しい役を無名に近い彼にこなせるのか?と軽く小馬鹿にしていた。
がしかし!!この浅はかな考えをジェイソンに謝罪したいくらいに素晴らしい演技力の持ち主だ。
ブラボーという言葉に尽きる。
本当に。
ジェイソン・バトラー・ハーナー。まだまだ勉強不足だったのか、彼について一切無知だった。
彼は役作りにおいて 独特の話し方、顔の表情、動作の一つ一つを緻密に研究し演じきっていたと思われる。
世にまだ知られていない、いわゆる新参者の演技力に度肝を抜かされたのは近年稀だ。
かつて、真実の行方を見た時の当時無名に等しかったエドワードノートンの時の衝撃と一緒だ。
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これからの彼の活躍に大いに期待したい。
決して超娯楽大作ばかりに出るブレンダンブレイザー
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彼のような俳優にだけはならないで欲しい。(笑)

話は変わって、クリントイーストウッド監督のキャスティングは有名俳優をもオーディションに受けさせ起用決定をするという話を聞いたことがある。
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流石才能ある監督は見る目がある。
ミスティックリバーでは一見、ケヴィンベーコンとティムロビンスの役は逆なのではと思いがちだが、
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見終わってから意外なキャスティングがマッチしていることに驚かされるし、
硫黄島からの手紙では
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伊原剛志、加瀬亮、中村獅童等演技派俳優の起用。(二ノ宮と裕木奈江の夫婦設定には無理を感じるが。)
ミリオンダラーベイビーではヒラリースワンク、モーガンフリーマン。
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そのどれもがキャスティングにセンスを感じるし、目を見張る。

また彼はノンフィクションの枠にこだわり、従来のハリウッド映画とは異なった完成度の高い作品を作り続けている。

そんな彼は今年でなんと79歳を迎える。
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どんどんコブラ化してきているように感じるのは気のせいだろうか…。

監督としては十分な高齢者だ。しかしこれからも末永く元気で素晴らしい作品を世に輩出し続けて頂きたい。

最後に、
とても良い映画に出逢えたことに感謝します。見終わった後とても満ち足りた気持ちになれた。



No movie No life!!