まだ幼かった頃
とても体が弱くて
両親は「成人できるのか」と心配していた
学校は休みがちで
勉強もついていけず
家で本ばかり読んでいた
熱を出して寝ていると
午後になって学校から帰ってきた子供達の
楽しそうな嬌声が窓から聞こえてきて
罪悪感と焦燥感
そしてあきらめ
ちょっとだけ感じていた
穴蔵に逃げ込んだ獲物のような
安心感
そんな複雑な感情が
熱い額のあたりを
ぐるぐる回っていた
体調が悪い人は
母が面倒を見やすいように
昼間一階の居間の隣の和室に
寝かされるのが我が家の決まりで
ひんやりとした
氷枕をあててもらい
熱にうなされ不思議な生き物や動物が
現れては消えて
いろんなことを話しかけられる
そういう幻聴や幻視に苦しめられ
ふと気がつくと
母が掃除をしたり台所でトントン何か作ったり
電話をかけたりしている日常の物音
その生活を作る確かな物音が
恐ろしい夢から
私を何度も救ってくれた
ある日
やっぱり熱を出して寝ていると
父がふすまを開けて入ってきた
目をつぶってじっとしている私の
枕元に座って
しばらく黙っていたが
「弱いなあ。。。弱い」
と、つぶやいた
そして
私の額に手を当てて
「パパに似たんだよね。。。
ちゃっこちゃん、ごめんね」
と
父はほんとうにすまなそうに
小さな声で言った
とても体が弱くて
両親は「成人できるのか」と心配していた
学校は休みがちで
勉強もついていけず
家で本ばかり読んでいた
熱を出して寝ていると
午後になって学校から帰ってきた子供達の
楽しそうな嬌声が窓から聞こえてきて
罪悪感と焦燥感
そしてあきらめ
ちょっとだけ感じていた
穴蔵に逃げ込んだ獲物のような
安心感
そんな複雑な感情が
熱い額のあたりを
ぐるぐる回っていた
体調が悪い人は
母が面倒を見やすいように
昼間一階の居間の隣の和室に
寝かされるのが我が家の決まりで
ひんやりとした
氷枕をあててもらい
熱にうなされ不思議な生き物や動物が
現れては消えて
いろんなことを話しかけられる
そういう幻聴や幻視に苦しめられ
ふと気がつくと
母が掃除をしたり台所でトントン何か作ったり
電話をかけたりしている日常の物音
その生活を作る確かな物音が
恐ろしい夢から
私を何度も救ってくれた
ある日
やっぱり熱を出して寝ていると
父がふすまを開けて入ってきた
目をつぶってじっとしている私の
枕元に座って
しばらく黙っていたが
「弱いなあ。。。弱い」
と、つぶやいた
そして
私の額に手を当てて
「パパに似たんだよね。。。
ちゃっこちゃん、ごめんね」
と
父はほんとうにすまなそうに
小さな声で言った
しばらくじっと私のそばに
座っていたが
やがて
また静かに
ふすまを閉めて出て行った
父のせいではない
私が弱いのは私の問題で私の責任
私の中には
座っていたが
やがて
また静かに
ふすまを閉めて出て行った
父のせいではない
私が弱いのは私の問題で私の責任
私の中には
そう思う強い反発心があった
でも
親は私の体が弱いことを
自分の責任だと感じているんだと
そのとき初めて
はっきりと自覚したのである
強くなりたい
布団の中で
泣きながら
強くなりたい
強くなりたい
歯をかみしめながら念じた
誰かのために
自分を変えたいと
初めて本気で思った
幼い日の出来事