「くまのビーディくん」偕成社
作:ドン・フリーマン
訳:松岡今日子

自分にとってこの絵本は、読めば読むほど幸せな気持ちになる本でした。
クマのビーディくんのキュートさは一目瞭然ですからお伝えするまでもなく、
心をうたれるのは、彼の素直な行動力、素直に問いかける姿、素直な傾聴力。
みなさんそれぞれ色々な感想があると思いますが、私は絶妙なタイミングで
この本に出会えた事に感謝です。
今後も
自分の心が動く作品を大切に想いながら、学び、絵本という世界を通して
自分の感性を磨いていけたらと思います。

おもちゃのクマ・ビーディーくんと持ち主であるセイヤーくん。二人はいつも仲良く遊んでいました。
ビーディくんのねじが伸びて動けなくなった時には、ゴロリと寝ころがってしまったビーディくんをセイヤーくんが助けます。くるりくるり・・丁寧にネジを巻いてあげるのです。


この二人の掛け合いがおもちゃらしくてユニークです。
このようにして、二人の間に流れる時は ゆっくりと小刻みに流れていました。

そんなある冬の日、セイヤーくんはいつかえるともいわずに出かけてしまいました。一人で遊びだしたビーディくんはあるきっかけから冒険に出ることになります。


「くま:ほらあなに住むゆうかんな動物」という本を目にして、
「そんなこと、今までだれもおしえてくれなかったぞ。どうしてかなあ?」

と、窓から見えたほらあなを目指してお家を出て行きました。
セイヤーくんの居ない一人だけでの冒険です。きちんと当たり前のように書き置きを残していくのも、セイヤーくんとのゆったり繋がるあたたかな関係性を感じます。

セイヤーくんがすぐそばに居ない初めての空間。
なぜか落ち着かない洞穴。あかりや新聞、心地よく楽しくなるようにあれこれと一所懸命に揃えます。


でも、やはり何かが足りません。
ビーディくんは不安を覚えます。


この時はまだビーディくん自身も心にぽっかり穴が空いている原因が明確ではないようです。


その時、大きな音が。
セイヤーくんがやってきてくれたのです!
ところが、同時にねじがのびきってしまい、ひっくり返って動けなくなってしまう・・思わず笑みがこぼれるおもちゃの愛嬌がたっぷりの場面です。


コロンと仰向けに倒れてしまい、冒険に出たのに自力で立ち上がれず、声も出ず
決まりが悪くなるという気持ちは、子どもらしさもあり、また大人にもよくわかる機微。ビーディくんが読み手にうんうんとうなずいてもらえるような、こちらもまた隠れた見所です。


冒険後に生まれた"不安"の中で時間を過ごしたビーディくん。大切な存在に気付き、セイヤーくんに愛の言葉を求めます。

セイヤーくんもビーディくんへの愛を惜しみなく言葉に出し、二人は抱き合います。


「きまってるじゃないか、きみだよ、ビーディ!」


幸福感に満たされたビーディくん。
セイヤーくんの愛情に満たされた彼は幸せいっぱいに穏やかな表情で眠りにつきます。
セイヤーくんたちの純朴な愛情・信頼関係には、親と子ども・恋人間とも重ねられ、ビーディ君たちと一緒に居合わせられた幸せに気付きます。


子どもが身の周りの人に、一番言ってもらいたいことを、彼らがお話の中でしっかり伝えてくれる作品。(他にもたくさんあります^^)
木版の白黒2色、必要最小限の色使いが読み手に色彩を創造させる自由な領域を与えてくれています。


きんだあらんど よしだ