日本にいながら、時々、チェンナイやフォートコーチンで目が覚めた朝のこと、見つめていた天井や木々を思い出すことがあった。

過去の遠い視線の先に、今自分がいると思うと不思議な気持ちになる。
目が覚めて感覚に入ってくるものは、高い天井とファンの回転音、遠くにクラクションの音、暑く乾いた空気。
じわじわとインドにいるのだなと再認識する。


今日は午後からクッキングクラスに参加。
前々からずっと作ってみたかったパロタを作った。デニッシュに似た薄べったいパンのような食べ物で、層になっていて、食感がパリパリとモチモチしていてとても美味しい。

ダル(豆のカレー)にプーリ(揚げたチャパティ)が最高に合うように、
コルマにはパロタが最高に合う。

そしてパウダースパイスのミックスについても、もう一度教わった。

料理の事に戻るととても明るいアクティブな気持ちになれる。


行きたいところやレストランも沢山あるのでうまく回れるとよいな。





インドを再訪している。2年ぶり2度目のインド。
この旅でも南インドを中心に周回しようと思っている。

マレーシア経由でチェンナイ着、ルートも同じ。
前回のように乗り換えや、キャッシング、スマホのインターネット接続に苦戦することなく無事にチェンナイに到着できた。
とはいえ、一人旅、言葉の不自由、なにかと勝手がわからないというのは、心がずっと緊張しっぱなし。

2度目のインドはどんな風に感じるだろうか?
自分が曲がりなりにも作ってきたインド料理の再確認。
何もかもが初めてだった前回の旅。

午前中にチェンナイ空港に着き、入国審査を通過。
朝のチェンナイの街に降り立った。気温は30度近く、暑い。

飛行機の中ではそれほど眠れず、やや疲れた体を引きずって街へ。
銀行でキャッシング、その近くでお店でスマホのSIM契約。
前回2日半ほど要し、大ピンチを迎えた事がいともスムーズに片付いていく。


初ランチはSangeetha Vegへ。
ここのミールスは僕にとっては思い入れのあるお店で、混ぜて食べることの美味しさに初めて触れた店だ。


宿につき荷を降ろし、1人っきりになってようやく一安心。これから5週間ほどの一人旅が始まる。





オートリキシャのお父さんたちの背中は、いつも少し優しい感じがする。クラクションの嵐、埃っぽい空気がインド来訪の歓迎儀式の様。



オニオンドーサが激烈美味しかった。


美しい雲海、空の上から。







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チェンナイのあったタミルナードゥ州、ここコーチンのあるケララ州は可愛いおじさん天国だ。もちろん可愛いお母さんはじめ老若男女可愛らしい人が多いが、可愛いおじさんがひときわ目立っている気がする。


フォートコーチンでの残りの日々は、最終地という事もあり買い物をし、お店を見つけて食べ歩き、そして二度目のクッキングクラスに参加した。この日はビリヤニ(カレーを混ぜ込んだ炊き込みご飯の様な料理)といくつかのチャトニ(ソースの総称、マンゴ、トマト、など様々な味があり、カレーに混ぜたりつけダレのようにして食べたりする)の作り方を教えてもらった。料理上手なお母さんで、僕のために朝から野菜を切って待っていてくれた。この旅で何度となく食べたビリヤニという料理もこのケララのスタイルは他と様相が違う。


僕はレシピそのものにも興味があったけど、それはどちらかというと理解の糸口に過ぎず、根本的に"味を作る"という事をどんな風に捉えているのだろうか?そんな事に終始僕の興味は向いていたように思う。


音楽でいうと、ただ楽譜を見るのではなく、そもそも
メロディーやハーモニーの関係をどう捉えているか?という部分に興味があった。


というのも、クラシック音楽と民謡の根本が違う様に、日本食文化とインド食文化の根本もそもそも違うように思えて仕方がなかった。それは当然の事かもしれないが、なんども食べて、なんども教わる事で、じょじょに"どう違うのか?"と言うところを目の当たりにできた気がする。


