ちらし寿司について考えた時、私はとおい昔の少年時代を思い出す。両親と兄、弟と5人で暮らしていたずいぶん昔の話。私はちらし寿司が好きだった。
少し特別な日、いやもしかしたら普通の日に出ていたのかもしれない。食欲が旺盛な男三兄弟ということもあり、作る量もかなり多かっただろう。
ちらし寿司をうちわであおぐ母は「腱鞘炎になってまうわ!」と言うので、私は録画したウゴウゴルーガを観ながらうちわであおぐのを手伝っていた。
もう少しで出来上がるちらし寿司のにおいが、少年の心をワクワクさせた──
しかし、私にとってちらし寿司の思い出はそこで消えていた。
高校を卒業し、一人暮らしを始め、自分で料理を作るようになった。しかしちらし寿司は作ることがなかった。
それはなぜか。
私はちらし寿司のことを「子どものためのもの」と思い込んでしまっていたのだ。
20歳になるころには「好きな食べ物は海鮮丼」と言うようになり、ちらし寿司のことはすっかり忘れていた。そう思っていた。
先日のことだった。
私はどうしても海鮮丼が食べたくなり、近所のスーパーで刺身を買って自家製海鮮丼を作ろうと思い立った。
それで海鮮コーナーへ行くと、マグロとネギトロが半額になっていた。この2つだけでも十分に海鮮丼は作れる。そう思った矢先──ボイル海老とオーシャンキング(いわゆるカニカマ)も半額になっていることに気がついた。
その時、私に電流が走った。
(お…おれはいま、海鮮丼を作ろうとしていた。しかし、ちらし寿司をベースに海鮮丼を作ったらどうなる…!? 幸いにも、ちらし寿司と相性のいいボイル海老とカニカマもある。おれはもしかして、とんでもない発見をしたのではないか…!?)
そうして私は、ちらし寿司の素も一緒に買い、海鮮ちらし丼を作ることにした。熱々のごはんをパタパタとあおいだ。途中、少し手首に違和感を覚えた。しかし私はやめない。腱鞘炎? いまはそんなこと気にしてられないぜ!
そして出来上がったのは、ちらし寿司を超えた海鮮ちらし寿司であった。
いや、本当はちらし寿司にも海鮮丼にも優劣なんてなかったのだ。それを私が勝手に「ちらし寿司は子どものためのもの」と決めつけていたのだ。
しかしこの「海鮮ちらし寿司」は私の想像を超えるクオリティだった。
子供のころ好きだった「ちらし寿司」、そして成人して好きになった「海鮮丼」、その2つがハイブリッドしているのである。これはもう大変なことなのだ。
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と、ここまで熱く書いたものの、この話の終着点的なものは特になく、ただただ海鮮ちらし寿司が美味かったということで、それ以上の話は特にない。
海鮮ちらし寿司、おいしいです。
(完)
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