地味にスゴイ 東洋文庫ミュージアム | 不思議戦隊★キンザザ

地味にスゴイ 東洋文庫ミュージアム

東洋文庫のウワサはいろいろ聞いていた。東方見聞録のコレクションがスゴイとか、書庫がスゴイとか、解体新書の映像(?)がスゴイとか、聞いてるこっちとしては何がスゴイのか全然わからないウワサであった。ある日サキちゃんが東洋文庫のエクスポジションに行くというので聞いてみた。

 

「東洋文庫ってスゴイの?」

「スゴイよ!」

「東方見聞録がスゴイって?」

「東方見聞録スゴイよ!いっぱいあるよ!」

「(・・・?)解体新書もスゴイ?」

「スゴイ、スゴイ!稲妻ドッシャーン!!」

「(・・・・???)」

 

マダムの質問が悪かったのだろうか。それともサキちゃんが何かキメていたのか?要領を得ないので一緒に行くことにした。

 

行ってみると、まあ普通のこぢんまりしたミュゼといった風情である。チケットを購入するときも東方見聞録を薦められたり、稲妻落とされたりすることはなかった。展示品はフラッシュを焚かなければ撮影オッケーだったので、マダムはデジカメを握りしめて挑んだ。ところが、デジカメというか、メモリが超不安定で全然取れてなかった。というわけで、画像はiPhoneでテキトーに撮ったものとサキちゃんに貰ったものしかないが頑張って説明してみる。

 

展示は1階と2階にあり、まずエントランスを抜けた1階展示部分には安政5ヶ国条約、古事記、コンテェル君の「日本の花の芸術」「日本庭園」(いずれも英語)、源氏物語フランス語版などなど。安政5ヶ国条約って習った気がする!不平等条約とかなんとか。これってもしかして調印された本物?保存状態が素晴らしい!スゴイ!

 

他に季節柄か「日本妖怪大集合」ってのがあって、妖怪の描かれた本と妖怪の解説パネル展示。この解説パネルが良い味出してるっつーか、キュレーターの本気が伝わってくるっつーか、まあとにかく面白いパネルであった。妖怪のイラストに以下のような説明がついているのである。

 

分かりやすいいいいい!

 

ね?面白いでしょ?ほかにも

 

豆狸(たぬきようかい)

せいかく:かしこい

スキル:特大玉袋

ぶんぷ:関西地方

せつめい:ふつうのたぬきよりとてもかしこく、自分の玉袋にいきをふきかけ巨大化させることが出来る。雨がふると玉袋をかついで酒の肴を探しに現れる。「一緒に一杯どう?」

 

ちなみに豆狸は巨大玉袋をかついで鍋を持っているイラストであった。鍋は酒の肴だろうか。巨大玉袋には毛が生えて臭そうであった。うーん、一緒には飲みたくないかなあ。

 

玉袋かつぎすぎ

 

飛縁魔(ひえんま)という美女妖怪については、

 

この妖怪は知らなかったな

 

せいかく:ようえん

スキル:お色気

ぶんぷ:東京都など

せつめい:菩薩様のような姿で鬼のような心を持つ女妖怪。男を虜にして財産を捨てさせ、生血を吸って殺してしまう。

 

だそうだ。でもこれ妖怪ではなく、ただの女性なのではないか?と、我々は意見の一致を見た。女性だったら誰だって男どもを虜にしたいし、そのために頑張って色気づいてるつもりだし、ゴハンおごってくれたら嬉しいし、でも男どもが寄ってこないのはなんで?などと原因を究明していくと、自分たちが美女ではないという動かしがたい事実に気が付かざるを得ないのであった。

 

厳しい現実に立ち戻ったら、また現実逃避するため急いで2階へレッツゴーである。階段を上ってまず目にするのがトンデモナイ書庫である。古今東西の文献が、天井まで三面ぎっしり詰まっている。

 

あっ、なんか妖怪っぽい人物が!

 

圧倒される

 

これが東洋文庫の発端となった「モリソン書庫」である。モリソンさんはオーストラリア出身のアジア専門ジャーナリスト、あちこちを放浪しながら各国の文献を集めも集めたり、その数約2万4千冊!それを70億で一括買取したのが三菱財閥三代目の岩崎久弥男爵。70億って!!いま、同じようにこれらを70億以上で買い取ろうとする気概をもったパトロンがいるだろうか?

 

展示がカッコいい!

