アイヌ、沖縄、昆布ルート

「1609年、薩摩藩が琉球に侵攻したよね。首里城が占領されたのが4月1
日。何の因果か、米軍が第二次大戦で沖縄本島に上陸するのも4月1日なん
だ。4月1日といえばエイプリールフール。沖縄は正に日本とアメリカに騙さ
れたようなものだね。ずっと騙されっぱなし」
と穏やかに喜納昌吉さんが話しはじめてくれた。
「“昆布ルート”っていうのがあるのを知ってる? これを紐解いていかない
といけない。松前藩がアイヌを使って北海道で昆布をとる。それを北前船で富
山や福井に運び、薩摩に入れる。さらに琉球に持ってきて、明へと輸出する。
逆に明からは薬の原料や高価な麝香などを輸入し製薬の中心だった富山にい
く。このルートに物だけじゃなくって“情報”も乗っていたんだろうね。“情
報”と“財源”を薩摩が握る。それによって得た力で薩摩と長州が活躍する明
治維新が起こっていった。表の歴史には出てこないけど、日本の近代化は沖縄
とアイヌから搾取した利権のうえに立っていることがわかるよね」
 昆布ルートの貿易が半端でなかったことは今もその名残を残している。昆布
が採れない沖縄において現在もその消費量が全国一、二を争うという。また富
山も同じくトップを争うほどである。
「近代日本が栄えた根底には、沖縄とアイヌの塗炭の苦しみがあり、それなく
して明治維新はなかったということ。今の日本は沖縄とアイヌ、つまり縄文か
ら搾取して栄えた弥生の時代なんだ。その弥生は、さらに漁父の利を得ようと
やってきたアメリカに飲み込まれていく。この小さい弥生と大きい弥生がくっ
ついたのが日米同盟。沖縄はこの日本とアメリカという同盟国によって二重支
配されているようなものだね。日本人にはこんな歴史があることも知ってほし
いね。ところで沖縄では、昆布の食べ方がおもしろいのを知ってる? 結ぶ。
結び昆布。これも象徴的だよね。北の縄文・アイヌと南の縄文・沖縄を昆布
が“結ぶ”。さらには縄文と弥生を結ぶ」