日本初のフルカラー劇場アニメは、1958年に製作・上映された「白蛇伝」(製作・東映)です。
テレビアニメは1963年に放映が始まった「鉄腕アトム」(フジテレビ、制作・虫プロ(旧))「狼少年ケン」(NET(現在のテレビ朝日)、制作・東映)「エイトマン」(TBS、制作・TCJ(現在のエイケン))が最初ですが、当時はまだ白黒テレビが主流で、モノクロで制作されました。
モノクロ制作だったので、使われた色は白、黒、グレーの3色だけ、グレーも3段階でした。
グレーが3段階とは少ないように思いますが、当時のテレビは画質があまり良くなかったのです。
台詞では「赤い服」とか「青い空」とか言っていたけど、テレビ画面ではグレーにしか見えませんでした。
1966年ごろから、カラーテレビが自動車、クーラーとともに「3C時代」「新三種の神器」と呼ばれて急速に普及していきました。
テレビアニメもカラー化されていきました。
日本で20世紀最後のモノクロアニメは、「珍豪ムチャ兵衛」です。
TBSで1971年2月15日から3月22日まで全26回(全49話)が毎週月~金曜午後6時から6時30分まで、関東ローカルで放送されました。
制作は東京ムービーです。
講談社の『週刊少年マガジン』に1967年31号から1968年20号まで連載された、森田拳次先生の漫画が原作です。
徳川家が平定して間もない江戸の、とある長屋に住む浪人ムチャ兵衛(声・雨森雅司)は、豊臣の末裔であるというボケ丸(声・曽我町子)という男児を貧乏ながら育て上げ、豊臣家を復興させようとするというギャグアニメでした
ギャグ漫画・アニメのせいか、江戸なのにテレビがあったり、道路標識が立っていたり、東京タワーまがいの塔が立っていたり、駕篭にタクシーの料金メーターがあったり、徳川家光(声・田の中勇)と徳川家の御庭番の忍者・カブレズキン(声・滝口順平)の密話にトランシーバーを使ったり、江戸と大坂の間に“新幹線駕篭”という駕篭が走っていたり、通貨単位が「円」で藩札が連載およびアニメ放送当時に発行されていた「C一万円券」(聖徳太子の1万円札)と同じデザインだったりなど、江戸時代と現在の風景がごちゃ混ぜになっていたという、荒唐無稽な光景でした。
今では有り得ないようなナンセンス時代劇ギャグアニメという稀なジャンルのアニメですが、新作アニメで30分の帯枠での放送だと、さぞ制作が大変だったのではないかと思いがちですが、実は本作は1968年にアニメ番組としては一度制作され、完成していた番組でした。
しかし、1968年当時のテレビ界はモノクロからカラーへの過渡期で、モノクロ番組として制作されていた「珍豪ムチャ兵衛」は、すっかり放送しそびれてしまい、お蔵入りになりかけていました。
だが3年後、ほとんどのテレビ番組がカラー化された中で突如日の目を見ました。
制作年で言えば、1969年から同局で放送された「ウメ星デンカ」とNET(現在のテレビ朝日)で放送された「もーれつア太郎」(第1作。1970年9月25日放送分まではモノクロ作品であった)の方が後発であるが、放送は本作がそれらの後になっています。
「ウメ星デンカ」は予算の関係上、モノクロで制作されました。
「もーれつア太郎」と同じ東映アニメーション作品では、それより前に放送された「魔法使いサリー」(第18話以降)(NET)「ひみつのアッコちゃん」(NET)「タイガーマスク」(読売テレビ)はカラーでした。
「珍豪ムチャ兵衛」と同じ東京ムービー作品でも、それより前に放送された「巨人の星」(読売テレビ)はカラーでした。
このまま永遠にお蔵入りになるすんでのところで、当時のTBSで設けられていた平日午後6時台前半の関東ローカル帯枠で辛うじて日の目を見たというのでした。
この枠は前番組も後番組も再生番組でした。
この番組を最後に国産のテレビアニメ番組は完全にカラー放送へ移行しました。
その後、2015年に九州朝日放送で福岡県・佐賀県ローカルで放送された5分アニメ「暗闇三太」が「珍豪ムチャ兵衛」以来、44年ぶりのモノクロアニメ番組になりました。
「暗闇三太」は「1967年制作の幻のアニメが発見された」というコンセプトで制作、1960年代の九州地方が舞台となったため、意図的にモノクロで制作されました。
ちなみに、2015年の新作アニメには、
「アルスラーン戦記」「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」(ともに毎日放送)
「Go!プリンセスプリキュア」(朝日放送)
「ドラゴンボール超」(フジテレビ)
「ルパン三世」(第4作)(日テレ)
「金田一少年の事件簿R」(読売テレビ)
「暗殺教室」(フジテレビ、BSフジ)
「ジュエルペット マジカルチェンジ」「銀魂゜」「ポケットモンスターXY&Z」「かみさまみならい ヒミツのここたま」(いずれもテレビ東京)
「美少女戦士セーラームーンCrystal」(東京メトロポリタンテレビジョンほか)
などがありましたが、もちろんカラー制作です。
主題歌はオープニングが「珍豪ムチャ兵衛」、エンディングが「ボケ丸子守唄」で、ともに熊倉一雄さん(故人)が歌っていました。
1971年頃は、一部の再放送番組を除いて既に大半の番組がカラー放送だったが、「珍豪ムチャ兵衛」は関東ローカルだったので、関東地方以外では知られざる存在でした。