〈CUP vol.2〉その14

俳優 キム・ナムギルの
対話集 後:) 談話




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キム・ナムギル-〈何でも残そう〉放送でクマのねぐらプロジェクトの撮影分が分量のため全編集されたと聞いて、個人的には本当に悲しかったです。だから、私たちの本できちんと話を扱えればいいという思いで長い話を交わしました。

ト・ヂエ-放送が編集されたと連絡を受けた時、私たちの社会ではクマに対する関心や認識がまさにその程度だろうと思いました。それが現実のようで、そう納得するような…。視聴者の大きな関心を受けることができないという判断から、ある話は選択され、且つ選択されないんじゃないかな。でも最近ちょっと不思議なのが、「フーバオ(韓国で生まれた人気パンダ)」は本当にたくさんの人気を得てるじゃないですか。私たちの後援者の方々も「フーバオのようにこの子たちも人気になってほしい。」と言われますが、事実、そのような関心は難しいと思います。ただこの程度ではないかと思います。それでも俳優さんが丸ごと編集された私たちを忘れずにこのように訪ねて下さったことだけでも本当に感謝します。

キム・ナムギル-私たちが捨てられた退役競走馬を助けるキャンペーンを始めた時も、周りではとても変わった功利事業だと思っていました。それで、何か今回のきっかけで私たちがお互いにもっと発展できる関係になればいいと思いました。今度、活動家の方々とご飯を一度奢ってあげたいです。

チェ・テギュー関心 ありがとうございます。華川にまたお越しくださいと言わないといけませんね(笑)。


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私は色々な野生生物の中で
熊を選んだわけではありません
「熊の問題が解決しないので」と
言う方がより正確です。


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チョ・アラ

キム・ミンジェ

カン・ジユン


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華川の熊のサンクチュアリ活動家たち

キム・ナムギル-みんな同じ年頃ですよね?専攻もみんな動物関連の分野だと思うし…。
動物の世話をする仕事をすると決心した特別なきっかけがありましたか?

活動家たちーこの 2人は95年生まれで、私は94年生まれです(キム・ミンジェ)。
私とチョ・アラさんは動物生命工学と動物資源科学を専攻で(カン・ジユン)
私は社会福祉学を専攻しました(キム・ミンジェ)。
動物と一緒にする仕事をしようと決心したのは中学生の時だったと思います。特別なきっかけがあったわけではなく、ペットを飼いながら自然に決心がつきました(カン・ジユン)。
私もきっかけは特になくて幼い時から動物が好きで飼育士になりたいという思いをずっと持っていて、大学を決めるとき動物関連科を選択して、動物園の実習中に動物の世話を仕事にしたいという考えがより確固たるものになりました(チョ・アラ)。

キム・ナムギル-動物福祉を考えるとサンクチュアリの方がいいと思いますが、人が勤務するには動物園の環境がいいと聞きましたが、ここを選んだ理由が気になります。

チョ・アラ-動物園で働きながら 「これが本当に動物のためなのか?」と思いました。海外には類人猿やクマ、トラのサンクチュアリなど様々な

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野生動物のサンクチュアリがありますが、国内では私が動物園に入社するまでは、サンクチュアリという概念の施設がありませんでした。動物園に勤めていて、チョ・テギュさんと出会ってクマの飼育問題も知り、クマのサンクチュアリを作ろうと努力しているニュースを聞いて参加したくなって… 流れ流れて見てみると、ここに来てましたね。ハハハ。

キム・ナムギル-ここで働いてどれくらい経つんですか?

活動家たち-華川で常勤で働いたのは昨年の7月から(チョ・アラ)?
私は昨年の12月から勤務を始め、この中では最後に合流しました(カン・ジユン)。

キム・ナムギル-では、すぐに逃げなければならない状況?ハハハ。
キム・ミンジェ活動家さんは社会福祉を専攻していたから人中心の社会福祉をしてきたはずなのに、どうして動物福祉の仕事をしようと決めたんですか?

キム・ミンジェ-進路を悩む時、漠然と社会的弱者に役立つことができる仕事がしたくて社会福祉学を選択したのですが。大学に通いながら猫を飼うようになり、自然に動物福祉に関心が行くようになりました。俳優さんも動物に感情移入をよくされるのは、多分似たような理由ではないかと思いますが、動物と人間は違う言語を使うじゃないですか。人間中心の社会で動物は大変で痛くても自ら意見を主張するのが大変なので、それを利用して

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利益を得る人がとても多いという思いをしました。その考えが結局、動物が私たちの社会的弱者ではないかという考えにつながりました。それから私も流れ流れて(笑)…。飼育クマの問題に触れ、クマのサンクチュアリを準備するのに働く人が必要だと聞いて、チョ・アラさんと一緒に始めることになりました。

キム・ナムギル-でもクマは怖い動物という認識が強いじゃないですか。体も大きくて重いので大変そうです。また、野生動物なので急に攻撃性を出したりして救出過程でも危険な瞬間があると思いますが、どうですか?

