はればれ、はる、に。
はるばる、ばり、へ。
ウーン、そんなくだらないダジャレが浮かぶほど、ボクは物欲食欲グータラ欲に飢えているんだよなぁ。
バリだとイケイケなんだけどなぁ。
ボクには、今、ちょっとバリ的休暇が足りない、と、最近ご無沙汰の素敵な休暇の過ごし方を懐かしみながら、山の庭に目をやり、ゴロン。
今ごろバリはそろそろ、お正月準備。
ウチの山では――。
どこからか、まだまだ合格点やれそもないウグイスの鳴き声。
ホッケキョ、ホットケキョ、ホットケヨ、ボッケボッケヨ、なんて聞こえてくるのはボクがオカシイのか?
50肩が悪化して時々左肩は、ハレハレ。
痛くて、週一回、ハリハリ。
だからゆっくり休みたい気持ち、バレバレ。
そう、これが現実です。
さてさて、バリはもうすぐお正月。
ニュピという。
だけど西暦で祝う1月1日とはかなり趣が違う。当日はお祝いするという雰囲気が微塵も感じられないからだ。町は静まり返る。
今年は3月28日がその日だ。
▲もうすぐ正月、という町のにぎわい。
そう。バリでは社会生活では西暦が当たり前だけど、他にも1年を210日とするウク暦や月の満ち欠けに基づく太陰暦のサカ暦があって、ニュピはこのサカ暦の新年だ。毎年3月~4月に新年を迎える。この日は絶対―。
●外出しちゃイケナイ。
●働いちゃイケナイ。
●殺生しちゃイケナイ。
●灯りつけちゃイケナイ。
ちょっと古いけど「ダメよダメダメダメダメの四連発」の日。
つまり、家の中でじっとしていろ、という日だ。しかも気配を消して…。
1日中、静かに瞑想し、祈りを捧げる。
ホントかな?と思うけどホントなんです。
昔々からの慣わしで、これは観光客といえど例外じゃない。
空港閉鎖、レストラン、コンビニ、どこも開いていない。ショッピングなんてムリムリ。川下りもダイビングもゴルフもサファリパークもダメダメ。
ホテルからも出られないのだ。ま、瞑想はパスとして、多少の灯りもOKだろう。
外には、「ポチャラン」というカワいい名前の地域自警団が見回りをしていて、強制的に家やホテルに連れ戻す。言うこと聞かない様だと、警察に連行。こうなると結構やっかいだ。
ま、ニュピにはバリにいかないか、それも合点の上で、楽しむことだね。前日と翌日はアチコチで、滅多に見られない儀式が行われているから、見る価値はあるかも。
そもそも、ニュピにはなぜ家から出ちゃイケナイのか?
前日は町中に「オゴオゴ」と呼ばれる鬼のハリボテが練り歩いていて、家々からは鍋釜を打ちならす音が響く。
何をしているのか?
▲ニュピ前日、鬼の「オゴオゴ」が街を練り歩く。
日本でも鍋釜を鳴らす風習が各地に残る。
魂を呼び戻すためだったり、神迎えの儀式の一貫だったり…。
バリではこの1年に入り込んだ悪霊を家々から追い出すためだ。
「うるさいぞ、コラッ」としぶしぶ立ち退いた悪霊たちは、ちょうどいい、と「オゴオゴ」に入り込む。飛んで火に入るで、ニュピの翌日には盛大に燃やされてしまう。
じゃあ、ニュピ当日の意味合いは?
ひと言でいうなら家で瞑想し、悪霊が立ち去るのをひたすら待つということ。
冥界から「プト・カロ」という悪霊が這い上がって来る日とされ、静まりかえった町の様子に「プト・カロ」は落胆。仕方ないから、また、冥界に戻っていく、という仕掛けらしい。
▲泣く子も黙る、悪霊「プト・カロ」。
そんなわけで、ヒンズーの新年は、祈りと共に厳かに幕を開ける。
バリの人口は約400万人。ほとんどがヒンズー教徒だ。でも、ヒンズー以前に仏教が入り込んでいて、その前はというと、土着宗教が根付いていた。つまりバリヒンズーは、本家インドのそれとは大きく異なり、仏教ヒンズー+土着宗教が基本で、どちらかといえばアミニズム的色彩が強いように思う。
バリには3000mを超える聖なる山、アグン山がそびえたつ。バリ人にとっては、神々の棲む「特別な山」である。家々の玄関はアグン山の方角に向き、不浄とされるトイレは海の方角につくられるのが一般的だ。山の神々にお願いしたら、すぐに玄関から入って来てもらいやすいように、といったところなのかな?
アグン山はふもとから見上げると、どこからでも頂上が見えるそうだ。つまりテッペンまで一直線に道がついているというわけ。神様が駆けつけやすいように、と考える説がもっぱら。
こうしてみてくると、バリヒンズーは日本各地に根付く「山の神信仰」の要素をかなり持っているように思えてならない。
宮崎の椎葉村は人口わずか3000人足らず。山また山に囲まれた、神話と伝説が息づく村。山の神を敬い、畏れ、向かい合う営みの中で独特の伝承文化を今に残している。椎葉神楽はつとに有名だが、じつは、あまり知られていない「山の神信仰」と結びついたユニークな風習が、この村にはたくさん存在する。
25年ほど前、ボクは初めて椎葉村を訪れた。依頼され、『観光案内』の取材をするため。その後『村勢要覧』も作り、延べ1カ月以上は通ったかなぁ。
▲昔つくった『観光案内』と『村勢要覧』
そんななかで、ずっと気になっていたことがあった。それもバリのニュピに似ている風習。
「風ドキ」。
毎年、旧暦の4月4日で、ゼッタイ家から出てはイケナイという日なのだ。今年は4月29日がその日に当たる。
1年に1度、地球に穴が開くくらい大きな風が吹く日、といわれ、野良仕事ダメ、外に出ちゃダメ、家で心静かに五穀豊穣、家内安全を祈りなさい、というのだ。
この「風」とは何を物語っているのだろう?
どうです?ニュピとどこか似ている気がしませんか?
狩猟、農耕など自然との関わりが深いほど、「八百万の神」は暮らしの懷深くにまで入り込んでいるわけで、「風ドキ」みたいな風習が受け継がれてきたのだろう。
陽の力をいっぱい取り入れる「正月の門松飾り」や、その年の方角に逃げ込んだ獸を追わない「狩猟の逆巡り」など、山里の暮らしは、いってみれば、自然界を支配する「山の神々」といかに仲良くやっていくか、を抜きには考えられない。
昔はきっと、そんな習わしが日本各地にたくさんあったんだろうね。
バリ人と妙に気が合うのは、神々と向き合う色んな風習を大事にする心根に違和感を覚えない、あるいは、「懐かしい、羨ましい」というところがあるからかもしれない。
ボクは、ニュピでもいい、バリにいきたい、と決意を新たにしたのだった。
◆エピローグ
久しぶりに、原稿の仕事を受けた。
焼酎の蔵元を7件、回った。
仕事をいただいたデザイナーから
「もう、10日たったから、できてるよね」と、催促の電話。
ボクは「ムリムリ。アレとコレもあって、しかもソレも忙しくってくって…ねぇ…」。
電話の向こうから声がしない。
しばしの沈黙。無言がつづく。
いたたまれず「わかった、すぐ仕上げるから」。一部始終を見ていた妻は
「どうして気づかなかったのかね、今まで。あんたにお願い聞いてもらうには、怒るか、泣くか、だと思ってたけど、絶句という手があったんだ」。
ふん、そんなの……ふん…。
゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚
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