地上を離れてどれくらい経ったのだろう。

 

まあ時計を見ると、まだ6分しか経ってないが。

後部座席の嫁は泣き疲れて眠っている。

 

 

6分しか経ってないのに。

 

試飛行にもだいぶ慣れてきた。

 

セスちゃん(注:セスナに愛着が沸いて来て、ニックネームを付けた)

には風防とかが付いてないので被ってきた帽子が飛んでいった。

 

飛行用ゴーグルを付けているので、辛うじて目は開けていられるけど、いろんなものが飛んできておデコにくっ付いてる。

 

 

さっき、誰が飛ばしたのかスーパーのチラシがおデコにくっ付いた。

今日は豆腐が安いのか。

今日は豆腐が安いのか、じゃない。

前が見えなくて危ない!

 

その前は、どこかの小学生が書いた手紙が付いた風船がデコにくっ付いた。

少し手紙の中身を拝見させてもらうと、「給食費を盗んだのは本当は僕なんです。ごめんよ、五十嵐君。」

 

見るんじゃなかった。

 

五十嵐君のことを考えると悲しい気分になった。。

負けるな五十嵐君!

 

 

その前は、ブライアントが打ち上げたのか、野球のボールが飛んできた。

その前は、恐らく新種であろう金色のとても優雅な優雅な大鳥が飛んできてデコにくっ付いた。

 

6分の間にこんなにいろんなものが飛んでくるとは。

先が思いやられる。

 

 

とりあえず、眠っている嫁と、さっき捕まえた金色の鳥とでの飛行を続ける。

 

なにやら雲行きが怪しくなってきた。天気が荒れる予感だ。

 

 

 

 

                              〈つづく〉