活動家たち-仕事自体が体力がたくさん消耗されることではありますが、大変なら大勢で集まって解決すればよいので、困難があっても上手く解決しています(キム・ミンジェ)。
そして、私たちには安全マニュアルがあって、何かをする時にマニュアルを基準にケア活動をしているので、ほとんど危険を感じません。ある程度適当な距離だけ維持してよく面倒を見れば、クマたちも大きく警戒したり攻撃したりしないんですよ(チョ・アラ)。

キム・ナムギル-では、今、世話をしている飼育クマを野生にすぐ放してやると、どれほど危険なのでしょうか?


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チョ・アラ-今、智異山に放し飼いにしているクマたちはウスリ(変異)亜種で、飼育クマたちはヒマラヤ亜種か、日本亜種です。それで、一旦飼育クマを今すぐ野生に放すと、生態系の乱れが起こる可能性があります。飼育クマたちはほとんど赤ちゃんの時から一生を狭い鉄格子の中で人の手で育てられてきたので、餌の活動もまともにできず、野生ですぐに適応して生きていく可能性はほとんどないと思います。

キム・ナムギル-では、他のところに送ったり、何かそういうこれといった方法もなく、ただ世話をするんですね。

活動家たち-ここはかつて飼育農場だった場所なので、施設があまりよくありません。それでサンクチュアリを作ってそこにクマたちを移住させて余生を良い環境で過ごすようにするのが目標ではあるんですが、すぐにはサンクチュアリを作る環境がないので農場施設を整備しながら世話をしているところです(キム・ミンジェ)。
土地も必要で施設を建設する費用も必要ですが、状況が思わしくないためサンクチュアリ設立以前にここで世話を続けていくのです(カン・ジユン)。
そもそもチェ・テギュさんが 「クマの寝床プロジェクト」という団体を作るときはクマたちを買う前でした。ただクマのサンクチュアリを作るという計画だけだったのに、お金や敷地があまりなくて、あれこれ調べていたところ、ここの農場主の方に華川のクマの面倒を見てくれないかと言われて、そのクマを飼いながらこの敷地を少しずつ直して、現在の私設が完成したんです。

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犬や猫より関心が足りないので
飼育クマも存在することを知っていただき、
どのように彼らが育てられ生きてきたのか
関心を持ってくれれば自然に後援が
続くのではないかと思います。


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だから、活動は一つの過程であり、最終的にはきちんとしたサンクチュアリを作ることが目標です(キム・ミンジェ)。

キム・ナムギル-それでは世話をするのに必要な費用は大体どのくらいですか?

活動家たち-13匹だった時、クマの食費だけで月200万ウォン以上かかったと思います。今はもう1匹増えたから、多分 300万ウォン近くかかるんじゃないかな(チョ・アラ)。
クマたちは冬眠するじゃないですか。冬眠する前に食欲が増すんですよ。だから、秋のこの時期が一気に上がってはいます(キム・ミンジェ)。

キム・ナムギル-今、華川クマのサンクチュアリというのに大体何人が活動していますか?

カン・ジユン-常勤職として活動した方々は、このお二人が初めてでした。それで常勤ができる前は、元々クマの世話をしていた方が世話をして、毎週日曜日に団体メンバーが来て世話をしました。それから、私まで常勤になってから華川に3人、ソウルに事務職のお一人とチョ・テギュさんまで、今こうやって回しています。常勤だけでなく、非常勤としてご一緒くださる方も20人以上いらっしゃいますし。

キム・ナムギル-仕事は難しいが、きっとこの仕事をする理由があるんだろうから …。


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活動家たち-楽しいです。動物園もここより面白くありませんでした。人ではなく動物だけを見ればいいから、それが私にも合っていると思います(チョ・アラ)。
私は他の会社で働いてるときは目的と方向性なしにただ 「やらされるから」、「お金を稼ぐために」 働いているという感じをよく受けました。ところが、ここでは価値ある仕事をしていることを毎日感じます。実はクマの世話をすること以外にも施設の点検やシャベルで雪かきをすることもありますが、とにかくその全てがクマたちのためのことですから。何より私たちがここでするすべての活動が動物福祉のための重要で価値のあることだと思います。だから私は満足して働いています(カン・ジユン)。
初期に私たちが世話を始めた時は本当に何もなかったし、施設ももっと劣悪で、子どもたちの状態も良くなかったです。でも今はかなり太って、横になって寝て、一日中餌を探しに放飼場を歩き回って疲れて寝ている姿を見ると、すごく胸がいっぱいになります(チョ・アラ)。
わたしが非常勤だったとき、飼育場に血痕が見える個体がいました。常同行動の痕跡です。週に1度来るときはあまりにも少なくて申し訳なかったが、常勤できてクマたちの世話をする時間が満たされると、常同行動も減ったんです。みんなでクマを観察して、何がもっと必要なのか悩んで実行しなければならないことが多くて、一日がとても忙しいです(カン・ジユン)。


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キム・ナムギル-じゃぁ、皆さんのことは誰が面倒みてくれるんです?

