猛烈な暑さもなくなり、朝晩はかなり涼しくなってきました。

私は、時間があれば晩にウオ-キングをしていますが、半袖では少し寒いくらいの気候になりましたね。

毎年秋から冬にかけて、大腸がん検診や人間ドックでの便潜血検査で異常を指摘され、精密検査のため来院される方が多いようです。

そこで便潜血検査に関して基本的なことを書かせていただきます。


便潜血検査とは、消化管出血の検査として行われています。近年大腸癌は、食事の欧米化や運動不足などにより増加しておりますが、その大腸がんのスクリ-ニング(大腸がんの可能性があるかどうかのふるい分け)として普及しております。

検査方法は、化学的便潜血検査と免疫学的便潜血検査にわかれますが、おもに現在は免疫学的方法が主流となっております。

①化学的便潜血検査

オルトトリジン法やグアヤック法がありますが、化学的便潜血反応が陽性の場合上部および下部消化管の出血が疑われます。上部消化管で出血した場合、ヘモグロビンは、胃液や十二指腸液、また腸内細菌などにより分解され変性されます。化学的便潜血反応検査は、この変性したヘモグロビンにも反応するので消化管のどこからの出血にも検出されるという利点がありますが、食事や薬の影響を受けるという欠点もあり、特に検査3日前は食事制限が必要です。

②免疫学的便潜血検査

ヒトヘモグロビンに特異的に反応するので、食事制限の必要はありません。変性したヘモグロビンには反応しないため、上部消化管出血を正確に検出できませんので、おもに下部消化管出血の検査として用いられます。免疫学的検査は、定性法(陽性か陰性か)が行われていることが多いですが、定量値の測定もできます。定量値測定により、病変の大きさや疾患の推測もできることがあるので、当院では定量値法を使っています。免疫学的法の弱点として、先ほど述べましたが、変性したヘモグロビン(壊れたヘモグロビン)には反応しません。ヘモグロビンは糞便中では壊れやすく、正確な検査のためには、とったらすぐに検査に持って行くことが重要です。また持っていく場合もできるだけ涼しいところに保存することが大事です。


この免疫学的便潜血反応ですが、大腸がん健診では、100ng/ml(1ml中に1000万分の1グラム)をカットオフ(陽性と陰性の境目)にしています。この値以下からの大腸がんの方は少なく、これ以上の方を精密検査の対象としますが、だいたい検診での受診者の約5%くらいになります。そのなかの半数以上くらいに大きさに関係なく大腸ポリ-プがみつかり、またそのなかの約2~4%に大腸がんが見つかるといわれています。

つまり、大腸がん検診で要精密検査=大腸がんではありません。大腸がん以外にも、痔、腸炎、憩室、良性のポリ-プなどがあり、大腸がんは、さきほどにも書きましたが、大腸がん検診受診者の500人に1人位が見られる程度です。便潜血反応が陽性になっても決して怖がらずに精密検査を受けてください。