私の地元のケーブルテレビのコミュニティーチャンネルで以前放送していた番組に「あなたの思い出の歌」を聞く番組があって、その中でテレビアニメ「花の子ルンルン」の主題歌を挙げた人がいました。
その人は「そのころは毎日悩みがなかった」と言いました。
司会者は「ルルルン、ルンルン…」と冒頭の部分だけ歌えましたが、どんな内容かはよく覚えていませんでした。
そして、その回のランキングで「花の子ルンルン」の主題歌は1位になりました。
もちろん、彼の独断です。
テレビアニメ「花の子ルンルン」は1979年2月9日にスタートし、翌1980年の2月8日までの間に全50話が放送されました。
放送はテレビ朝日系で金曜夜7時からでした。
制作は東映アニメーションで、東映魔女っ子シリーズの作品のひとつです。
原作者は「サインはV」と同じ神保史郎さん(故人)です。
もちろん本放送を見た方もいるでしょうが、1980年代は朝や夕方にアニメの再放送が盛んに行われていた時代であり、「花の子ルンルン」は「キャンディキャンディ」や「魔法使いサリー(初代)」「魔女っ子メグちゃん」などと並んでしばしば再放送が行われていた作品なので、繰り返し見た方もかなり多いのではないでしょうか。
また、当時はテレビ朝日系列局が全国的に少なかったので、クロスネット局や系列外の局では平日の夕方に放送していたことが多かったです。
どういうわけか、富山県だけ放送されていませんでした。(富山県は現在もテレビ朝日系列局がない)
「花の子ルンルン」のことを思い出すとき、真っ先に脳裏に浮かぶのが堀江美都子さんの歌うオープニングテーマです。
作曲を手掛けたのは2021年に惜しくも亡くった小林亜星さん。
小林さんが生み出した心地よいリズムのメロディ、想像力をかきたてられる千家和也さん(故人)作詞の歌詞と共につむがれる堀江さんの優しい歌声は、決して忘れられるものではありません。
私もカラオケ🎤😆🎵でよく歌います。
カラオケでは歌手名の表示がDAMは「ザ・チャープス」、JOYSOUNDは「堀江美都子/ザ・チャープス」とそれぞれ異なっています。
小林さんはエンディングテーマの「女の子って」では猪股裕子さんと共にヴォーカルも担当していますが、実はこの曲が初めて歌ったアニソンとなります。
キャラクターデザインは後に「聖闘士星矢」を手掛けた荒木伸吾さん(故人)と姫野美智さんのコンビが担当しており、当時はまったく意識していませんでしたが改めて見てみると、確かにおふたりのデザインであることが分かります。
主人公のルンルン・フラワーは東映魔女っ子シリーズのヒロインで唯一の金髪に青い瞳の女の子です。
ヘアスタイルは外はねカール、普段着は姫野さんがデザインした立ち襟で袖に独特のフリルが付いた赤いワンピースです。
後期は服のデザイナーが変わり、白いブラウスと赤いジャンパースカートに変わりました。
さて、「花の子ルンルン」のメインストーリーですが、ある日、フランス🇫🇷の田舎町で花屋さんを営む祖父母と共に暮らす女の子ルンルンの元に、人の言葉を話す白猫のキャトーと犬のヌーボが現れたところから始まります。
初登場の時、ルンルンは男装して男の子に混じって芝そりで遊んでいたら、転倒して泥まみれになるという、おてんばなところを見せました。
でも、お家に帰って、12歳の誕生日のプレゼントに贈られたピンクのドレスに着替えると、淑やかな女の子になったルンルン。
かつての地球では人間と花の精が仲良く暮らしていましたが、いつしか人間は自然を顧みなくなってしまいました。
そこで花の精は地球を離れ、別の世界の星・フラワーヌ星に自分たちの国を作り上げていたのです。
しかし一部の花の精は地球に残り、人間との間に血を残し続けてきました。
そう、ルンルンこそが花の精の子孫である「花の子」だったのです。
キャトーとヌーボはルンルンに、フラワーヌ星の新国王の戴冠式のために必要な「七色の花」を探してくれるように頼みます。
ルンルンは祖父母を残してはいけないと一度は断りますが、祖父母は「七色の花を見つけた女の子は幸せになれる」という古い言い伝えをルンルンに教え、旅に出るよう後押ししたのでした。
キャトーとヌーボから、着たい衣装に短時間だけ変身できる魔法の道具「花の鍵」をもらったルンルンは、さまざまな人と出会うなかで魔法の力と持ち前の行動力でトラブルを解決しながら旅を続けます。
花の鍵は普段はルンルンが胸に付けているが、変身する時は手に持ち、ふたを開けて中の鏡を花に向けると、光に包まれて変身します。
花の鍵は途中からパワーアップされたものになり、変身に制限時間が付いたが変身後の姿に応じた能力が使えるようになりました。