ある夜、僕は宿のオーナーさん宅に招かれ、お母さんからフィッシュカレーを教わり、そのまま夕食をご馳走になった。それは家庭料理で、ほんとに心が温かくなった。


この南インドの旅は、いくつかのピンチがあったけど、本当に楽しい旅だった。不確かなものばかりだったけど、今しかできない事の連続だった。料理はもちろん色んな事を体験できた。この体験こそが、また僕が旅をしたくなる理由なのだと思う。体験するために生きている。



フォートコーチンのカフェ
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お母さんの家庭料理
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ビリヤニ作り
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宿のお父さんのアイロンがけ中
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さらばインディア
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帰りにタイでマッサマンカレー食べれて感激!
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再びコーチンへ戻ってきた。
この南インドの旅で最後となる街だ。

ケララ州に入ってから気づくことがあって、より米食文化が色濃くなっている様に思う。ケララに来て初めて見た米もある(とても丸くて太っている米) 。そして、なんといっても魚が美味しい。ケララ州のコーチンは河口域にできた街で、ざっくり内陸部と、いくつもの中洲の街とにエリアが分かれている。僕の滞在するフォートコーチンというエリアは、複雑な形の河口といくつもの中洲、それとアラビア海域に囲まれた場所に位置する。
商業地の雰囲気ただよう内陸部の街エルナクラムとは対照的に、カフェや公園、緑も多く、建物も全体的に背が低い過ごしやすい街だ。


州をまたぐと料理に地域差を感じられて、その変化はとてもダイナミックで楽しい。
そして、この街には猫とスパイスショップが多い。
この日僕はスパイスを購入しにフォートコーチンのショップへいった。手早く買い物を済ませて…と行きたい所が、なかなか珍しいスパイスがあったり、味見したり、店員さんと話しをして長居してしまった。


旅をしていると、時々ベストタイミングで事が起こる時がある。この時もそうで、そのショップで偶然出会った人が今から料理教室をするとの事で、早速参加することになった。


5つ程の料理を手早く作って見せてくれ、どれもとても美味しい。魚のカレーがこんなに美味しいとは思っていなかった。

コーチン界隈には名高いレストランも多く、意気込んで食べ歩いて見た。


なんとなく僕の胸の中にインドのカレーとは、否、南インドの料理はこういうものじゃないだろうか…?というような考察がよぎることがある。

メジャーリーガーの160kmの球が飛んできて、最初は驚くばかりの見逃し三振だったが、じょじょにその球速を目で捉えつつある…そんな気がしている。


(作ってみないとなんとも言えないけど…)


僕はやっぱり創作料理をして見たいんだなと思う。
基本を知り踏襲することはとても大切だと思うけども、可能性や好奇心があってほしい。


残りの滞在を大切にしたい。




フィッシュカレー、感動の味
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小学校の前で鉢合わせした子供達
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屋台料理
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バックウォーター
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野生のスパイスをいくつか教えてもらった
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このザルみたいな船の機動力が凄い!
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クッキングクラス
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満月の夜
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再びインドはケララ州コーチンへ戻ってきた僕は、止まることなくそのまま、ティルヴァナンタプーラムまで南下し、コヴァーラムという海辺の町へやってきた。空港からおよそ6時間の電車の移動だった。



ここでは、ほんとに何にもしなかった。起きてビーチへ行き、食べて、海を眺めて帰って寝る。それだけだった。
海を見ているといろんなことを思う。
ただぼんやりと浮かんでは消えていく思いを、深追いすることなく、ただただ眺めていた。
時々は眺めている景色に、時々は胸を過ぎる事に意識が移ろいでいく。大きなインド洋に浮かぶヤシの実のように、僕はただただ波まかせの風まかせで、移ろっていた。この浮世を離れた放漫さは、なぜだかその気持ちとはうらはらに、"自分はこの世界の住人である"という自負のような気持ちを次第に色濃くしていった。


