カッコいいもの探し
今回、ご紹介するのは、カッコいい高校生の話。
彼の名前は、杉原。
コリアン・ジャパニーズ(在日韓国人)。
在日を取り巻く複雑な状況の中で育つが、自分の状況に同情など一切しない。
中学卒業まで民族学校で教育をうけるが
”広い世界”をみるため日本の高校に入学する。
高校での友人なし。
ヒネクレ者で、同時にロマンチスト。
3年生になり、メチャメチャかわいい在日ジャパニーズ(日本人)の女の子
桜井と出会う。
もう、気づかれたかもしれません。
杉原は、小説『GO』の主人公。
『GO』は、2000年に第123回 直木賞を受賞した小説。
その後、映画化(窪塚洋介、柴咲コウ 出演)や漫画化もされている。
- 金城 一紀
- GO
この物語の中で主人公の杉原とヒロインの桜井は、
『カッコいいもの探し』をする。
方法は簡単。
①2人で本屋・CDショップ・レンタルビデオ屋・美術館などに行く。
②本の表紙やCDのジャケットやビデオのパッケージなどをながめる。
③直感で”何か”を感じたものだけ選んでいく。
④「カッコ良かったか、悪かったか」とういふたつの基準だけで選り分ける。
”カッコいいもの”が発掘できる確率は3割程度。
空振り・凡打も当然あり、多くの時間とお金を無駄にする。
しかし、2人で発掘した"特別なカッコいいもの”がどんどん充実していく。
また、2人はお互いに気に入っているCDを薦めあう。
はじめて杉原が桜井に薦めたのが
●ブルース・スプリングスティーンの 『トンネル・オブ・ラブ』
- ブルース・スプリングスティーン
- トンネル・オブ・ラブ(紙ジャケット仕様)
そして、桜井から
「これ、すっごくカッコいいよ」と薦められたのが
●ジャズ・ピアニスト
ホレス・パーランの『アス・スリー 』
杉原はその日の晩、寝るまでに3回、このCDを聴く。
その感想が「本当にカッコ良かった」。
もちろん私は、次の日すぐに『アス・スリー』を求め、
名古屋のCDショップのJAZZコーナーに走った。
ホレス・パーラン、ホレス・パーラン、ホレス・パーラン・・・・・・・ない。
ホレス・シルバーはいっぱい置いてあるがホレス・パーランがない。
大丈夫か?パーラン。
本当にカッコいいのか?
結局、そのお店には在庫がなく、取り寄せてもらうことに。
CDが届くまで1週間程度、
ホレス・パーランについて調べる。
パーランは黒人だと知る。
どうやら『アス・スリー』はパーランの代表的傑作らしい。
大丈夫そうだ。
いや、まて。
お前はいままで何回”歴史的な名盤”に裏切られた。
うかつに信用するんじゃない。痛い目をみるぞ。
パーランは5歳で小児麻痺になり、右手が不自由に。
それでもプロになるなんて、努力家なんだなぁ。
いや、情にながされるな!
作品の完成度とは関係ない話だ。
などと自問自答しているうちに受取日。
自宅でゆっくり聞く。
1曲目がタイトル曲『アス・スリー』。
ベースのイントロからはじまってだんだん盛り上がっていく。
うん、うん、”カッコいい”。
黒人ピアニストだけあって、”黒っぽい”なぁ。
もう一人の自分がささやく。
お前、本当にわかって言ってんのか?
”黒っぽい”って、いったいどんな感じなんだよ。
詳しく説明してみろよ。
結論。『アス・スリー』は”カッコいい”!
理由。魅力的な女の子の桜井が
「これ、すごくカッコいいよ♪」と薦めていたから。
自分にとって”カッコイイ”作品かどうかは、
案外そんなところで決まります。
- ホレス・パーラン, ジョージ・タッカー, アル・ヘアウッド
- アス・スリー [紙ジャケ]