減る戦争番組 | 女装男子かなこのブログ

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終戦の日の8月15日、X(旧ツイッター)には「火垂るの墓」の関連ツイートが飛び交っていました。


なかでも目立っていたのは、

「火垂るの墓やってないな」

「火垂るの墓っていつから金曜ロードショーで放送しなくなったんだろう」

「火垂るの墓何でテレビで放送せんなったんやろうな不思議や」

という声。


実際、アニメ映画「火垂るの墓」は高畑勲氏の追悼放送だった2018年4月を最後に約5年4カ月間、放送されていません。


「昔は火垂るの墓を8/15に放送してたよね」

「終戦の日 テレビでは必ず『火垂るの墓』が放送されてたのに・・。戦争の悲惨さを訴える力が弱まってる気がします・・」

「今日8月15日か。火垂るの墓やらんからわからんかった。毎年『またかよ』って思ってたけど」

などの声もありました。


同作は1989年以来ほぼ2~3年ごとに放送され、13回中10回は8月だったものの、15日に放送されたことは一度もありません。


これらのツイートは、いかに“「火垂るの墓」=戦争や終戦”というイメージが強いかを物語っています。


ツイートの中には、

「8月15日は火垂るの墓を放送する日にしよう」

「やっぱり終戦記念日周辺には、毎年『火垂るの墓』を放映しよう」

などと訴えかけるような声も多かったです。


これらのような声が飛び交っているにもかかわらず、なぜ「火垂るの墓」は放送されなくなったのでしょうか。


Yahoo!リアルタイム検索(X)に「火垂るの墓」と入力すると、予測変換ワードに「放送禁止」「清太」「放送」「おばさん」などが表示されます。


4年強のブランクが空いた2010年代前半から、ネット上には同作の「放送禁止」をめぐるさまざまな噂話が書き込まれていました。


その内容は、政治や政府絡みやドロップの商標問題など、都市伝説を思わせるものが大半を占めています。


日本テレビによる地上波の放送だけでなく、「火垂るの墓」に限らずスタジオジブリ作品はほとんどの動画配信サービスでも見られないことも、噂話の書き込みに拍車をかけていました。


しかし、結局のところ放送されなくなった最大の理由は、視聴率が獲れないからでしょう。


16年前に放送された2007年以降、同作の世帯視聴率はすべて1桁であり、最後の2018年は高畑勲氏の追悼放送だったにもかかわらず6.7%にとどまりました。


日テレは当時から世帯視聴率ではなくコア層(13~49歳)の個人視聴率を重視しているが、これも他のジブリ作品より厳しい数字というそうです。


1988年の公開当時、「火垂るの墓」と同時上映された「となりのトトロ」は2年おきに放送され続け、今なお2桁中盤の世帯視聴率を記録し続けている(もちろんコア層の個人視聴率も高い)ことからも、両作の明暗がうかがえます。


時代的に厳しいとみられているのは、「子どもが戦争で社会や大人から孤立し、命を落としてしまう」という救いのない物語が現在の視聴者感情には合いづらいからでしょう。


実際、子どもが主人公の映画やドラマでこれほどのバッドエンドはほとんどお目にかかれません。


15日のXには、

「一度観てから、その後観れなくなりました」

「子どもができてからは辛過ぎで見ることができません」

「改めて鑑賞したいけど、勇気出ない」

などの声があがっていました。


これは「どんなに良い作品や見るべき作品でも、これほどつらく重いものは見ていられない」ということでしょう。


個人を尊重するムードが浸透し、オンデマンドで好きなものを選べるようになり、「楽しいことだけ感じて生きていきたい」「つらく重いことはできるだけ遠ざけたい」という人が増えました。


しかもその心理傾向は、若年層だけでなく上の年齢層にも広がりつつあり、連続ドラマでもつらく重い作品は減り、コメディのような楽しく明るいものが増えています。


日本テレビが映画を放送する「金曜ロードショー」も近年は、家族で楽しみやすいエンタメ作をピックアップ。


事実、この2か月間を見ると、「風の谷のナウシカ」「もののけ姫」「キングダム2」「カールじいさんの空飛ぶ家」「レイダース・失なわれた聖櫃(アーク)」「パイレーツ・オブ・カリビアン」などが放送されました。


これらの作品と「火垂るの墓」の世界観は大きく異なる上に、「終戦の日前後に放送する」となおさらメッセージ性が強くなり、つらく重いと感じやすいのかもしれません。


また、ネット上には「『火垂るの墓』の見られ方が変わった」という声も目立ちます。


前述した予測変換ワードの中に「清太」があったが、これは主人公・清太の言動を疑問視する声です。


14歳の清太は、働かず、親戚の世話になってもお礼すら言わず、手伝いもせずに、人々とのつながりを絶って孤立し、4歳の妹・節子を死に追いやった「加害者」であり、「自己責任」という見方の人が増えていました。


かつては、戦争の悲惨さや大人の冷酷さなどから清太に同情する声が大半を占めていたが、現在の視聴者感情では彼の言動が引っかかって感情移入できない人がいるというそうです。