チリチリと陽射しが肌を焼いている。


意識がぼんやりする。
暑くて、少し汗ばんで、無口で、真っ白で、空っぽな、非日常的な時間。


忙しい日々には天国のような時間かもしれないが、いざ身を浸して渦中にいると、暇だなぁ…と思う事もあり、人の心というものは、なんてないものねだりの身勝手なものなのかと思う。


僕はビールを飲んで、パイナップルラッシーを飲んで、肌が2トーンくらい色濃くなった。




椰子の木
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陽が落ちる
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マラバールスタイルのビリヤニ
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サリーを着たまま海に入る女性たち
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波打ち際
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ベジランチとビール
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荒い波でも子供は遊ぶ
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本当に水平線に陽が沈んでいった
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ケララは魚が美味しいし安い。マグロが500円くらいで食べれる。
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キャンディの街に着いたのは夜のこと。街角では、鉄板をこれでもかという音を立てながら叩いて、なにやら炒めている。(後から知ったことだが、これはコットゥという炒め物料理を作っている音でスリランカではメジャーな…強いて言うなら焼うどんの様な食べ物)
僕は手頃な宿を見つけて、泊まることにした。



翌日、宿で知りあった仲間とランチへ。
キャンディの街は小高い山々に囲まれた街で、眺めが良い。僕はアイスクリームを食べ終え、友達とも別れ一人うとうと眠っしまった。



誰かに肩を叩かれ、目を覚ますと1人の男の人が立っていた。日本語が少し話せるスリランカ人で、僕が具合が悪いのかと思って話しかけたそうだ。僕たちはその場で少し話し、なんとなく打ち解けた。



彼が街のことを少し教えてくれ、家に招いてくれた。いかにも高級住宅地という丘の上に住まいがあり、とても眺めのいい大きな家だった。
テラスから原生林に囲まれた川が見えて、僕は水浴びしていた象の事を思い出した。川を指して、あそこは泳げるか聞くと、彼は大丈夫だといった。
ワニはいるか?と聞いたらワニのいない川は無いと言った。なんとなく、僕の小さな夢が崩れてしまった気がした。


僕たちはテラスで色んな話をし、夕暮れまで話しそのまま夕食をご馳走になった。
彼はとても日本の事が好きで、日本にいた時のことや、ヒンドゥー教の事、宇宙の話をした。とても楽しい夜だった。


それから僕は、キャンディの街を離れ電車に乗って一気に南へ下った。
海岸沿いに線路が続いていて眺めがとても綺麗だった。絵に描いたような美しいビーチと、時々貧しい人達のくらす小屋の密集地帯を通り過ぎていった。
村人が子供と一緒にこちらを眺めて手を振っている。僕もそれに答えたが、少し気づくのが遅かったので、相手に届いたかどうか…。


こんなに遠く離れた所まで来ても誰かがいて、暮らしがそこにある。同じ時を生きているが、僕の知らない時間がそこにあって、それが幾重にも重なっている。
途方も無いくらいに過ぎて流れた時間があり、それが暮らしの中から、街の様相から滲み出ている。
僕はなにかわびしさのような感覚と、重みのようなものを感じていた。海は美しく、あっけらかんと輝いている。

日はどんどん傾いて、夕日が沈むのを眺めながらさらに電車は進んだ。ウナワチュナという街に着き、宿に入ったのは日が沈みきった夜だった。荷を崩してシャワーを浴びると、ホッとする。


次の日、ビーチへ出向いてみた。
徒歩5分ほど。ウナワチュナはビーチがとても綺麗な場所で、僕は水着は無かったけど、シャツを脱いでそのまま海で泳いで、夕方までビーチで過ごした。