自分の念じた姿に変身できる魔法は、ささやかながらも夢のあるあこがれ👀〰️💕の魔法でした。
なお、花の鍵は魔法少女の変身アイテムとしては初めて「魔法の鍵ペンダント」としてポピー(現在のバンダイ)から商品化された画期的なアイテムであり、後の魔法少女作品では定番の商品となるほど高い人気を獲得しています。
「フレールフレールフレール!」の掛け声とともにお姫様に変身する女の子のCMを覚えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
旅先で毎回出会う青年カメラマン、セルジュ・フローラとの触れ合いや、フラワーヌ星に反旗を翻して滅ぼされた一族の子孫・トゲニシアとその手下ヤボーキの妨害など、ルンルンの旅はいつも賑やかなものでした。
トゲニシアの妨害で最もルンルンを苦しめたのは花粉嵐で、花粉を大量に含んだ突風を吹かせるのだが、これを使うとトゲニシアの顔はシワだらけになり、元に戻るまで1週間かかります。
ヤボーキも黒い傘🌂で変身する術を使うが、もともとタヌキのような風貌なので、尻尾があるのですぐにバレてしまいます。
しかし、そんな旅にもやがて終わりが訪れます。
祖父が倒れたと知って故郷へ駆けつけたルンルンだが、そこでルンルンが目にしたのは美しい花畑の丘でした。
セルジュがルンルンと出会った人々に渡して歩いた花の種はやがて花を咲かせ、その美しさをルンルンにも見てもらいたいと考えた人々はルンルンあてに種を送ってきたのです。
この種をルンルンの代わりに祖父が畑に植え、「愛とまごころのしるし」ともいえる花畑に育てあげていました。
祖父はこの世話で少し無理して倒れただけで、そう大ごとでは無かったのです。
一安心するルンルンだが、祖父の身を案じ、花探しをやめると言い出したが、祖父に説得され再度旅立つことを誓いました。
これを聞いたトゲニシアらは花畑を潰してルンルンを旅立たせようと考え、花畑を無残に荒らしてしまいました。
花畑に残っていたつぼみを見つけ、愛おしんだルンルンの涙がつぼみに当たったその時、開いたその花は、探し求めていた「七色の花」でした。
自分の旅は無駄だったのかと悩むルンルンを、祖父は「ルンルンの行いのおかげで七色の花が生まれたのだ」と諭します。
トゲニシアは花粉嵐を起こして七色の花を奪い取ろうとするが、七色の花はこれを跳ね返し、トゲニシア達はどこかに飛ばされてしまいました。
そしてルンルンは七色の花を携えフラワーヌ星に向かい、新国王・セルジュの后として迎えられることになりました。
セルジュは写真家は表向きの顔で、実はフラワーヌ星の王国の王子様でした。
しかしルンルンは、祖父母を地球に残しておけないと苦悩します。
セルジュはルンルンの想いを理解し、弟に王位を譲ると、ふたりで地球へと旅立ち、物語は幕を閉じたのです。
テレビアニメの終了後、1980年春の「東映まんがまつり」で公開された劇場版「花の子ルンルン こんにちわ桜の国」でルンルンは日本にやって来ました。
素晴らしい物語を提供してくれた「花の子ルンルン」。
本作は前番組の「キャンディキャンディ」が大ヒットした流れから、引き続きヨーロッパを舞台としたものとなり、あこがれ👀〰️💕の海外旅行が今ほどポピュラーではなかった当時、ヨーロッパを旅して回るというコンセプトが人気を集めました。
旅の中で、ルンルンが人間として、女性として成長していく様子が描かれました。
物語の最後には、その回のストーリーにちなんだ花言葉が紹介されました。
「ルンルン気分」という流行語も本作から生まれました。
女の子のアニメだったが、男の子も夢中にさせました。
私もリアルタイムで見ていました。
ルンルンの可愛さ、ヨーロッパを旅して回るスケールの大きさもさることながら、タイトル通り見る者を「ルンルン気分」にさせてくれるからでしょう。
原作者の神保史郎さんは1994年、46歳の若さで亡くなりましたが、放送から44年経った今も作品は生きています。
脚本家の曽田博久さんは、自身が手がけた作品の中で本作をお気に入りのひとつに挙げています。
ルンルン役の岡本茉利さん、セルジュ役の水島裕さん、トゲニシア役及びナレーターの喜多道枝さん、そして主題歌を歌った堀江美都子さんが今も現役でいらっしゃるのは喜ばしいです。
これはアニメムック「ティアラ❗️」(2007年、コアマガジン)に掲載された「花の子ルンルン」の特集記事です。
「ママのあこがれ女の子ピックアップ」として取り上げられましたが、当時の男の子もあこがれました。