視聴率を獲るのが難しい上に、主人公に否定的な声が増えたのだから、日本テレビが放送を見送るのは当然にも見えます。


ただ、これは「もし視聴者感情がかつての状態に戻ったら、『火垂るの墓』は再び放送される」ということでもあるのでしょう。


では今夏、「火垂るの墓」以外の戦争関連番組はどの程度放送されたのでしょうか。


まずNHKは、6日の「広島平和記念式典」と9日の「長崎平和祈念式典」、15日の「全国戦没者追悼式」を生中継しました。


この時期は夏の全国高校野球が開催中であり、9日は「長崎平和祈念式典」のため高校野球中継は通常より早い午前11時に総合テレビからEテレにリレーされました。


15日は高校野球は台風🍃🌀☔️で中止となり、正午に試合を中断しての黙祷は行われず、午後6時までの総合テレビの番組は「全国戦没者追悼式」と連続テレビ小説「らんまん」を除き、全て台風のニュースに変更されました。


「NHKスペシャル」では連日特集を放送、5日に「いのち眠る海~再審調査で明かす太平洋戦争~」、6日に「原子爆弾・秘録~謎の承認とウラン争奪戦~」、7日に「発見 昭和天皇 御進講メモ~戦時下 知られざる外交戦~」、12・13日に「新・ドキュメント太平洋戦争1943 国家総力戦の真実 前・後編」、15日に「Z世代と“戦争”」を放送しました。


さらにドラマでも、10日に「軍港の子 よこすかクリーニング1946」、14日に「アナウンサーたちの戦争」を放送しました。


一方、民放では、日本テレビ系は「NNNドキュメント’23」で、「伝承の期限 どうつなぐ?ヒロシマの記憶」(6日深夜(7日未明))は広島の被爆体験を語り継ごうと志す若い世代と、彼らに希望を託す被爆者を、「でくのぼう~戦争とPTSD~」(13日深夜(14日未明))は戦地で心を壊された元兵士の苦しみを、「あの日は消えない ヒロシマ被爆者は今」(20日深夜(21日未明))は広島から離れた地で原爆の記憶に苦しむ人と、3週連続で戦争に関するテーマを取り上げました。


そのほかは、12日(土曜日)午後に「つなぐ、つながるSP 戦争と子どもたち 2023→1945」(TBS)、13日(日曜日)午後に「僕たちは戦争を知らない ~戦禍を生きた女性たち~」(テレビ朝日)を放送した程度に留まりました。


つまり、ゴールデン・プライムタイムで特番は放送されませんでした。


「僕たちは戦争を知らない ~戦禍を生きた女性たち~」は、朝日放送テレビ(関西地区)では高校野球中継のため8月15日深夜(16日未明)に放送されました。


また、12日は「池上彰ニュースそうだったのか!!」「サタデーステーション」(テレビ朝日)、「情報7daysニュースキャスター」(TBS)という報道・情報番組があったにもかかわらず、戦争特集が組まれませんでした。


やはりその理由は「火垂るの墓」と同じで、つらく重い内容では視聴率が獲れないからでしょう。


ゴールデン・プライムタイムだけでなく土日の日中ですらほぼ放送がないのだから、「中高年層ですら以前のように見てもらえなくなった」という厳しい状況なのは間違いありません。


その厳しい状況を裏付けているのが、「僕たちは戦争を知らない ~戦禍を生きた女性たち~」にジャニーズ事務所の中間淳太さん(ジャニーズWEST)、菊池風磨さん(Sexy Zone)、松村北斗さん(SixTONES)、阿部亮平さん(Snow Man)が昨年に続いて起用されたことでしょう。


グループの異なる4人のアイドルを選んで戦争特番に出演させたのは、若年層の個人視聴率を獲得して厳しい状況を打破したいからでしょう。


一方、「つなぐ、つながるSP 戦争と子どもたち 2023→1945」は今年は6局での放送にとどまり、大阪準キー局の毎日放送や基幹局の北海道放送、CBC、RKB毎日放送はいずれも非放送でした。


「つなぐ、つながるSP 戦争と子どもたち 2023→1945」については、テレビ番組についてかなり毒づいた調子で批評してる方のブログ(そのブログはフォローしていません)では、何としても見たいと思っていた番組なのに、地元にTBS系列局がなく、BS-TBSでの放送も系列外ネットもないことに憤っていました。


そのブログ主は、BS-TBSでの放送を要望してメールを送ったのに、全く相手にされませんでした。


その他にも戦争関連番組が見送られる理由には、「もはや新たな切り口や新事実の発見がなく、番組構成が難しい」「取材費と人的労力がかかる」「戦争の経験者も主要視聴者層も高齢化している」「コロナ禍が決定打となった(取材がしづらい、リモートも難しいなど)」など多岐にわたります。


かつて戦争を伝える報道ドキュメンタリーやドラマは夏の定番であり、戦争映画の放送も多かったです。


特に終戦の日の8月15日はそのムードを感じられる戦争特番が多く、風化を防いできただけに隔世の感があります。


放送が減ったから、「ウクライナの戦況を見てもピンと来ない」にもかかわらず「戦争映画やドラマは脚本や演出で感情を揺さぶられてつらく重いと感じる」という人が増えたのかもしれません。


それでもメディアには、視聴率が獲れなくても、取材費と労力がかかっても、新たな切り口や新事実の発見がなくても、戦争を語り継いでいくことが求められているでしょう。


視聴率や予算と労力の問題は民放各局が手を組むことでクリアし、あらかじめ「新たな切り口や新事実はない」ことを伝えておくなど、まだまだ放送を続けていけそうな余地は残されています。


ビジネスを考えればそんな理想論はあり得ないのかもしれないが、戦争特番はネットメディアには難しいテレビの強みであります。


「『火垂るの墓』を見たことがない。タイトルも内容も知らない」という人が増えていく中、民放各局がNHK任せでフェードアウトせずに、今後も戦争関連番組と向き合っていけるのでしょうか。