 

そして驚くべきことにモリソン書庫はただの展示品でもインテリアでもなく、閲覧申請すれば読めるのである!!まさに活きた書庫。素晴らしい。文献は研究されてこそ価値があるのだ。スゴイ!スゴイ!

 

そして東洋文庫のもうひとつの目玉、解体新書である。諸兄姉も学校で習ったであろう?蘭学医の杉田玄白が著した解剖学の医学書である。といってもマダムが遭遇したのは実物ではなく、えーと、なんと説明していいのか、東洋文庫の説明を拝借すると「エンカウンタビジョンとデジタルブックという最新の展示技法」の3D映像的なシロモノであった。

え?日本語で説明しろって?うーん、そうだな、稲妻ドッシャーン!だ。マジ説明が難しいので是非現地で確認してくれ。

 

ナレーション付きで

 

解体新書の映像を

 

見ることが出来ます(スゴイ!)

 

さて、ここからは企画展の「悪人か、ヒーローか」である。

 

ライティングが良い感じ

 

アンティークなケースに三国志

 

オシャレじゃねーか

 

歴史資料や創作物を見ていくと、当時の社会規範や支配体制の枠組みにおいて「悪」とされた人々が、一転してヒーローやヒロインとして魅力的に描かれている例が多々あります。一方、歴史上で大きなことを成し遂げた人物が、後世への教訓のために悪い例として語り継がれていることも少なくありません。本展では、多様な立場、視点によって「悪人」あるいは「ヒーロー」とされた古今東西さまざまな人物に関する記録を集め、彼らの虚像と実像に迫ります。

(パンフレット説明より)

 

で、なにが展示されているのかというと、文献だ。だって東洋文庫だもん。例えば殷の紂王と妲己では司馬遷の「殷本紀」の「酒池肉林」ページが見開きで展示されており、確かに「以酒為池、懸肉為林」の文字が読み取れるのである!なんか感動。

ついでにここでも人物の解説パネルが、こんな感じで漏れなく付随されているのである!

 

側近の証言付き(笑)

 

星付表のラベルは人物ごとで異なっていて、藤原道長は「セレブリティ」ラベル、織田信長は「おしゃれ」ラベルが付いている(笑)。なにこれ、分かりやすい!!スゴイ!

 

功績が「娘を結婚させた」ことだけ(笑)

 

戦国一の歌舞伎者

 

主にアジア圏の悪人ってことで始皇帝ありーの、楊貴妃ありーの、武帝ありーの、三国志ありーの、日本からは平清盛やら北条政子やら石川五右衛門やらがセレクトされていた。

 

こちらは中国の刑罰、解説のサブタイトルが光ってる。

 

罰ゲーム

 

確かにポーカーフェイスだ

 

こっちは流行病の風刺画。コレラや麻疹が擬人化されており、養生法の神様が病を成敗している浮世絵。鳥獣戯画から続く日本人の擬人化欲求は、本当にブレないな。

 

鬼っぽいのが病(ころり=コレラ)

 

こっちは地震風刺画。安政江戸地震の直後に出版されたもので、地震の元凶だと考えられていた大ナマズを被災した庶民が懲らしめている浮世絵。どうやら風刺の持つユーモアが、被災者の心を和らげていたようだ。
 

たのしさう

 

あ~~~、面白かった。ということで併設されているカフェにて休憩。カフェまでの小径も一見の価値あり。

 

すっごくモダン

 

気持ちい~い!(本当はクソ暑かった)

 

なぜか妙な彫刻が

 

ここのカフェは小岩井農場が経営していて、美術館によくあるなんちゃってカフェとは違い、カフェというよりレストランなのである。予約すればコースもあるしディナーもやっている。

我々はそんなに時間がなかったのでデセールの盛り合わせセットを頼んだ。美味かったので、次回はランチコースを試したいな。

 

シャーベットが激うま

 

以上、マダムの東洋文庫見聞録である。初めて訪れたが、こんなに面白いとは思わなかった!マジスゴイ。展示してあるものは地味だけど、それらを楽しんでもらいたいというキュレーターの心意気が伝わってくる素晴らしいミュゼであった。併設レストランのレベルも高い。さっそくマダムのお気に入りになった。

 

もし、誰かから東洋文庫について聞かれたら、マダムはこう答えるだろう。

「スゴイよ!解体新書が稲妻ドッシャーン!マジでスゴイよ!」

 

 

 

 

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