魔性の女になりたい! | 不思議戦隊★キンザザ

魔性の女になりたい!

魔性の女。よい響きである。女だったら一度くらい「魔性」になってみたいし、男だったら一度くらい「魔性」に翻弄されてみたいに違いない。しかし魔性の女とは、一体どんな女だ?
というワケで弥生美術館の「魔性の女、挿絵展」に行ってきた。


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魔性の女、混ぜるな危険


外国の魔性の女(例えばサロメ)のような派手さはないが、情念を感じさせる湿度の高い日本の「魔性のをんな」が勢揃い。主に明治・大正時代の作品である。それでは行ってみよう!


「地獄太夫」
図録の表紙になっている一枚。明治時代に実存した幻太夫という名の遊女がモデルで、この画のように地獄風景の打掛けを纏っていたという。もともと室町時代に「地獄太夫」と呼ばれた遊女がおり、その真似っこをしていたものと思われる。


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こりゃ美人さんだね~

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衣装の絵柄が個性的だね!

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ガイコツをインテリアにするなんてイケてる~


スプラッターな打掛といい、髑髏を部屋のインテリアにするセンスといい、明治時代のゴス系と言っても過言ではなかろう。自分になびかない男(岩崎弥之助との説あり)に、自ら切り落とした小指を送りつけるという剣呑な面も持っている。エキセントリックな不思議ちゃんといったところか。エピソードは面白いけれど、実際こんな女が身近にいたら、ものすごく面倒そうである。



「玉藻の前」
平安時代に現れた絶世の美女。その正体は九尾の狐。つまり妖狐である。


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もちろん尻尾は九本ですよ


古くは殷の妲己、天竺の華陽夫人、そして日本の玉藻の前と、次々に輪廻を繰り返しながらこの世に禍をもたらした。
殷(現在の中共)と天竺(現在のインド)は大陸繋がりだから分かるが、どうやって海を渡って日本へ来たのかというと、なんと遣唐使船に乗ってやってきたのである。ご苦労なことである。魔術持ってんだから、空とか飛んでもよさそうなものを。


殷では、裸の男女を酒池肉林で遊ばせる、熱した鉄柱を抱きつかせる、妊婦の腹を割る、足を切り落とすといった残虐な遊びを好み、天竺では、ただの暇潰しに千人もの民衆を象に踏みつぶさせて喜んだ。
残虐性は、ときにエロスを孕む。そこへ美女が絡んだら鉄板ではなかろうか。マニアな物件である。


ところで玉藻の前をモデルにした山田章博の漫画「BEAST of EAST」の第5巻はいつ出るのか?

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どっかで連載してんの?まだ終わんないの?



「人魚」
谷崎潤一郎の幻想譚「人魚の嘆き」を飾った挿絵。肉感的な人魚、構図、黒と白のバランスが、ものすごくモダンでありながら幻想的。非常に洗練されている挿絵である。


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曲線がいいな

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モノクロでこの迫力!

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ものすごく人魚


谷崎の「人魚の嘆き・魔術師」は、小説よりも挿絵がインパクトを持っている。表紙も素晴らしいのだ。ほらね!


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表紙に一目惚れ


アンデルセンの人魚姫、人魚の肉を食べて800年生きたという八百比丘尼、美しい歌声で船乗りたちを惑わすセイレーン、ローレライ。人魚にまつわる逸話は古今東西たくさんあるが、異形の者としての不思議さと恐ろしさが魅力なのだろう。その中でもマダムが好きなのが、山田章博の「人魚變生」である。また漫画でスマン。


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耽美漫画では随一


「清姫と安珍」
僧の安珍に惚れた清姫、追いかけて追いかけてとうとう蛇になって、道明寺の鐘に隠れた安珍を焼き殺す。これは魔性の女というより、ストーカーでは?という疑問はひとまず置いて、この挿絵の清姫を見てみよう。


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安珍さん、まつ毛長いっすね


蛇になった清姫は、鐘の中でしっかりと安珍に巻きついている。その表情は憎悪というより、「やっと一緒になれた」という安堵感だ。安珍は僧であるから、清姫の欲望に答えるには、こうされるしかなかったという諦めの表情だ。しかしその奥に「こうされたかった」という歓喜も見え隠れする。



