時空の声
プロローグ
まだ世界に神様がいたころ
まだ空をドラゴンが支配していたころ
世界に魔法があふれていたころ
そんな世界で、ある使命を背負った青年と、悲しき過去を背負った少女が出会った
一話「ハジマリ」
まどろみの中、誰かの声を聞いた。
俺を呼んでいる、そんな感じだった。だけど何を言っているのかもわからないし、興味もなかった。
ただ、俺はその声に眠りを邪魔された。もう一度、深い眠りにつきたい。
よし、寝なおそう。
そう心に決めて、その声を完全に無視しようとした。
・・・・・きて・・・・・
・・・・・や・・・・・て・・・・・・
「・・・・・さい。・・・・やく、起きなさい!!!コラ!何を居眠りをしておる!!!」
「!!!????」
耳元で響いた轟音で、跳ね起きる。その拍子に、椅子から転げ落ちて豪快に倒れた。
「あっで・・・・・」
「何をしておる!早く椅子に座りなさい!」
顔をあげると、そこには白いひげを生やした仙人みたいな老人が今にも掴みかからんという勢いで立っている。
だが、そこはかろうじて理性で抑えているようで実際には襲いかかってこない。
「・・・・ったく・・・。んで?」
「おぬし、話を全く聞いておらんかったな!?」
ええ、聞いてませんとも。
見回すと、周りは書物に囲まれた俺の勉強部屋。
古文書やら魔法の書物やらがうず高く積まれていて、今にも倒れてきそうなほどだった。
そして今は、お勉強の時間。
いつものつまらない昔話を聞いているうちに、俺は眠りについていたようだ。
「まったく、そんなでは来るべき時がきたらどうする・・・・。おぬしはな」
「はいはい。世界を監視するものとして正しい知識と経験を積み、来るべき世界の崩落の時を乗り切れ・・・・だろ?」
ここは神々のすむ国「エデン」
下界と切り離された空間に住む神々は、基本死ぬことはない。存在自体が完成されており、恐れるものはない。
たった一部を除いては。
俺は、このエデンで大切に育てられてきた。
「こら!どこに行くんじゃ!!!」
「これから婆さんとお勉強。もう時間は終わってるよ」
手をひらひらと振りながら、窓の枠に足をかける。
「ま、待ちなさい!!」
静止の声も聞かずに、俺は思いっきり窓枠を蹴った。
瞬間広がる目の前の青空。
エデンは雲の上に広がる国だ。
そして、俺がいたところはエデンの中でも上流階級の住むお城。
高いところは好きだ。だけど、この牢獄のような場所は大嫌いだった。
急速に落下していく。
どんどん加速していき、冷たい風がほほをすり抜けていく。
体全体で風を受け止めるように、両腕を広げた。
風は容赦なく体を叩く。だが、それは何にも代えがたいくらい気持ちのいいものだった。
この瞬間が、一番自由を感じる。
だが。
「?」
気持ちよく落下していくが、前方に妙なものが見えた。
キラリと光ったそれはドンドン近づいてくる。
次の瞬間には目の前に迫った。
「!?」
ゴッツン!
「いっでぇ!!!!」
落下の勢いでおでこに何かが激突する。
つい体を反転してしまい、バランスを崩した。
激痛に悶えながら、うっすらと目を開き前をみる。すると、下にあつく敷かれている雲が、徐々に薄くなっていく。
異変に気づいた時には既に遅く、いつも自分を受け止める雲は消失してしまった。
雲が晴れて目に飛び込んできた光景。
暗く淀んだ、暗い海。
「どういうことだ・・・!?」
そこは、俺の知るエデンではなかった。
冷たい風が生ぬるい風に変わっている。
そう、ここはエデンではなかった。
「どこだよ・・・!!ここはぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁ!!!!」
絶叫しながら、俺は暗い海に呑み込まれていった。