Nちゃんにどんな顔で会ったらいいか
結局どうしていいかわからないまま
学校に行った
そしたらビョンッ!!
と飛びついてくる物体!!
Nであった
「ちゃっこちゃん!!良かったね!!
あ、あんたが先輩の事(なぜか同級生からも先輩と呼ばれていたHであった)
好きなのかどうかは知らないけど
先輩が好きなのがちゃっこちゃんでなんかすごく嬉しかったんだ!!
まあ、私は振られちゃったんだけどね、みごとに!!
あはは!!かっこわるいったらないよね?
ピエロみたいだけどさ!!
でもあんたと先輩の橋渡ししたんだと思うとちょっと嬉しかったりしてさ!!」
明るくペラペラとそんな事を言ってくるN
その時のNの顔を
一生忘れない
鼻の頭に汗を浮かべ
うわずった声で喋り続けていた
うんうんと聞いていた私は
涙が出そうであった
Nは私の気持ちを察して
こうやっておどけた態度を取ってくれている
本来なら私の方が気遣ってあげる立場なのに
一生懸命に私の気持ちを軽くしようとしてくれている
Nの気持ちがありがたくて
涙が出そうだったが
泣いてしまったらNの気遣いが無駄になるような気がして
一生懸命我慢した
その時のNの姿は
昨日の事のように私の中で焼き付いている
Hと私はおつきあいを始める事となった
おつきあいと言っても中学生である
お互いの気持ちを確認したら
あとは別にどうということでもない
Nには本当の事を話していたが
二人が付きあっていることはまわりには秘密にし
私とHは交換日記をすることになった
学校帰りに靴箱に日記を入れる
先輩から私へ
私から先輩へ
小さなキャラクター手帳は行き来した
内容は本当にたわいのないもの
恥ずかしくてここにはかけないような
よくあるアホなのぼせたカップルのたわごとである
それでもとても楽しくて
毎日がいきなり輝いた
制服にきちんとアイロンをあてたり
ちょっとかわいいピンを買いに行ったりするような
ちいさなことが
うきうきする意味を持って毎日を彩った
私と先輩が日記を交換している間
Nは三年生のちょっと不良っぽい男の子に
夢中になり
その子と付き合い始めていた
そのころからである
なんだかNの雰囲気がすこしずつ変わり始めた
髪にはパーマがかかり
制服のスカートの丈が伸びた
化粧をするようになり
持ち前の明るさが消え
ふてくされたような態度が
明るさに取って代わった
学校も欠席がちになり
先生が家庭を訪問したりしていた
それでもそのころまでは
私とNは
電話したり家に遊びに行ったりしていた
ある日彼女の部屋に行ってみると
彼女は放心したように
部屋の壁にもたれ
「なーんかすっごく疲れちゃったよーーー」
とつぶやいていた
いろいろ話しているうちに
彼女の両親が離婚寸前になっている事
家に全くお金がないという事
自分はこのままでは中学を卒業したら
すぐに働かなければならない事になる
ということを
Nは寂しそうに語った
団地の小さな部屋で
大音量でロックをかけ
お菓子をたらふく食べていた
ちょっと小太りのかわいいN
あの明るさは消え失せ
その時のNはまるで
疲れ果てた中年の女のように見えた
「あんたはいいよねー、立派なご両親がいてさー。
先輩にも好かれてるし
恵まれてるよーー。
あーーー、あたし、なんかもう、すっごくいろいろ嫌になっちゃったーー」
そういって
彼女はいきなり床に突っ伏して
うおおおおんうおおおおん
と泣き始めた
かける言葉が見つからず
私は彼女のぶるぶるしている背中に
手を置いた
その手のひらから
Nの中の悲しみが
這い上がって
私の心に広がって行った
中学生
大人の入り口に立ち
まだなんの力も経験もないままに
大人世界の暗闇を
震えながら覗き込んでいるしかなかったあのころ
大事にしたい友達一人すらも
満足に慰める事も出来ず
もどかしく
辛かった
Nはその後
不登校になり
付き合いはしだいになくなっていって
いつの間にか引っ越してしまった
Nは自分で
先輩と私の橋渡しであり
自分が接着剤であったと
ことあるごとに自慢していた
その言葉を証明するかのように
Nがいなくなってから
先輩と私の仲も
壊れてしまった
中学生の頃
楽しかった事も多かった筈なのに
どうしてか
苦しかった胸の痛みだけが
真っ先に思い出される
今中学生の私にもし出会えるものなら
駆けて行って
抱きしめてあげたい
大人になったら
もう少し楽になれるよ
がんばれ…
と
優しく声を掛けてあげたい
結局どうしていいかわからないまま
学校に行った
そしたらビョンッ!!