「お宮(金色夜叉より)」
貧乏な書生、貫一を裏切ったお宮の最後。


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色気が漂ってんな~


ランスロットに心を奪われたシャーロットの乙女、孤独なデンマーク王子の婚約者オフィーリア。若い女には、水辺の死がよく似合う。


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参考:アーサー王物語のシャーロット

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参考:ハムレットのオフィーリア



「ナオミ(痴人の愛より)」

また谷崎だよ!ナオミといえば谷崎のナオミしかいないっしょ!男を馬にして遊ぶ女といえば、ナオミ以外にありえない。あとは、毛皮を着たヴィナスのワンダくらいだろう。おっと、アリストテレスの愛人フィリアもそうだっけ。あれ?案外女王様好きな男って多いな。


ナオミもワンダもそうだが、最初から自覚したサドだったワケではない。ナオミは譲治に、ワンダはマゾッホによって、徐々にサド気質を開花させていったのである。利害が一致した、幸福な関係といっても良いだろう。


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肉感的なスタイルもナオミの魅力




「緑川夫人(黒蜥蜴より)」

緑川夫人こそ、美貌、気品、頭の良さを兼ね備えた孤高の魔性である。簡単な説明をすると、緑川夫人は天下の大泥棒であり、狙うのは美しいものばかり。それは貴金属に限らず、ときには夫人のお眼鏡に適った生身の人間も誘拐する。夫人は小さな島を所有し、戦利品を自宅へ飾り、日々美しいものに囲まれて過ごしているのである。誘拐した美男美女は、美しさが廃れる前に剥製にして並べているのである。趣味がいいんだか悪いんだか。


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ルパンの女版(というよりルパンが緑川夫人の男版か)


しかし緑川夫人も年貢を納めるときがきた。そう、明智小五郎に追い込まれるのである。ふたりは既に面識があった。最初は敵だった明智を、いつしか緑川夫人は愛し始めていたのだ。そして逃げられないと悟った夫人は、毒を飲んで自害する。明智はすぐに気付いたが手遅れだった。夫人は明智の腕に抱かれて死ぬのである。「あなたの腕に抱かれて最期を迎えるなんて、あたし、とっても幸福だわ」と言い残して。


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緑川夫人の告白がいじらしくて良い


映画「黒蜥蜴」では、緑川夫人を丸山明宏が演じ、最高にゴージャスだ。ついでに三島も特別出演しており、剥製にされた役で丸山からくちづけされている。下心が丸見えの強引な演出だ。笑いどころでもある。


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三島さん!何やってんすか!

三島は少年マガジンに連載されていた「明日のジョー」のファンだったが、黒蜥蜴の撮影が入り発売日に買えなかったため、発売日前日に直接講談社を訪れ最新号を購入したという。おっと、また詰まらんことを書いてしまった。


さて「魔性の女」を堪能し、いつも通りブティックでお買い物。今回は新しいグッズも多数投入されており、かなり粘った挙句、ハンケチなどの小物を数点購入した。お気に入りはパスケース。


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いつもカワイイ小物だらけ


ついでに併設されているカフェへ雪崩込む。まあ普通の喫茶店だが、店員さんの大正モダンなエプロン姿がカワイイ。眼福眼福。いい感じにお腹もすいていたのでカレーを頼む。


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こぢんまりして居心地良し

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夏野菜カレー


ドリンクは魔性の女をイメージした期間限定の「紫の女王」。ブルーベリーやプルーンがミックスされたスムージー、紫色はアントシアニンの色だそうで、アントシアニンは目に良いとのこと。つまり、魔性の女は目力が強く、これを飲めば多少は目力を養えるってワケよ!これで魔性の女になれるってワケよ!


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美味しかったよ!


紫の女王をイッキしながら、魔性について考えてみた。まず絶対条件は美人であること。それも明るい美人ではなく、影を持った美人だ。そして男に精神的に依存しないこと。間違っても「あなたの言うとおりの女になるわ」ではダメなのだ。

ふむふむ。美人に関しては、まあ、今からだと難しいけど、ってゆーか無理だけど、精神的に依存しない女ってのはどうにかなりそうだ。ってゆーか、依存できる男がいればとっくに依存しているワケで。って、ちょっと論点がずれてるな。えーと、とにかく、手っ取り早く出来る「魔性」ってなんだ?

流し目だ!そうだ、高畠華宵描く美女を参考にしてみよう。目力も養ったことだし。


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目力一発でムッシューをノックアウトよ!


で、さっそくムッシューに流し目を送ったところ、ムッシューは「キャッ」って叫んで、どっかに行ってしまった。

あらやだ、そんなに効いたのかしら?それにしてもムッシューったら恥ずかしがり屋さんなのね。


二日後、「白目で睨まれて怖かった」とのウワサを、マダムは風の便りに聞いたのであった・・・。



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