岩波書店の「広辞苑」第七版が1月に出版されました。

ニュースで聞いていたので、1月の下旬本屋さんで買い求めてまいりました。

 

最近は電子辞書かハンディな辞書しか使ったことがなく、

今更、紙の辞書かとも思いました。

それでも、見た目の存在感や、開いたページに、

一望できる項目の数の多さ、さらには指に触れる紙の感触など、

単なる情報の集積だけではないものにあらためて魅力を感じました。

 

とはいえ、何万語入っていようとも

軽々とポケットにも入る電子辞書とちがって何せ重い。

加えて、特別定価の提供期間限定なのか付録として

400ページ以上の漢和辞典や略語辞典がセットされています。

 

おまけに三浦しおんさんの「広辞苑をつくるひと」

という文庫本までついているのです。

持ち帰るのに一苦労です。

辞書を開いて使わなくなったら、ウエイトトレーニングに使えそうです。

24万語以上の言葉をある程度の厚さの中に収める工夫か、

字が小さいのは仕方ないのでしょうが、

高齢者にはなかなかつらいものがあります。

 

本体は、飾っておくことにして、まずは付録と、文庫本に目をとおしました。

これがなかなか面白い。

「広辞苑をつくるひと」は言葉そのものの検討をする人にとどまりません。

フォントのデザインの話や、辞書の中の挿絵というか図版を描くイラストレーターさん。

さらには、製本屋さん、辞書を入れる紙の「函」を作る人などが紹介されています。

「箱」ではなく「函」となっていました。

ただ、この区別は広辞苑自体では、はっきりわからないところが面白い。

それぞれの人々にインタビューをし、

工場見学の様子がレポートされていて、

学校の社会見学をしてきたような気分になりました。

 

400ページの付録のほうも「異字同訓」漢字の使い分け例などが載っています。

例えば【掛ける】【懸ける】【係る】【架ける】などがあって用例が出ています。

 

ちなみに、ここで引っかかったのは、

たしか山本夏彦さんのコラムの中に「電話はカケルもので入れるものではない」

という表現があったのを思い出し、さてどの字だったのか不明だったからです。

辞書本体には【掛ける・懸ける】他に向けてある動作・作用を及ぼす。

とあり、「電話を-る」と出ていて、どれでもよさそうな感じです。

最もこの言葉はケーブルをつないで遠くに信号を送るイメージがあり、

携帯やスマホなど無線でのやり取りが大半になると、

「電話を掛ける」ではなく「電話を入れる」のほうが

感覚的に合うような気がしてきます。

 

こんな暇つぶしもたまにはいいものですが、

重い辞書で、遊ぶことはそうないのではないのかと、

早くも「ツンドク」の言い訳を、力の衰えのせいにすることを考え始めております。