「人工子宮」 木森木林
 

本文は科学的架空小説で、登場人物や設定は全て架空です。現在の科学的根拠があるところは青字にしています。このことを踏まえてお読みください。

小説「人工子宮」 #アルファポリス https://www.alphapolis.co.jp/novel/730518115/106235230には、色分けしていないものを掲載しています。

 

【第2章 第6話】再会のあと

 

勿論、二人の出会いは再会の日だけで終わることはなかった。数日後にはショットバーでウイスキーを飲みながら、達吉は自分の好きなウイスキーの話をした。達吉のお気に入りはアイラ島のモルトウイスキーだ。達吉はスコットランドのベン・ネヴィス登山に行ったとき、アイラ島まで足を伸ばしていた。



アイラ島はスコットランド西北部に位置する小島である。酒造りが禁止されていた頃、閉鎖的な地域が都合よかった。また、ウイスキーの造酒過程では、水につけて発芽しかけた大麦を乾かす必要がある。ハリエニシダの小枝しかない島では燃料として原野の下にあるピートモス(泥炭苔)を使うしかなかったが、この薫煙が薫りと味わいと彩りを醸し出した。また、シェリーやバーボンなどの古い樽に隠されたことで、薫りと味わいと彩りは、より豊かなものになった。こうした必然と偶然の重なりにより、スモーキーで海の薫りをもつ琥珀色のウイスキーが造られることになった。古書を探してウイスキーの歴史を知った達吉の話を、詩歩理は聞き入っていた。

 

残ったウイスキーのボトルを持ち帰った達吉は、グラスに注いだウイスキーを口に含み、そのまま詩歩理に接吻した。熱い液体が詩歩理に入ってくる。舐め合うように舌と舌が絡み合う。スモーキーな燃える馨りが二人の身体中に拡がる。今度は詩歩理がウイスキーを口に含み達吉の口に含ませた。接吻は、こんなにも愛情を表現し、また感じ取ることができるのか?

 

達吉がサッカーの試合に出るときは、いつも静かな詩歩理が大声で声援していた。お互い研究や仕事もある生活の中で、音楽会に行ったり、スポーツ観戦したり、旅に出掛けたり、二人でいる時間を創り出すことを楽しんでいた。二人で子どもを育てたいとも思うようにもなっていたが、関係をもとうとするとき達吉は勃起困難なことも多かった。


男性の陰茎には、細い糸のような血管が集まったスポンジ状の陰茎海綿体がある。性的刺激は大脳から海綿体に伝わり、これによって海綿体への血流流入が増加すると伴に流出路が閉じられ、海綿体に血流が充満して勃起状態になる。


勃起不全EDの原因としては原因が特定できない心因性が多いが、この勃起と維持には、神経末端と血管内皮細胞における一酸化窒素NOの役割が重要なことが知られており、一酸化窒素の働きを調整する目的でPDE-5酵素活性阻害剤が使われることもある。