翌日も別のビーチへ行き同じように過ごした。
スリランカの日々も終わりに近ずている。



コットゥ ロティ
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キャンディはフルーツが美味しい。上からリンゴ、ウッドアップル、ナシ
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宿で出会ったかなこちゃん(from京都)、世界一周したとのこと。
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ファーヒム(声をかけてくれたスリランカ人)のお宅訪問。大きい。
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バルコニーからの眺め
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一緒に夕食準備
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電車移動中、コロンボの街並みが見える
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沈む夕日
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ウナワチュナでランチ。ライス&カリー(ベジ)
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ウナワチュナビーチ
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ジャングルビーチ
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ジャングルビーチは木陰が多い
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夕焼けが綺麗
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ライムジュースは生を絞って炭酸で割ってくれる。
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スリランカは土地が美しい。小高い山々が連なっていて、森林や川、湖、樹々に至るまで、異国のそれと思わせる風情がある。


バナナの葉や、椰子の木など、馴染みの薄い木々を観て南国を思い起こすのは、とても不思議な感覚だ。初めて見るものに懐かしさや郷愁を覚えることもある。
それは、なにか南国に所縁のあるものが、自分を形成している1つとして混ざり込んでいるのではないかと思わせる。


つまりは自分が脈々と続く星としての営みからひねり出された1滴であると、
なにかのはずみで自分というものを形成している1つに、南の国に所縁のある一粒が混ざっていて、それは遥か昔、かつて南国に降った雨粒が、流れ流れて自分の体に仮住まいしているのか、はたまた昨日食べたフルーツの名残か…。

この生涯に身に覚えはなくても、人類誕生の時以来、今日この時までの過程で紛れ込んだのかもしれない。
水は海や雲に、そして動植物の体内に、はたまた蒸発して大気にまぎれ…と、住まいを変えて移動している。食物も風や動物によって運ばれて世界を巡っている。


体の7割が水であり、食べているもので身体はできている。
そう考えれば、このたいそうな思惑もあながちロマンチックが過ぎるとは言い難い真実味を帯びてくる。


巡る水や作物を、この世の循環を、この星の撹拌を、自分の一部として決して取り込んでいないと誰が言い切れるだろうか…僕は現実主義的にとてもそう思い、南国を存分に感じている。


この湧き立つ南国情緒に、たしかにこの地球の一員であると思わせる説得力を感じずにはおれない。


さてさて、スリランカ。
そんなこんなで、ネイチャーを求めている自分がいる。


象の孤児院というのがある。
山の中で保護され育てられていて、観光の1つとなっているが、この象たちの水浴びが圧巻だった。


ほんとに今を生きるという事の教科書があるとすればこれだ!というような、勝手気ままな過ごしようで、水にはしゃいで喜んでいるのがわかる。
景色もあいまって、ほんとに美しい光景だった。

人の日常では勝手気ままは嫌われる、讃えられることはないが、この輝きを目の当たりにして、自分達の社会は勝手気ままの取り扱いを見誤ってしまったのではないかと疑わざるをえない。


象の水浴びをみて、僕は海が恋しくなって来た。
僕も水浴びがしたい。
象がこちらを見つめているような気がした。





クルネーガラの湖、遠くの山頂にはホワイトブッダ
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ライス&カリー
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楽園のよう
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目の前を通り過ぎて行く
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街中も歩くので、商店の人たちが慌てて看板や店前の物を引き込んで道を開ける。
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スリランカ行きを控えている。


空港のある街マドゥライまで引き返して来たものの、航空チケットの都合で、この街で1日を過ごすこととなった。

日が明けて翌日の午前中のフライトと行きたかったが、全く予定のない空白の1日ができてしまった。
この旅が始まって以来、なにかとガツガツと渡り歩いて来たけれど、虚ろに過ごしてみるのもちょうど良い頃合いかもしれないと思った。


おりしもドミトリールームに泊まっていた為、国際色豊かな面々が揃っていて、皆一様に「私達は旅の途中、仲間ですね」という雰囲気を言葉無く漂わせている。このぬるま湯のお湯加減が、絶好の余白日和となった。


