10月23日より、関西テレビが大ブーム中のアニメ「鬼滅の刃」をレギュラー放送(金曜午後7時~、関西ローカル)をスタートしました。
もっとも、その前にフジテレビ系「土曜プレミアム」で2日間にわたって“一挙放送”されていました。
そこで放送されなかった分を放送するというので、フジテレビ系列局は続々とこれを放送し始めました。
関西テレビに続き、11月6日から同じフジテレビ系のテレビ愛媛でも、ゴールデンタイムの金曜午後7時からの1時間枠(愛媛ローカル)でレギュラー放送されることになりました。
最初のゴールデンタイムでの放送は関西テレビだったが、そこには特別な事情がありました。
10月16日より「劇場版 『鬼滅の刃』無限列車編」が公開され、初日から3日間で342万人を動員、46億円を超える記録的な興行収入となっています。
それを後押ししたのが、フジテレビが10月10日と17日「土曜プレミアム」で放送した「全集中!アニメ『鬼滅の刃』一挙放送」でした。
地上波ゴールデンタイムで初放送とあって、10日(午後9時~11時10分)の第一夜<兄妹の絆>の世帯視聴率は16.7%(ビデオリサーチ調べ、関東地区、以下同じ)、17日の第二夜<那田蜘蛛山編>は、15.4%と、その人気の高さを証明しました。
もっとも、一挙放送と言っても、第一夜は第1話~5話まで、第二夜は第15話~21話まででした。
「鬼滅の刃」は全26話だが、放送されたのは11話分でした。
残りの15話は、キー局のフジテレビを含め、各系列局それぞれ独自の方法で放送しています。
例えば、フジテレビは関東ローカルで12日~16日までは深夜枠で毎晩1話ずつ放送し、土曜日の17日は昼に4話、翌週24日には5話という変則的な放送です。
北海道文化放送やさくらんぼテレビ(山形県)は、12日から深夜に1話ずつ。
福島テレビは10日は深夜、12日と19日は夕方に4~5話をまとめて放送。
テレビ西日本(福岡県)は日曜昼に3話ずつ放送など、バラバラです。
そんな中、金曜午後7時のゴールデンタイムで毎週2話ずつ放送すると発表したのが関西テレビでした。
旧作にもかかわらず、ゴールデンタイムで放送とは思いきったものです。
この枠は、25年も続いた人気番組ながら、7月24日に突如終了した「快傑えみちゃんねる」の枠でした。
視聴率15%以上を誇った人気番組が、突然終わってしまったため、関西テレビも編成に困ったんでしょう。
その後は「坂上どうぶつ王国」(フジテレビ)を放送していました。
それまでの「坂上どうぶつ王国」は全国ネットだが関西では非放送の番組で、関西テレビではスペシャル版が放送されるのみでした。
しかし、視聴率は2桁を切っていました。
それが一転、「鬼滅の刃」をもってくるとは驚きました。
局としては視聴率2桁は堅いと見ました。
まさしく、災い転じて福と為すというか、人生万事塞翁が馬とでも言うべきか……。
ネット上でも、この抜擢に歓迎の声が上がっているが、中にはこんな声もありました。
〈英断というよりは稼ぎ頭の番組が少なくなってきたってことでしょうかね。〉
〈鬼滅、明日から関テレで放送やってか。まあ、この枠は前もえみちゃんねるやってたから、鬼枠って意味じゃ変わりないんやけどな〉
「鬼滅の刃」は、昨年4月にまず東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)や群馬テレビなど独立系UHF局とAbemaTVで放送がスタートしました。
直後にAmazonプライムなどでも配信され、ローカル局でも放送が始まりました。
関西では日本テレビ系列の読売テレビで放送されました。
つまり、放送局のネットワーク関係とは無関係の放送だったのです。
関東地方では独立UHFの東京メトロポリタンテレビジョン、とちぎテレビ、群馬テレビでの放送で、政令指定都市があるにも関わらず神奈川、千葉、埼玉の各県は未放送でした。(ただし東京メトロポリタンテレビジョンの受信は可能)
茨城県も未放送だが、茨城県には独立UHF局がありません。
だからこそ、系列を超えて、フジテレビ系の関西テレビで再放送されるのは異例なんです。
関西では、日テレからフジテレビが「鬼滅の刃」を奪った、なんて声もあるようです。
確かに、日テレも「鬼滅の刃」を放送したかったからこそ、「しゃべくり007」に劇場版の声優・鬼頭明里さんを呼んだりしていたんでしょう。
東京メトロポリタンテレビジョンの元アニメ事業局長を引き抜いたりもしていました。
でも、「鬼滅の刃」は前述の通り、放送局のネットワーク関係とは無関係に放送されており、制作には日テレもフジテレビも、もちろん読売テレビも関西テレビも関わっていません。
制作のアニプレックス、原作漫画掲載の集英社、そしてアニメ制作のユーフォーテーブルの3社によるアニメ作品です。
放送局が制作に関与しない深夜アニメは、放送局のネットワーク関係とは無関係に放送されます。
では、なぜフジテレビが放送権を獲得できたのでしょうか。
映画の番宣だから旧作アニメは意外に安いとも聞きますが、フジがドカンと金を出したという声がもっぱらのようです。
そもそも「鬼滅の刃」は深夜のローカルセールスでしたから、安かったのです。
おそらく1話20万円程度ではないでしょうか。
そうでなければ、独立UHF局やローカル局では購入できません。
そこへフジテレビが“一挙放送”のために、全26話を購入しました。
5億~10億くらい出したなんて声も聞きます。
ただ、2日間では全部は放送できなかったので、放送できなかった回は、系列局へ売ることで、買い付けを回収しているということでしょう。
そこで、関西テレビがゴールデンタイムで放送を始めたというわけです。
「快傑えみちゃんねる」に代わる新番組を作るとなると毎回1000万円はかかります。
それよりも、人気アニメを流した方がペイすると判断したのでしょう。
気になる結果は関西テレビのもくろみ通りとなり、23日初回放送の世帯視聴率は15.1%、個人視聴率10.1%を記録、この日の関西全番組中1位となりました。