完全試合とは相手チームのランナーをまったく出さずに、勝利することで、これまでに成し遂げたピッチャーは日本のプロ野球では16人います。
プロ野球史上初めての完全試合は1950年6月28日の巨人ー西日本の試合、巨人の藤本英雄投手が初の栄誉に輝いています。(西日本球団は現存しない)
その舞台は青森市営野球場。
青森市によりますと、県内初のプロ野球公式戦だったということです。
この日は変則ダブルヘッダーで2試合行われ、巨人ー西日本は2試合目でした。
初回から快投を続ける藤本投手。
しかし、相手の先発はプロ野球史上初とも言われるアンダースローの重松通雄投手と、巨人打線は3回までホームを踏めていませんでした。
しかし、4回1アウト1、3塁の場面で、打席に入ったのが7番の藤本投手でした。
ライトへの犠牲フライを放ち、現代風にいう“ジエンゴ”で1点を得ます。
投げてはスライダーでゴロの山を築いていく藤本投手。
ランナーを1人も出さず、9回2アウトから代打で出てきた小島利男監督を三振に打ち取り、結局、打者27人で試合を終えると、4―0でチームは勝利。
藤本投手が史上初の完全試合を92球の“マダックス”で達成しました。
藤本投手は前夜、登板予定はないと思い、徹夜で麻雀🀄️をしていました。
ところが、先発予定の投手が急病で登板できず、その代わりに先発したのです。
この試合に同行した記者はわずか4人しかおらず、東京に帰ってからこの快挙を知ったそうで、しかも写真も残っていませんでした。
プロ野球初の大記録なのに華々しさが残らない結果となってしまいました。
また、大記録達成の瞬間に丸太と板で作ったにわか作りの記者席が轟音を立てて壊れたそうです。
1950年6月28日 巨人ー西日本
巨人の先発オーダー
監督 水原茂
1(右)萩原寛
2(左)小松原博基
3(二)千葉茂
4(一)川上哲治
5(中)青田昇
6(三)手塚明治
7(投)藤本英雄
8(捕)藤原鉄之助
9(遊)山川喜作
西日本の先発オーダー
監督 小島利男(選手兼任)
1(遊)平井正明
2(中)塚本博睦
3(右)永利勇吉
4(二)南村不可止
5(一)田部輝男
6(三)木村保久
7(左)関口清治
8(捕)日比野武
9(投)重松通雄
藤本英雄投手は1918年5月18日生まれ、山口県下関市出身。
1942年に明治大学から東京巨人軍に入団。
9月27日に初出場を果たすとそこから無傷の10連勝を果たしました。
1943年には56試合に登板、うち先発では46試合投げていて、34勝11敗、防御率は0.73(プロ野球記録)と驚異の数字を残します。
最多勝(34勝)、最優秀防御率(0.73)、最多奪三振(253)の投手3冠に加え、最高勝率(.756)と最多完封(19、プロ野球記録)という名誉にも輝いています。
1944、46年は選手兼任監督。(1945年はプロ野球公式戦なし)
1947年に中日に移籍したが1年で巨人に復帰。
肩の故障で低迷したが、スライダーを習得して復活しました。
1955年に現役を引退しました。
通算成績は367試合登板、227完投、63完封、200勝87敗、2628.1イニング、1177奪三振、防御率1.90、勝率.697。
通算防御率と通算勝率はともにプロ野球記録(2000イニング以上)。
打撃も良く、通算312安打、15本塁打、151打点、打率.245。
結婚してからは妻の姓の「中上」を名乗ったが、登録名は引退まで「藤本」の姓で通しました。
引退後は巨人のコーチやスカウト、野球評論家、社会人野球の大和証券の監督も務めました。
1973年にアメリカに渡り、巨人の駐米スカウトを務めました。
1976年に競技者表彰で野球殿堂入りしました。
1997年4月26日、76歳で亡くなりました。
▽日本プロ野球で完全試合を達成した投手16人
(6月27日現在)
1950年6月28日 藤本英雄(巨人)
※プロ野球初
1955年6月19日 武智文雄(近鉄)
1956年9月19日 宮地惟友(国鉄)
1957年8月21日 金田正一(国鉄)
※唯一の左投手の達成
1958年7月19日 西村貞朗(西鉄)
1960年8月11日 島田源太郎(大洋)
1961年6月20日 森滝義巳(国鉄)
1966年5月1日 佐々木吉郎(大洋)
※偵察オーダーで当初は1回で降板する予定だった
1966年5月12日 田中勉(西鉄)
1968年9月14日 外木場義郎(広島)
※16奪三振(セ・リーグタイ記録)
1970年10月6日 佐々木宏一郎(近鉄)
1971年8月21日 高橋善正(東映)
1973年10月10日 八木沢荘六(ロッテ)
1978年8月31日 今井雄太郎(阪急)
※指名打者導入後のパ・リーグ初
1994年5月18日 槙原寛己(巨人)
※ドーム球場初、人工芝球場初、平成唯一
2022年4月10日 佐々木朗希(ロッテ)
※20歳5か月は史上最年少、19奪三振(プロ野球タイ記録)、13連続奪三振(プロ野球新記録)