時代劇の寺子屋などのシーンで先生が論語などの一節を読み上げ、
子供たちが、その通りに声をそろえて読み上げ、
先生がまたその次の一節を読み、また続けて子供たちがそれを復唱する。
「素読」という学習法で夏目漱石くらいまでは、
この学習法を受けていたと聞いたことがあります。
内容を深く考えず、口調のおもしろさに引っ張られ、
暗唱できるようになるとのことです。
ここで一つ思い出しました。
トロイの遺跡を発掘したことで有名なシュリーマンは、
天才的な語学の才能の持ち主で、
著書に外国語の習得の効果的な学習法を記しています。
「非常に多く音読すること、決して翻訳しないこと、
毎日一時間充てること、等々」
外国語が弱い私には耳の痛いことですが、
音読し、決して翻訳しないことというのは、
意味を考えず口調の面白さを感じるように音読する素読と、
相通じるようなところがあるように思います。
本の読み方を、ほぼ黙読で過ごしてきたものには、新鮮に感じます。
どんなものか一度経験したいと思い、
素読を中心にした国語教室が開かれるというので、
参加してきました。
参加者は多くが親子それも小学校低学年か幼稚園生連れが多く、
やれやれこれから2時間半、この子たちと、
延々と論語や漢詩を読み上げてゆくのかと思っていました。
授業の初めに「立腰(りつよう)」の説明がありました。
脱力して、くたっとした姿勢をとり「立腰」の声で姿勢を正す。
この姿勢で腹から声を出すのが大事なのだそうです。
これを二度三度繰り返すと先生が生徒たちの心を、
きっちり捕まえたことがわかります。
授業は、まずタイムリーな話題である元号を、
いくつか読み上げてゆきました。
それも紙に書かれたものではなく、
プロジェクターで、パワーポイントを使って文字を次々に映し、
子供たちが大きな声で、先生の後を復唱してゆくのです。
「平成」の出典である史記や、
「令和」の出典、万葉集の一節を素読しました。
かと思えば、吉田松陰の名前と業績を、替え歌で歌ったり、
4月の様々な呼名をクイズ形式で子供たちに答えさせたり、
これらもパワーポイントの画像と音で表現されて、
全く飽きることがありません。
また、先生一人が前に立つのではなく、子供たちが研究発表したり、
親も交えて、暗唱できるものを披露するということもありました。
暗唱文の中には広島カープの応援歌まで入っているという
バラエティーに富んだものでした。
大化に始まり最新の令和まで248の元号を
先生について一気にすべて読み上げるワークは、
風邪が治りかけの喉には少しきついものでした。
それでも元気いっぱい大きな声で読み上げてゆく子供たちに
負けないよう、のど飴を舌下に入れながら何とかやり通しました。
授業進め方や、映像なども非常に工夫されていて、
あっという間の2時間半でした。
素読という古典的な教授法を
現代のツールを使って進化させた授業を目の当りにして、
様々な工夫をすれば、
忘れられたものを復活できるということに気づかされました。