8月17日。台風7号の影響で各地の道路は寸断されている。9年ぶりの道内上陸、道東ほぼ全域に避難警報だ。どこよりもはやく台風が去るのは……道南である。
夜9時札幌を出発。中山峠で満月が顔を出すも、周りの雲は乱れに乱れていた。
深夜1時、北斗市到着。せっかく来たのだからと撮り鉄の聖地、北海道新幹線の着く北斗駅をパチリ。
しかしそのまわりには居酒屋もコンビニもない。んー……さびしいぞ、とっても!
つめたいビールを求めてさまよう。「函館まで7km」の地点でやっとセブン-イレブンのあんどんを発見!小さい方の缶ビールを仕込み、きじひき高原へ。パノラマ展望台の駐車場で大沼公園を眼下に一杯、ひとねむりしよう、と思ったら、なんと展望台は荒天のため通行止めである!そーだよなー、台風だもんなぁ……でも急がないと、ビールぬるくなっちゃうでしょ!しかたなく大沼公園の白鳥パーキングへ。このあたりの林道は昔からの僕のヒミツの通路だが、ほら、置き去りにされた小学生が自力で自衛隊演習場まで行って見つかって……っていうアレですっかり有名になってしまった。
缶ビールを手に小沼に沈む満月を写し、明日のスタンバイをして運転席で仮眠する。
またたくまに朝が来た。線路を渡り大沼の湖畔に降りる。久しぶりの朝日だ。「台風一過、大沼の目覚め」を写す。
大沼トンネル手前から駒ヶ岳全景がよく見えた。きっと噴火で頂上が吹き飛ばされる前は、富士山のような美しい型だったのだろうと想像する。
まだ6時前だ。日暮山(303m)に登り、大沼小沼の湖面に写る朝日をパチリ。
山を降り、国道227号(大野国道)を西へ。乙部の奇岩、くぐり岩に寄る。巨大なねんどで出来たイモ虫のようなその姿を写す。
左下の穴をくぐり砂の上に腹ばいになり、穴から見えるひとつ隣の奇岩もパチリ。
うーん、面白い。
そしていよいよ今回のメーンエヴェント、太田神社の参拝だ。見たことはないが「日本一過酷な神社参拝」として何度かテレビにも取り上げられているという。データがないので観光課に電話すると「遊びの山ではないので、きちんと登山靴で登って下さい。山頂までは一時間以上かかるでしょう」とのこと。とはいえ、一般人の登る参道ではないか。楽勝!と帆越山トンネルを拔けると……そこは太田地区だった。
切り立ったガケの下に、へばりつくように並び立つ家々(ちなみにこの日は台風の影響で、ここから先は通行止め)。
トンネルを越えてすぐ右に、あった!太田神社の第一鳥居だ。斜度はとっくに45度を超えている。ぶら下がった2本のロープがその険しさを物語っている。カンバンには落石注意、自己責任、その他、多くの文言が。
鳥居の左右のコマイヌも、なんだかたよりないぞ……。
しかしここは1440年代に創立された、北海道最古の山岳霊場だ。コマイヌの表情にもきっと意味があるのだろう。
AM9:40分、登山、あ、いや参拝開始。山頂までのくわしいデータがないのなら、よし、僕がデータになろうとノンストップ登山を決意。いざ頂上へ!
まっすぐ天に伸びるような石段を、ちょうど百段超えた辺りから、さらに斜度が増す。もうほとんどカベである。上から撮った写真の手すりの角度でそれがわかると思う。
石段頂上が第二鳥居。ここから先は……ご覧のとおり、ガケ(岩肌)にロープが下がっているだけだ。
目の前に現れたのは、さびた鉄のハシゴ。
少し浮いていて、こわいぞ。そこをクリアしても参道は上へ上へと続いている。
体中から汗が噴き出してきた。誰だ、ノンストップなんて決めたのは!出発時に肌にかけた虫よけスプレーは、とっくに汗で流れてしまったらしく、吸血昆虫どもがまとわりつく。イテテ、右ひじを二箇所やられた!
上着もズボンも汗でぐっしょり。ほとんど着衣水泳状態で、足が上がらない。しかしノンストップ20分で第三鳥居が見えてきた。
ほらネ、楽勝である。えーと、お賽銭箱は、と探していると、れれ、本殿の左に上に続く道が!
考えが甘かったかも知れない。水と行動食を車に置いてきた自分を恥じた。登り始めてすぐ石仏があったが、
まさかここが終点ではあるまい。すこし登ると何と!巨大な倒木があり進路をふさいでいる!たよりのロープはぺしゃんだ。
人、つぶれてないだろうな……。
登山開始から40分が経過した。と、正面にドォーンと、巨大な岩カベが立ちはだかった!
さすがにここから先はムリだ。ほどなく右手に古い鳥居が現れた。ま、一般の方の登る参道だ、キツイといってもこの程度。楽勝!
……と思って見ると、鳥居の、今度は右側に、その裏へと続く工事現場のような階段が!まさか。ここから先はガケのはず。ガケに参道は作れないでしょう、と、恐る恐るのぞきこむと……なんと鉄製の、どうみてもたよりない橋が、岩カベにへばりつくようにぶら下がっている!足をのせると……ゲゲッ、動く、動くよこれ、それに滑る!危ねぇー。
でもここまで来たんだし、行ける所まで行かないと、ね……。あれ、今の写真、橋の奥をよく見て欲しい。ガケの上から鎖がぶら下がっている。近くに寄ると
……。何これ、登れってか、ガケの上まで!見上げると10mほど上に、どうやら洞窟があるようだ。リオでは日本選手もがんばってることだし、ここは一つ僕も、と登り始めるが、何しろ岩カベにぶら下がった鎖だもの、揺れに揺れる。
なんとか洞窟にたどりつき(はいあがり)、来し方をふりかえる、まず足元
んー、高所恐怖症の人は、やめたほうがいいな、この参拝(っていうか、危険過ぎるんですけど!)。登りはじめた道路と美しい海が見える。
かなりの高度だ。あとで地図で確認したら太田山、485mもある。ノンストップ45分。結構な山だった。
さて、その山頂(終点)についても触れておこう。洞窟にはほぼ一杯に祠(ほこら)があり、どう見てもこの洞窟の中で作られたもので、その苦労がしのばれる。
たくさんのおそなえがあったが、ほとんどがワンカップ(お酒)。ここまで持ってくることを考えれば、こうなるだろうな。お賽銭箱にお金を入れ、家族の健康を祈る。
絵馬もたくさんあった。やはり健康に関する祈りが多い……ん?こんなのもあるぞ。
ジャンケンに勝ちますようにって……ヒロ、お前どうしても勝ちたかったんだね。
ギターのピックが二枚置いてある。これも何かの祈願だろう。
さて、と。今回の冒険をここまでとし、下山を開始……って、おい、下山の方がもっと危険じゃねーか!!