サッカー審判TIPS(736) SAOT
しばらくブログ更新から遠ざかっていた。1年半以上。
仕事のこと、ケガや病気でサッカーから遠ざかっていたこと、少年団コーチを引退して審判の機会が減りネタが少なくなったこと、などいろいろと言い訳があるがここでは書かない。(もう書いちゃった)
ワールドカップが始まったことで、思ったことをまたツラツラと書いてみようと思った。
まず開幕戦で話題になった半自動オフサイドテクノロジー(SAOT)だ。
専用の12台のカメラで、各選手の位置をその身体の29の部位で1秒間に50回測定、その上発信機を仕込んだボールを使い、蹴られたりした衝撃を1秒間に500回計測して判定するという。
メリット:超正確な機械判定により、VARよりも早く判定できる。(VARでは別室でオペレータがコマ送りをして目視で判断する)
デメリット:基本的になし。のはずだがなぜか再開まで時間がかかる。
ただしデメリットはないものの個人的には賛成しかねる。
(1)開幕戦でSAOTによりゴールが取り消された。会場にいた誰も(おそらく横から見ていた副審も)、どの競技者のどの部位がオフサイドだったのか、いやオフサイドという判定が提案されたのかもわからなかっただろう。
通常ならばテレビでオフサイドのシーンをスロービデオで流すなどするが、中継側も何が起こったのかわからなかったであろう。
そんな細かいことでSAOTがドヤ顔で判定を持ち込んだとしても興ざめだ。被弾したチームは命拾いしたが複雑な心境だろう。
(2)アルゼンチンがゴールを取り消された判定では画像が示された。(上記の(1)の場合も後から画像を見れた) それによると腕が出ている。あれ?腕はサッカーでは使われない部位だからオフサイドの判定とは無関係なはずでは? << FWラウタロ・マルティネスの得点が取り消された画像 (Getty Images) >>
実は肩が出ていたからのようだ。肩でのコントロールはあり得るから。
人間が確認し、判断し、判定を下す。「怪しいけど確信がない」場合は審判の裁量で反則を取らない。
ということでサッカーがグレーな部分を残していて、それが面白く、歴史に残るプレーや判定につながる。
そうやってサッカーが語られていく。
賛成しかねる第一の理由は、そのようなグレーな部分を完全に取り払うことに違和感を覚えるから。
第二の理由は、どこの国のリーグでもこんな大掛かりなセットは準備できないこと。ましてや草の根レベルの少年団やシニアサッカーでは非現実的なこと。(GLTだってVARだって、いやいや追加副審だって無理)
サッカーは世界中の老若男女が楽しむスポーツ。
ワールドカップだからといってそのサイボーグ化を推進するのはいかがなものか。
W杯であってもVARまでで十分。