と飛びついてくる物体!!
Nであった
「ちゃっこちゃん!!良かったね!!
あ、あんたが先輩の事(なぜか同級生からも先輩と呼ばれていたHであった)
好きなのかどうかは知らないけど
先輩が好きなのがちゃっこちゃんでなんかすごく嬉しかったんだ!!
まあ、私は振られちゃったんだけどね、みごとに!!
あはは!!かっこわるいったらないよね?
ピエロみたいだけどさ!!
でもあんたと先輩の橋渡ししたんだと思うとちょっと嬉しかったりしてさ!!」
明るくペラペラとそんな事を言ってくるN
その時のNの顔を
一生忘れない
鼻の頭に汗を浮かべ
うわずった声で喋り続けていた
うんうんと聞いていた私は
涙が出そうであった
Nは私の気持ちを察して
こうやっておどけた態度を取ってくれている
本来なら私の方が気遣ってあげる立場なのに
一生懸命に私の気持ちを軽くしようとしてくれている
Nの気持ちがありがたくて
涙が出そうだったが
泣いてしまったらNの気遣いが無駄になるような気がして
一生懸命我慢した
その時のNの姿は
昨日の事のように私の中で焼き付いている
Hと私はおつきあいを始める事となった
おつきあいと言っても中学生である
お互いの気持ちを確認したら
あとは別にどうということでもない
Nには本当の事を話していたが
二人が付きあっていることはまわりには秘密にし
私とHは交換日記をすることになった
学校帰りに靴箱に日記を入れる
先輩から私へ
私から先輩へ
小さなキャラクター手帳は行き来した
内容は本当にたわいのないもの
恥ずかしくてここにはかけないような
よくあるアホなのぼせたカップルのたわごとである
それでもとても楽しくて
毎日がいきなり輝いた
制服にきちんとアイロンをあてたり
ちょっとかわいいピンを買いに行ったりするような
ちいさなことが
うきうきする意味を持って毎日を彩った
私と先輩が日記を交換している間
Nは三年生のちょっと不良っぽい男の子に
夢中になり
その子と付き合い始めていた
そのころからである
なんだかNの雰囲気がすこしずつ変わり始めた
髪にはパーマがかかり
制服のスカートの丈が伸びた
化粧をするようになり
持ち前の明るさが消え
ふてくされたような態度が
明るさに取って代わった
学校も欠席がちになり
先生が家庭を訪問したりしていた
それでもそのころまでは
私とNは
電話したり家に遊びに行ったりしていた
ある日彼女の部屋に行ってみると
彼女は放心したように
部屋の壁にもたれ
「なーんかすっごく疲れちゃったよーーー」
とつぶやいていた
いろいろ話しているうちに
彼女の両親が離婚寸前になっている事
家に全くお金がないという事
自分はこのままでは中学を卒業したら
すぐに働かなければならない事になる
ということを
Nは寂しそうに語った
団地の小さな部屋で
大音量でロックをかけ
お菓子をたらふく食べていた
ちょっと小太りのかわいいN
あの明るさは消え失せ
その時のNはまるで
疲れ果てた中年の女のように見えた
「あんたはいいよねー、立派なご両親がいてさー。
先輩にも好かれてるし
恵まれてるよーー。
あーーー、あたし、なんかもう、すっごくいろいろ嫌になっちゃったーー」
そういって
彼女はいきなり床に突っ伏して
うおおおおんうおおおおん
と泣き始めた
かける言葉が見つからず
私は彼女のぶるぶるしている背中に
手を置いた
その手のひらから
Nの中の悲しみが
這い上がって
私の心に広がって行った
中学生
大人の入り口に立ち
まだなんの力も経験もないままに
大人世界の暗闇を
震えながら覗き込んでいるしかなかったあのころ
大事にしたい友達一人すらも
満足に慰める事も出来ず
もどかしく
辛かった
Nはその後
不登校になり
付き合いはしだいになくなっていって
いつの間にか引っ越してしまった
Nは自分で
先輩と私の橋渡しであり
自分が接着剤であったと
ことあるごとに自慢していた
その言葉を証明するかのように
Nがいなくなってから
先輩と私の仲も
壊れてしまった
中学生の頃
楽しかった事も多かった筈なのに
どうしてか
苦しかった胸の痛みだけが
真っ先に思い出される
今中学生の私にもし出会えるものなら
駆けて行って
抱きしめてあげたい
大人になったら
もう少し楽になれるよ
がんばれ…
と
優しく声を掛けてあげたい