この日、ドイツ人のヘニンと、中国人のウォンと三人で山に登る事になった。突然のお誘いがあり乗っかってみることにした。驚くほどの絶景もなく、ハプニングもなく、三人で特に盛り上がりもしなかったけど、それでもこののっぺりとした時間は、この時の僕には程よい感じだった。



夕方に街に戻ると散髪に行き、それから駅前で、例の落し物を探してみて数人店の人や、通りの人に尋ねてみたけどやっぱり見つからなかった。
たまたま通って賑わっていた道端のお店でチャイを飲み(めちゃ濃くて美味しかった)友人の薦めてくれたお店で食事をとった。


夜に宿に戻ると、みんなの旅の話を聞いたり、宿にあったギターを少し弾いたりした。
少しの間、インドを留守にする。





ウォンとヘニン
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山のお猿たち
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陽気なインディアン達
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猿も、右手で食べる
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ドーサ、チャトニ、ダルカレー
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夜にウォンが屋上でダンスを披露してくれた。
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朝、宿のバルコニー
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マドゥライに着いた朝、駅の近くで荷物のひとつを落として失くしてしまった。友達へのプレゼントにとオーロヴィルで買った手すきの紙で、とても気に入っていたし、友達の喜ぶ顔が目に浮かぶようだったので本当にショックだった。カライクディへのバスの中でも、着いてからもその日一日中、なんとなくその気分を引きずっていた。


バスでカライクディに移動し、ホテルについて一息。はてさて、チェッティナード…糸口がなく、どうしたものか。近くの評判の良いお店でランチをとってみたが、ピンとこない味だった。
夜にもう一つ評判の良い店に行ってみたら、今晩のメニューはブリティッシュと、チェッティナードのミックススタイルだと言われた。純粋なチェッティナード料理はランチを食べに来いとの事。やや迷ってそのままディナーを食べる事にした。ダメ元で料理を勉強しに来ていて、チェッティナードスタイルをもっと知りたいと話してみた。オーナーを紹介してもらい、色々話していたら、明後日の14時に来なさいと言ってくれた。料理を教えてくれるそうだ。
なんとなく八方ふさがりかもと思っていた所に光明がさし、少しホッとした。

が、それは束の間だった。
出てきたこの日の夕食がそれほど美味しくなかった。
おまけに、給仕スタッフに料理のことを尋ねても「ベジタブル」としか返って来ない。料理の説明が出来ない(そこそこ良いレストランなのに)事に不安を覚えた。

大丈夫かな…このレストラン…。

僕はベジタリアンのコースメニューを頼んでいるわけで、出てきた物がベジタブルなのはわかる。見たらわかるし、なんなら出て来る前からベジタブルなのは分かっている。

もっと詳細を伝えてくれ、料理名を言ってくれ、内容を話してくれ、と何度も何度も繰り返してやっと帰ってきた答えが「トマト」と一言。

うんうん、トマトね。僕も入ってるやろなーと思ってた。見た目も赤いし、味もトマトやしぜったいトマトやろなーと思ってたよ。

と思いながら、それから?他は?と聞いてみたらニコニコしながら立ち去っていく。

僕たちの会話はリアル志村けんと、いかりや長介だった。
ここで機転が利いたのは、だめだこりゃ、次行ってみよう!とすぐに切り替えた事だった。

僕は一番キビキビと動き、ニコリともしない一人の人物に的を絞って話しかけた。彼は、はるかにちゃんと説明してくれた。
ただやはり、味の印象は良くなかった。僕は一抹の不安を残したまま、場を後にした。今朝の落し物の事もまだ少し尾を引いていた。



