我が家を建て替えるときに、不用品を整理、大処分しました。その中に仏壇のある部屋の壁には祖父母、父母の遺影(写真と肖像画)があり、処分に悩みました。
 
 「遺影」といってもピンとこない方もいるかもしれません。大体古いお宅の仏壇のそばの壁に掛っている肖像画または写真です。仏壇がご本尊様の主役の舞台だとすれば、亡くなった方をはっきり意識させるのが、遺影の役割だと思います。

 新しい家はコンパクトにしたので、仏間を作る余裕はなく、居間に現代風にした仏壇を置く予定にしています。でも、額に入った遺影は置く場所がありません。 遺影は、祖父母や父のものは写真をもとに描き起こした肖像画で、当然のように白黒、喪服スタイルで、母親のものはカラー写真です。 

 

 ただ、たとえ飾る場所があったにしてもこれらのものをすべて、部屋に飾るのはどうかなあ、という感じです。もう少しはっきり言えば、なくてもいいな、です。

 ただ、なじんできた遺影を丸めてゴミとして処分するのに抵抗があるのです。

 

 考えてみれば子供のころから、仏壇と遺影はセットでした。どこのお宅にお邪魔しても、仏壇のあるおうちには我が家と同じようにいくつかの遺影が並んでありました。最近の家では大きな遺影ではなくフォトスタンドに入った小さな写真が、仏壇の中においてあるというパターンが多いように感じます。 

 

 ネットで調べると、中には仏壇はご本尊様を安置するもので故人の写真はおくべきでないなどの意見もあるようですが、大半の人にとって仏壇のご本尊様は、葬儀のやり方を決定する各宗派のシンボルのようなものではないでしょうか。

 

 仏壇に向かえば、ご本尊様よりは、ご先祖様に手を合わせている意識がつよいはずです。信仰心の強い方は、先祖崇拝ではなく、ご本尊を一番に考えるでしょが、少なくともわたくしは惰性で、ご本尊 < ご先祖様です。そしてその故人やご先祖様を偲ぶよすがとなるのが遺影だと思います。

 

 ですから、逆に言えば遺影の人を知る人がいなくなれば、それは何のシンボルでもないただのそこら辺のスナップ写真と大差なくなってしまうということになります。

 ということで、わたくしも最初遺影を小さくして仏壇のなかに置くつもりでしたが、それでも4枚は多い。そこで、遺影をスキャンして、デジタル化してデジタルフォトフレームでスライドショーをすればよいと思いつき、家電量販店に行きました。

 

 そこで分かったことは、デジタルフォトフレームは結構高い、額の部分のデザインが仏壇に合わない、何より電池タイプのものがない。確かに四六時中フレームをつけているのであれば、コンセントからの電源でなければならないでしょう。

 

 お店の人に聞いてみれば、このデジタルフォトフレームはスマホに押され、新しい製品はほとんど出ていないとのことでした。

 

 うーん、せっかくいいアイデアだと思ったのに。でもまてよ、何もいつもスイッチオンの必要はないのじゃないか。

 

 極端な話、お線香をあげる時だけ、遺影がスライドショーで現れればいいのではと考え直しました。それなら、ほとんど使っていない小型のタブレットがあるのでこれを充電スタンドにセットして仏壇の隣にでも置いておけばよいと、思い直しました。

 

 今日知り合いの写真店に、額から外して保管しておいた遺影を持ち込み、データ化をお願いしてきました。これで、遺影をゴミにするという気の重さがなくなり、かつ新しい環境になじんだスタイルができると思っています。