ストップ!!ひばりくん! | 女装男子かなこのブログ

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「男の娘」という言葉が生まれる前の1981年、週刊少年ジャンプで江口寿史さんの漫画「ストップ!!ひばりくん!」(以下、ひばりくん)の連載が始まりました。


ヒロインは女装した男性という、1980年代としては飛躍的な発想のギャグ作品で、当時の少年たちに大きな衝撃を与えました。


特に、TVキャラがジャンプの表紙を飾ったのは、おそらく初めてです。


母親の死をきっかけにヤクザの大空組のお世話になることになった高校生の坂本耕作と、事情を知らなければ美少女にしか見えない大空組の長男の大空ひばりの日常を描いたラブコメディーです。


当時、少年誌でラブコメディーが流行っていたことを憂いた江口寿史さんが、ラブコメディーの主人公を女装した男の子にすることによってギャグとし、ちゃかすことによってラブコメディーのアンチテーゼとして描いたギャグマンガです。


江口さんはひばりくんを可愛く描けば描くほどギャグになることに気がつき、できる限りの可愛さでひばりくんを描きました。


つまり、ノンケの人のための笑い者に過ぎません。


しかし、ひばりくんを可愛く描いたことでひばりくんというキャラクターが一人歩きをしてしまい、ストーリー展開に行き詰まるようになってしまいました。


そのため、原稿の完成が遅れるようになり、江口さんは連載のペースを隔週にするように編集部に申し出たが受け入れられず、落稿や休載をしたり、本編とは全く関係ないストーリーを組み込んだりしました。


そうしたこともあり、連載期間は2年2か月だったが執筆話数は49話と1年分にも届きません。


最後には製作現場が崩壊したあげく、江口さんが連載を投げ出してしまい、締め切り日に逃亡したことで、連載は打ち切りとなり長く未完のままとなっていました。


しかし、27年後の2010年に発売された「ストップ!!ひばりくん!コンプリート・エディション」により完結しました。


この最終巻(第3巻)で、最後の5ページが加筆された最終話の完全版が収録され、27年越しに完結しました。


1983年5月からはフジテレビ系でテレビアニメの放送も始まりました。(東映アニメーション制作)


オープニングアニメーションで、ハートマークが背景から飛んでくる場面にかわいい子がいたら、女の子だと考えるのが37年前の普通だったようです。


現代のように「男の娘」という言葉がジャンル化し、さまざまな作品に当たり前のように存在している時代ではなかったのです。


とはいえ、「ひばりくん」が関東地方で放送されていた枠の前番組は「ぼくパタリロ!」だったので、バンコランとマライヒのような美青年、美少年間ではぐくまれる愛もあるのだということは、おぼろげながらも分かっていた人もいたようです。


それでも新番組として始まった「ひばりくん」で、美少女のふりをして主人公の耕作を誘惑していたひばりくんが、実は男だったと分かったときは「なんで男が男のことを好きだって言ってるんだろう?」と、当時放送を見た人は困惑したことでしょう。


この作品を小学生が普通にアニメを見る金曜夜7時(関東地方基準、制作した東映アニメーションのホームページの作品紹介でもこの日時になっている)に放送した理由は、今でもはっきりしません。


当時の小学生にはまだ早すぎたような気がするのです。


ひばりくんのキャラクターボイスを担当したのは間嶋里美さんで、耕作役で共演した古谷徹さんと後に結婚しました。


当時のテレビアニメは今のように土日の朝に局ごとに時間をずらして順番に見ることができるようにはなってはおらず、同じ時間帯にアニメ同士がぶつかることは珍しくありませんでした。


しかも家庭用VTRの普及はそれほど進んではおらず、家族間での厳しいチャンネル争いもあり、見たい番組を好きなように見られたわけではなかったのです。


フジテレビ系で放送されていた「ひばりくん」には、実に強力なライバルが存在していました。


というか、裏番組が強すぎました。


テレビ朝日系の「ドラえもん」です。


時代の最先端を行くジェンダー論を取り込んだアニメと「ドラえもん」。


果たして子を持つ親はどちらを見せたがるかと言えば、それは「ドラえもん」なってしまうようです。


加えて1983年10月からは、名作「銀河漂流バイファム」がTBS系(毎日放送制作)で放送されており、同じ時間帯に「ひばりくん」「ドラえもん」「バイファム」が並ぶという、ゴールデンタイム(夜7時~10時)のアニメが消えてしまった今では信じられない状況となってしまいました。


「ひばりくん」はもともと原作のストックが少なかったということもあり、放送は9か月、全35話で終了しました。


「ひばりくん」は局により放送時間が異なり、関西地区では関西テレビで月曜夜7時から放送されたため、こちらでは「キャッツ・アイ」(関西地区では読売テレビで放送)の裏番組になってしまいました。(関西テレビでは当時、金曜夜7時からは自社制作・阪急電鉄一社提供の「阪急ドラマシリーズ」を放送)


また、政令指定都市があるにも関わらず福岡県のテレビ西日本では放送されず(同局で当時の金曜夜7時からは海外ドラマ「アーノルド坊やは人気者」を放送)、テレビ新広島では翌1984年の学校の夏休み中の7月から8月に集中放送されていました。


ちなみに「ひばりくん」が放送されなかったのは岩手、秋田、長野、福井、徳島、福岡、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄の各県で、一方でフジテレビ系列局がない青森、山梨、高知の各県でも放送されました。(当時は岩手めんこいテレビ、高知さんさんテレビは開局前、TBSとクロスネットだったテレビ山口はのちにフジテレビ系列から離脱、山形テレビはのちにテレビ朝日系にネットチェンジ、その後さくらんぼテレビが開局、青森、山梨、徳島の各県は現在もフジテレビ系列局がない)


最後は打ち切られ中途半端なところで終わっており、「一体この作品は何だったんだろう?」という気持ちと、週刊でギャグマンガを連載することの恐ろしさを、読者は垣間見ることになりました。


本作はラブコメディーのアンチテーゼとして描かれたが、結局本作の流れを継いだのは「きまぐれオレンジロード」などのポップなラブコメディーになったのはなんとも皮肉です。


結局、前記の通り「ひばりくん」が完結を迎えたのは打ち切りから27年経った2010年のことでした。


もし、「ひばりくん」の終わりにひっかかりを感じている方がいるのなら、「ストップ!!ひばりくん!コンプリート・エディション」を読んでみるのはいかがでしょうか。