キスリングに入って
アカツメクサ
花言葉 …善良で陽気、豊かな愛、勤勉、実直
高2の夏。失恋したてで沈みがちな私。
そんなとき、宮永君がぽうん、と 救命浮き輪を投げてくれたの…。
「福山さん、僕の相談相手になってくれへん?」って…。
宮永君は1年のとき同じクラスで、その誠実な人柄に誰もが一目を置いていたヒト。
私が長いこと他の子に片思いしていたこと、きっと知ってたと思う…。
「相談相手って?」と聞くと、
「僕、文化委員長になったんだ。…福山さんて、去年の文化祭でクラスの劇の
シナリオ書いたりしてたやん? これから今年の企画を立てようとしてるんやけど、
その創造力で協力してほしいんや…」
「うん、いいよ」と、私は宮永くんの目をジッとみる。
どういう気持ちなん?って。
「あ…、僕、福山さんと兄弟みたいになりたいんや!」
おもしろいこという人やなぁ。宮永くん。
「私、4月生まれやから、おねぇちゃんだよね?」というと、彼は吹き出す。
ワンダーフォーゲル部でガッシリした宮永君と、小柄な私。
この二人なんだか親子っぽいよ?
私たちは、それからよく校内にある万葉園でおしゃべりするようになって…。
本当に文化祭の企画を考えたり、ときには好きな歌なんかの話したり。
(宮永君、森田健作好きなんだよ。イメージ合い過ぎ!)
万葉園って、万葉集に出てくる植物を集めた三角形の庭で…
中に藤棚の屋根のついた、おしゃべりできる場所があるの。
そんなところを男子テニス部の先輩方が通りかかって、
「やっ、福山さんやるね!」なんて声をかけるけど、気にしない!
だって、宮永君も堂々としてるもん。
秋の日に…
二人でバスに乗ってテニスしに行ったことあったよね。
彼は硬式テニスを少しやってたので、「軟式を教えてよ!」って誘ってくれたの。
私は「じゃ、硬式を教えてね」って。
私服で会ったの、初めてだったね。
帰りにお互いの夢の話をした…。
「絵がやりたいんだったら、目を大事にしないとだめだよ」って、
私の視力が落ちかけていること、最初に気がついたのは彼?
写真を見せてもらいに、おうちにも行ったよね!
お母さんにお昼にラーメン作ってもらって、すごく緊張した!
とても優しそうなお母さん。
出かけはるとき、「あまり帰りが遅くならないようにしてあげてよ」って言ってくれたね。
ある日、友達とデパートのスポーツ用品売り場を歩いているとき、
登山用のリュックが目に入って
「あ、これって確かキスリングって言うんよ。宮永君も持ってた」
というと、友達が
「大きいね。福ちゃん、中に入れるんと違う? 宮永くんに山に連れて行ってもらいなよ」
なんていうから、「そうだね」って笑って返したの。
そしたら、すぐそばに宮永君と同じ生徒会の役員の子がいて、こちらをジッと見てた。
『あっ…今の聞かれた?』。私なんだかすごく恥ずかしかった。
二人は恋人同士なんかじゃないんだよ。
ちょっとふざけて言っただけなの…。
次の日、私は宮永君を初めて自分から呼び出して
ゴメンネって言ったの。
「ふざけて言った言葉を聞かれちゃって…」
そしたらね。宮永君、こう言ったの。
「いつでも連れてく」。
ドキンとした。
じっとこっちを見ているんだもん。
やさしい瞳が、まっすぐ私の目を。
キスリングに入った私。
☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*
☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*
☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*
私の寂しい心を少しずつ解きほぐしてくれた宮永君。
なのに…。私はIkujinashiでした。
二人で放課後、教室に入っていったら、そこにいたブラスバンド部の同級生が
個人練習ほっちらかして…kissしてたことがありまして。
ええ、私、固まりましたとも! そんなん見たら変に意識してしまう!
私はあかんたれです。馬鹿です。
そんなやさしい彼と二人きりでいることが怖くなってしまったの。
☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*
☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*
☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*
ふたりで将来の夢の話をしたこと、ありました…
わたしがやってみたい夢…
宮永君がなりたい職業…
どちらもかなっているんです。
卒業して20年以上経って、同窓会名簿で知りました。
当時は私、「好かれてるみたいだけど、自分はどうなのかな」と感じていました。
でも、こうやってできごとを綴っているうち、
なんだか、彼への感謝と、尊敬と、そして愛おしさを感じるんです。
涙があふれます。
遅いっちゅうねん。
アカツメクサ
花言葉 …善良で陽気、豊かな愛、勤勉、実直
高2の夏。失恋したてで沈みがちな私。
そんなとき、宮永君がぽうん、と 救命浮き輪を投げてくれたの…。
「福山さん、僕の相談相手になってくれへん?」って…。
宮永君は1年のとき同じクラスで、その誠実な人柄に誰もが一目を置いていたヒト。
私が長いこと他の子に片思いしていたこと、きっと知ってたと思う…。
「相談相手って?」と聞くと、
「僕、文化委員長になったんだ。…福山さんて、去年の文化祭でクラスの劇の
シナリオ書いたりしてたやん? これから今年の企画を立てようとしてるんやけど、
その創造力で協力してほしいんや…」
「うん、いいよ」と、私は宮永くんの目をジッとみる。
どういう気持ちなん?って。
「あ…、僕、福山さんと兄弟みたいになりたいんや!」
おもしろいこという人やなぁ。宮永くん。
「私、4月生まれやから、おねぇちゃんだよね?」というと、彼は吹き出す。
ワンダーフォーゲル部でガッシリした宮永君と、小柄な私。
この二人なんだか親子っぽいよ?
私たちは、それからよく校内にある万葉園でおしゃべりするようになって…。
本当に文化祭の企画を考えたり、ときには好きな歌なんかの話したり。
(宮永君、森田健作好きなんだよ。イメージ合い過ぎ!)

