テレビ東京が今年1~3月期の世帯平均視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区)のゴールデン帯(午後7時~10時)で、1964年の開局以来初の最下位脱出を果たしたことが明らかになり、テレビ界に大きな衝撃が走りました。
テレビ東京が最下位を脱し、フジテレビが最下位に転落しました。
現在は個人視聴率や13~49歳の個人視聴率であるコア視聴率が重視される時代ですが、世帯視聴率であってもかつて隆盛を誇ったフジテレビがいよいよ最下位になってしまったことは、テレビ関係者にとってはかなりのインパクトとなりました。
フジテレビは、4月26日に同局で行なわれた定例会見でこの件に言及。
視聴率の苦戦が続いていることについて港浩一社長は「人気商売ですから順位は上のほうがいいんですけど、こういうこともあるなと。真摯に受け止めて反転攻勢を練っていきたい」とコメントしました。
主要民放キー局のフジテレビが、そうではないテレビ東京に負けたんです。
いかに現在、フジテレビが厳しい状況に直面しているかがうかがえます。
こうした状況を受けてでしょう、フジテレビ編成局は今春に大規模な改編を敢行。
新ドラマもスタートしましたが、より迷走してしまっている、とも指摘されています。
広瀬アリスさんが主演、相手役を眞栄田郷敦さんが務める、フジテレビの看板ドラマ枠である月9ドラマ「366日」が4月8日にスタートしたものの、視聴率は振るっていないようです。
4月22日のコア視聴率は2.3%(すべてビデオリサーチ調べ、関東地区)と、同時間帯の「しゃべくり007」(日テレ)の半分ほどの数字しか取れていないというそうです。
赤楚衛二さん主演の「Re:リベンジ-欲望の果てに-」(フジテレビ)も、元関ジャニ∞の錦戸亮さんが久々に民放の連ドラに復帰するということで、放送前は話題を呼んでいたものの、4月25日のコア視聴率は1.5%と低迷しています。
「366日」も「Re:リベンジ」もフジテレビにとっては勝負のドラマだったはずですが、あまり話題にもなっていません。
そして、4月27日に放送された明石家さんまさんが刑事役で主演するギャグドラマ「心はロンリー 気持ちは『…』FINAL」には、元妻の大竹しのぶさんも出演するという話題性があったものの、こちらもコア視聴率は1.5%と大惨敗でした。
同ドラマはフジテレビ開局65周年作品で、昭和~平成のフジテレビを代表するコンテンツでしたが、視聴者を集めることはできませんでした。
さらに、中居正広さん司会の「だれかtoなかい」も、嵐・二宮和也さんからムロツヨシさんにパートナーが変わってからは数字が落ちてきている感じです。
春改編で数字を上げているバラエティ番組も一部ありますが、ドラマは中心に厳しい状態は続いています。
そして、その改編の一連を仕切っているのが編成制作局です。
編成は、テレビ局の頭脳のような部署で、どういう番組を放送するか最終的に決定する力を持っています。
これまでも編成を中心に改編を推し進めてきたわけですが、世帯視聴率とはいえテレビ東京に負けたというのは編成局の敗北でもあるでしょう。
今回の事態には局内からも多くの声が上がっているようですが、夕方のニュース番組「Live News イット!」にも厳しい目が向けられているといいます。
放送6年目に突入したフジテレビ夕方の報道・情報番組「Live News イット!」は4月1日より大リニューアルを実施しました。
2月にNHKを退局した青井実アナウンサー(フリー)を司会に迎え、フジテレビの宮司愛海アナウンサーは続投。
パトリック・ハーランさん(パックンマックン)が「スペシャルキャスター」として週3日レギュラー出演する新体制へと変わりました。
青井さんはNHK在職時に親族の企業から役員報酬を得ていたと報じられ、「イット!」の司会就任時にも疑問や批判の声が上がってしまいました。
そんな青井さんが加入して1か月が経過しましたが、数字は改善されていません。
夕方の報道・情報番組では「news every.」(日テレ)が1位、「スーパーJチャンネル」(テレビ朝日)と「Nスタ」(TBS)が2位タイ、少し間が空いて「イット!」が4位という状況が続いてきました。
「イット!」のリニューアルから1か月が経過しましたが、他局に迫るどころかさらに差をつけられてしまっている感じです。
たとえば4月25日の午後6時台では、「news every.」の個人視聴率が4.0%、「Nスタ」が3.1%、「スーパーJチャンネル」が2.7%、「イット!」が1.9%でした。
藤井貴彦アナウンサー(日テレ)が抜けた「news every.」の数字が落ちてきていて、「Nスタ」と「スーパーJチャンネル」が猛追しています。
そんな中、1人蚊帳の外にいるのが「イット!」なんです。
青井アナが新キャスターになってからも数字は改善せず、悪化している感すらあります。
さらに、大型連休中に午後6時50分から10分間だけ「サザエさん」を放送したことに対しても、局内から不満の声が上がっています。
フジテレビでは、4月29日から5月3日まで「ゴールデン「サザエさん」ウィーク傑作選」と題し、午後6時50分から7時まで過去のエピソードを1話ずつ放送しました。
フジテレビ上層部が“GWに「サザエさん」をやろう”と提案し、放送が決定したといいます。
昨今はどこの会社も自社のコンテンツやレガシーを大切にしていこう、となっていますが、フジテレビではそれが「サザエさん」だったということのようです。
たしかにその考えは理解できます。
日テレでは「名探偵コナン」(読売テレビ)が通常放送でもそうですし、「金曜ロードショー」で劇場版を放送すればとんでもない視聴率を取ります。
フジテレビもそういった流れで「サザエさん」を放送することになったようですが、テレビ各局は今、コア視聴率、つまり若者の個人視聴率を重視しています。
「サザエさん」は国民的なアニメで、多くの人に愛されている作品ですが、若者向けのコンテンツでは決してありません。
若い層の視聴者が大型連休中の午後7時前に、「サザエさん」を見るためにフジテレビにチャンネルを合わせるかというと、それは考えにくいです。
案の定、数字はよくなかったといいますし、そもそもこの時間に「サザエさん」が放送されていたことを知らない人も少なくなかったのではないでしょうか。
「サザエさん」といえば、毎週日曜日の夕方6時30分から放送されているものとして日本国民の生活に根付いています。
内容は昭和を描いていますし、基本的にシニア層が好きな作品です。
大型連休の期間中に10分だけ午後6時50分から編成したところで“誰が見るんだ”と、局内からも指摘する声が出ていたといいます。
「イット!」の放送時間を削っての放送でしたが、たかが10分といえども番組内部はかなり混乱したといいます。
ずっと同じタイムスケジュールで番組を制作してきたにもかかわらず、急遽5日間だけ10分短縮する必要があるわけです。
日々、取り扱うネタが変わるニュース番組なら、なおさらキツいでしょう。
迷走が指摘されてしまっているフジテレビですが、大型連休中の「サザエさん」がその代表例だと言われています。
1980年代から90年代前半にかけて「楽しくなければテレビじゃない」のフレーズで隆盛を誇ったフジテレビ。
1982年から1993年まで12年連続で視聴率3冠王を達成したこともありました。
しかし、今やテレビ東京にも後塵を拝す状況になってしまいました。
まさに正念場を迎えていると言えそうな同局だが、まだまだ優秀なテレビマンは多くいるはずです。
その底力を今こそ見せてもらいたい。