だいぶ前のことですが、ある知り合いの一家で、

夕食をご馳走になる機会がありました。

 

夫婦と小学生の子供三人と子供たちの祖母の5人、

プラス私の6人で食卓を囲みました。

食事をとる広めのDKにはテレビはありません。

テレビは隣の居間にあるだけです。

 

食事の時間になると子供たちはテレビの前を離れて、

DKのテーブルに座ります。

一番下の小学校2年の男の子は、

この番組はあとちょっとだからと少し遅れて着席。

 

こちらは少し前からビールをいただいています。

子供たちの年齢は、小学五年生の長男と、

年子で4年生の女の子、それと遅れてきた2年生という構成でした。

 

何かの調査結果に、テレビを消して食事をする家庭

(確か小学生のいる)は4軒に1軒とか聞いたことがあります。

ここはその四分の一軒だなと思いながら、

夕食をいただきました。

 

両親とも食事中はテレビを見ない方針だといっていましたが、

子どもの好きな番組は食事時と重なり合うもの。

よくさっさとテレビの前を離れて、

テーブルに着くものだと感心していました。

 

しばらくしてなんとなくその理由がわかりました。

この家の特殊事情だとは思いますが、

真ん中の女の子がとにかくおしゃべり。

長男も負けずにしゃべりたがり、

一番下は上二人に何とか割り込もうと、

頑張ってアピールする。

その循環がにぎやかなこと。

 

まず、女の子が今日学校であったことを話し始める。

話し方が面白く親も私もふんふんと耳を傾ける。

ただ、簡略に話すことができないのか、

したくないのか、冗長になります。

 

すると次に話したい長男が、

「はい3分経ちました。次は僕の番ね」

と言って自分の話を始める。

一つ上ですが、女の子ほど話がうまくない、

と今度は女の子が「面白くない。はい退場」。

と言って先ほどの続きを話し始める。

 

3番目も自分も聞いてもらいたくて、

「お兄ちゃんとお姉ちゃんばかりずるい今度は僕の番」。

こんな調子で延々とおしゃべりが続いてゆく。

これでは黙ってテレビを見ている場合じゃない。

報告合戦のほうがよほど刺激的です。

 

テレビを見ない家すべてがこういう盛り上がりではないと思いますが、

食事中に家族そろって、テレビを見ていたら、

こんな調子の会話が生まれることはないと思います。

 

中学生以上になるとテレビではなく、

今度はスマホをみながらになるようです。

ファミレスなどで高校生が数人のグループで入ってきて、

注文の料理が出てくるまで、

全員が黙ってスマホをいじっている。

 

こういう姿は、私のような古い人間からはかなりの違和感を覚えます。

これが、グループではなく男女のカップルできて、

同じようなことをやっていると、

何のために一緒に食事に来ているのか、

聞きに行きたくなります。

 

テレビやスマホを見るのは特別悪いことだとは思いませんが、

目の前の人間を無視するような気がします。

お互いさまに無視しているのですから、

おあいこなのかもしれません。

 

人生、残りが少なくなってくると、

人と食事を共にするのは貴重な時間に感じられます。

その時に、テレビやスマホがないほうが、

料理も人生の味わいも増すような気がするのですが、

四人に一人の少数意見でしょうか。