話し掛けながらそのロボットの顔を見上げた時、僕は驚きで言葉を失った!

 

「‥‥‥!」

 

 

 

口の周りに大量の生クリームが付いているではないか。

 

 

 

 

隠れてケーキを食べたのか!

 

 

 

ロボットのくせにケーキを食べるのか!

 

 

 

この辺にケーキは売っているのか!

 

 

 

こいつは甘い物とか大丈夫なタイプか!

 

 

 

イチゴのショートケーキのイチゴを最初に食べるか最後に食べるか、の心理テストは本当に当たるのか!

 

 

 

 

ベイクドチーズケーキの「ベイクド」ってどういう意味なのか!

 

 

 

 

昔、ケーキによく使われてたバタークリームを食べたら、なんか「ヌフフン!」ってなるのは僕だけなのか!

 

 

 

話がそれた。

 

 

 

とにかくこのロボットはケーキを食べたようだ。

 

ということはこの近くにケーキ屋さんがあるといいことか。

 

 

少し調べてみることにした。

 

正直、嫁が無類のケーキ好きなので、ケーキ屋さんがあるのなら買っていってやろうと思った。

 

 

 

この優しさが夫婦が長く続く秘訣だと確信しながら、ひとりほくそ笑んだ。

 

 

 

とりあえずその前に、ロボットの口元に付いている生クリームを拭いてあげた。

 

気のせいか、ロボットは顔を少し赤らめたように見えた。

 

 

申し訳ないが僕は妻帯者なのでロボットをそういう目で見ることは出来ない。

 

 

気持ちはありがたくいただいた。

 

 

 

 

とにかく周りを少し歩いてみることにした。

 

 

 

2歩ほど歩いてすぐにケーキ屋さんを見つけた。

大木の幹のうねりの隙間を利用してその間にケーキ屋さんが入っている。

 

看板に「ムスカケーキ店」と書かれている。

 

入ってみることにした。

 

中からメガネを掛けた、年の頃は90歳くらいの小さいおじいさんが出てきた。

 

 

「すいません、こちらはケーキ屋さんですか?」

 

「‥‥パズーか?」

 

「え?‥いやあの、こちらはケーキ屋さんですか?ケーキを買いに来たんですが‥」

 

 

「‥はぇ?あーあー、ケーキを買いに来なすったのかぇ」

「ええ、そうです。何ケーキが売ってます?」

 

 

「‥はぇ?あーあー、ケーキを買いに来なすったのかぇ」

「ええだからなんですよ!どんなケーキを置いてはるんすか!?」

 

 

「‥はぇ?あーあー、ケーキを買いに来なすったのかぇ」

「だからそうやって言うてるでしょ!どんなケーキを置いてはるんですかー!!」

 

 

「‥はぇ?あーあー、ケーキを買いに来なすったのかぇ」

 

 

「‥‥‥‥‥‥‥。‥‥夏場臭いとことかにたかる虫は?」

「ハエ!あーあー、ケー」

「聞こえとるやないかいッ!ハエって言うたやん今!さっきまで、「‥はぇ?」やったのに今は元気いっぱい「ハエ!」って答えたやん!なんやねんこのじじい!バカにしてんのか!」

 

「‥誰がじじいじゃ。わしはラピュタ王国の血をひくものぞ」

 

「はあ?ラピュタ王国?」

 

「む?おぬし、ここをラピュタと知らんでやってきたのか?」

 

「ラピュタ?ここは龍の巣じゃないんですか?」

 

「そうとも言う。横綱[朝青龍]。でも本名は[ドルゴルスレン・ダグワドルジ]、みたいなもんじゃ。」

 

「は、はあ」

 

「おぬし、本当に何も知らんようじゃのう。よし分かった、ちょっと待っておれ。」

 

 

そう言い残して、老人は奥の部屋へと引っ込んでいった。

 

 

 

2時間ほど待った。なかなか出てこない。一度店を出て「伸び」をした。

再び入店した。

 

するとちょうどその老人も中から出てきた。驚くべきものを手にしてッ!!

 

 

 

 

                       〈つづく〉