活動家たち-私自身!そして、三人でマーラータンを食べて(カン・ジユン)!
仕事がとても大変なときは「今日、マーラータンでビールを飲もう!」 それでみんな大丈夫です。それから、また食べて飲みながらクマの話をして(チョ・アラ) …。
そうそう、3人でビールを飲む飲み会です(カン・ジユン)。

キム・ナムギル-普通「ヒョンタ(現実自覚タイム)」が来るといいますよね?働きながらやりがいはありますが、それでも現実は大変で、疲れるときもあると思います。

活動家たち-私は腰も手首も痛いのに鉄の扉が開かない時、そうすると、その場で怒りがこみ上げてきます。クマが言うことを聞かなかったりしても待てるのに、施設は「何でこんなふうに作ったんだ?」 と思うんです。お金があればもっと良い施設を建てることができ、クマも人ももっと楽だろうに(チョ・アラ) … 。
私たちはあまり疲れないようです(キム・ミンジェ)。
あ~ 私は怒ってるって言ったけど、みんな大丈夫って言ってるね~ 一緒だと言っておいて(チョ・アラ)!
この人、ひとり怒りっぽいんです(笑)。私たちがクマの世話をするためには、ずっと外で働かなければならないじゃないですか。それで天気を全身で感じなければならない時が多いです。真夏の暑さや冬の極寒、そして大雪が降るときはクマたちに餌をあげる前に雪を一時間ほど掻く時があります。寒いと放飼場の鉄の扉の鍵も凍るんですよ。そしたらハンマーで割ってトーチで溶かして(キム・ミンジェ) …。

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そういうことの体力消費が大変なので、力を入れると実際にクマの世話をするときにくたくたになって、もっと何かをしてあげたくても限界が来ます(カン・ジユン)。

キム・ナムギル-では、ここで活動する時、皆さんに最も必要なものは何ですか?

活動家たち-医療脆弱地域なので病院がありません。外科的な治療を受けるためには春川まで行かなければなりません(カン・ジユン)。
施設が変わらないなら、働く人でもたくさんいると助かります。短期ボランティアにいらっしゃる方には、何か専門的にお教えする余力がないので、常勤の活動家が多くなるといいなと思います(キム・ミンジェ)。

キム・ナムギル-ボランティアはどんな人が志願できるのでしょうか?

キム・ミンジェ-体力があって、地方生活によく適応できることも重要ですが、最優先は動物福祉に対する理解ではないかと思います。また、今持っている知識よりは学ぼうとする意志や関心も重要だと思います。

キム・ナムギル-関心のある方のためにここの長所を紹介していただければ?

活動家たち-水平的な関係でお互い意見を交わし、一緒に目標を成し遂げる過程がいいと思います。他の職場のように誰かがされる仕事を受けてするのではないので、何か一つを決めても私たちの

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意見が反映される部分が長所だと思います(チョ・アラ)。
そういう組織文化はチョ・テギュさんが作っているようです。私たちより医学的にも関連知識が多く、専門的なのに私たちの意見にまず耳を傾けて尊重してくださって。そのためか、コミニュケーションがうまく行くのが長所だと思います(カン・ジユン)。
そして、クマたちを見ているといいですね。おやつや遊び、クマたちが楽しいことを考えます。また、実際にクマたちが私たちの与えたものでよく楽しめば、本当に胸がいっぱいです(キム・ミンジェ)。

キム・ナムギル-最後に、人々に話してあげたい話があるとしたら?

活動家たち-今の状況では多くの後援が必要ですが、そのためには私たちのクマのねぐらプロジェクトについてたくさん知らせるために私たちの話を広めてくだされば大きな力になると思います(カン・ジユン)。
飼育クマたちは国内に300頭も残っておらず、サンクチュアリができて残っている飼育クマ全てをサンクチュアリに収容することになれば、飼育クマ問題は早く終息することができます。なので、多くの関心を持ってくださればと思います(キム・ミンジェ)。
犬や猫よりも関心が足りないので、飼育クマも存在するということを知っていただき、どうやって彼らが飼われて生きてきたのか関心を持ってもらえれば、自然に後援が続くのではないかと思います。多くの関心と後援をお願いします(チョ・アラ)!