翌日、同じお店のランチへ。純粋なチェッティナードスタイルのランチを楽しみにしていた。
カライクディに来て以来、ヒットなし。
おまけに、ピッチャーゴロが二打席続き、やや追い込まれていた感があったけど、このランチは会心の一撃となった。
このランチはとても美味しく、バランスや彩も綺麗だった。なるほど!と思わせる味がある。
このランチがダメだったら翌日のクッキングクラスはキャンセルしようかと迷っていたけど、この迷いが払拭された。



変わって次の日、約束の時間に料理長のポンディさんを訪ねたが、ポンディさんは今日はお休みとのこと。う〜ん…初日に挨拶した時には、私が教えてしんぜよう!みたいな感じだったのに…。
替わりにと出てきたのは事務所にいたお母さん。私はここでデモンストレーションを何度もしてるので大丈夫よ、と言う。僕も彼女を信じてみようとおもった。

彼女はミナ。あらかじめ材料を揃えていて、段取りも悪くない。僕の質問にも、丁寧に答えてくれた。
ミナは次々に4つの料理を仕上げてくれて、出来上がりはどれも絶品だった。僕のチェッティナードスタイルを勉強したいという意向を汲んでのことだろうか…、ほんとに素晴らしいストロングスタイルな料理たち。
昨日のランチの気になるレシピも教えて欲しいと言ったらこれも教えてくれた。



この経験は料理とスパイスの関係を知るのにとても役に立った。ただしやはり自分で作って実践しなければ身にならない。手から生み出せるようになってはじめてふにおちる。早く作ってみたい気持ちが膨らんでくるが、まだしばらく旅は続く。
ホテルに帰った僕は、撮影した写真を眺めながら何度もイメージを繰り返し思い描いてみた。





チェッティナードスタイルのランチ
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スパイスセット
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ミナのレッスン
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この4つはどれも美味しかった
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ポスターをムシャムシャ食べるヤギ
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新聞紙に包んだ手すきの紙、これが最後の後にお別れする事になった。
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遡ること10日程前…チェンナイでのある夜の事。
クッキングスクールが終わった僕たちはレストランで食事をとる事にした。いくつかの料理を選択した後、あと何かもう一品…というところで大ちゃんが「カレーの勉強してるんだったらチキンチェッティナードとかいいんじゃない?」と言った。


はて…チェッティナード???
と思ったが、僕はあまりたいそうに受け止めず、そのまま乗っかる様にオーダーした。
大ちゃんが何をゆわんとしているのか、あれこれ聞く前に食べてみた方がその真意がわかるだろうと思った。


食べてみるとそれは辛口で、スパイスも強め、ストロングスタイルのソースだった。なるほど、大ちゃん。


チェッティナードとは地域の名前で、スパイスをふんだんに使ったチェッティナード地方特有の調理方法とのことだった。
それから数日、そのチェッティナードスタイルの料理がどことなく気になっていた。ネットで調べてみるとKaraikudi(カライクディ)という街を中心とした地域を指してチェッティナードと呼ぶらしい。


これまで習った料理はブラーミンという、最上層カーストで用いられた調理手法だった。スパイスの使用量もそんなにたくさんではない。
一方、チェッティナード料理は当時高価だったスパイスをふんだんに使い、富裕層の美食志向とともに発展してきたスタイルとの事。


その振り幅を知る事で見えてくるものがあるかもしれない…。
僕の好奇心はノーチェックだったこのカライクディという街に注がれた。



そして僕は今、夜行列車に揺られている。
プッタパルティを後にしてバンガロール市街地に戻り、そこから一気に南下してマドゥライという街を目指している。カライクディはマドゥライからわずかのところにある。



本来はプッタパルティにもう少し長居するつもりだった。
クリシュナさんに掛け合って翌日にCanteenをのぞかせてもらう手もあった。
が、このタイミングで移動すれば、新しい街にまとまった時間の滞在ができる。
この判断が吉と出るかどうか…。

情報は今の所、チェッティナード地域の中心がカライクディということのみ。
とても細い糸を手繰り寄せている。