中に藤棚の屋根のついた、おしゃべりできる場所があるの。
そんなところを男子テニス部の先輩方が通りかかって、
「やっ、福山さんやるね!」なんて声をかけるけど、気にしない!
だって、宮永君も堂々としてるもん。
秋の日に…
二人でバスに乗ってテニスしに行ったことあったよね。
彼は硬式テニスを少しやってたので、「軟式を教えてよ!」って誘ってくれたの。
私は「じゃ、硬式を教えてね」って。
私服で会ったの、初めてだったね。
帰りにお互いの夢の話をした…。
「絵がやりたいんだったら、目を大事にしないとだめだよ」って、
私の視力が落ちかけていること、最初に気がついたのは彼?
写真を見せてもらいに、おうちにも行ったよね!
お母さんにお昼にラーメン作ってもらって、すごく緊張した!
とても優しそうなお母さん。
出かけはるとき、「あまり帰りが遅くならないようにしてあげてよ」って言ってくれたね。
ある日、友達とデパートのスポーツ用品売り場を歩いているとき、
登山用のリュックが目に入って
「あ、これって確かキスリングって言うんよ。宮永君も持ってた」
というと、友達が
「大きいね。福ちゃん、中に入れるんと違う? 宮永くんに山に連れて行ってもらいなよ」
なんていうから、「そうだね」って笑って返したの。
そしたら、すぐそばに宮永君と同じ生徒会の役員の子がいて、こちらをジッと見てた。
『あっ…今の聞かれた?』。私なんだかすごく恥ずかしかった。
二人は恋人同士なんかじゃないんだよ。
ちょっとふざけて言っただけなの…。
次の日、私は宮永君を初めて自分から呼び出して
ゴメンネって言ったの。
「ふざけて言った言葉を聞かれちゃって…」
そしたらね。宮永君、こう言ったの。
「いつでも連れてく」。
ドキンとした。
じっとこっちを見ているんだもん。
やさしい瞳が、まっすぐ私の目を。
キスリングに入った私。




私の寂しい心を少しずつ解きほぐしてくれた宮永君。
なのに…。私はIkujinashiでした。
二人で放課後、教室に入っていったら、そこにいたブラスバンド部の同級生が
個人練習ほっちらかして…kissしてたことがありまして。
ええ、私、固まりましたとも! そんなん見たら変に意識してしまう!
私はあかんたれです。馬鹿です。
そんなやさしい彼と二人きりでいることが怖くなってしまったの。




ふたりで将来の夢の話をしたこと、ありました…
わたしがやってみたい夢…
宮永君がなりたい職業…
どちらもかなっているんです。
卒業して20年以上経って、同窓会名簿で知りました。
当時は私、「好かれてるみたいだけど、自分はどうなのかな」と感じていました。
でも、こうやってできごとを綴っているうち、
なんだか、彼への感謝と、尊敬と、そして愛おしさを感じるんです。
涙があふれます。
遅いっちゅうねん。