着物を見に行くと、店員さんはよくこんな言葉をかけてきます。
「桜は日本を代表する花ですから、春だけでなく、秋も冬も着られますよ」
「紅葉の葉っぱですが、楓(かえで)ということで、春も大丈夫」
「菊は年中OKです」
着物はそう頻繁に着るものではありませんから、特定の季節にしか着られない着物というものを、嫌がるお客さんが多いのでしょう。
確かにその気持ちはわかります。
わかるけれど…
少しばかり着物の枚数が増えてきた今のわたしにとって、グッと来るのはむしろこんな言葉。
「この着物は、春の、桜が咲く前にだけ着てください」
これまでの経験では、着物の柄と季節のルールは人によって説明が違いました。
例えば 『桜』 なら、
「国の花だから、年中大丈夫」 と言う人、
「デザイン化されたものは年中OKだけど、写実的なものは春限定」 と言う人、
「枝付きの桜は春だけ、花だけなら季節を問わない」 と言う人
・・・・・
おそらく、明確なルールはないのでしょう。
わたしには 「春にしか着ない」 と決めている着物があります。
桜の柄が織りだされた紬の着物のことです。
地色はベージュで、ソメイヨシノで染められたふんわりとした雰囲気の着物です。
そして今は 「秋にしか着ない」 柄を探しています。
例えば、紅葉が写実的に描かれたような柄の小紋。
季節限定の柄を着る。
これって贅沢なことでしょうか?
週に1回着物を着るとすると、年間50回ほどになります。
単衣、薄物の季節を除けば、袷の着物を着るのは年に30回ちょっとぐらい。
持っている着物の枚数は人によって異なるのでしょうが、
例えば10枚の袷の着物を持っていたとすると、
30 ÷ 10 = 3
平均して、一枚の着物を年に3回ずつ着ることになります。
あくまで、着物を10枚持っている人が、週に1回着物を着るとすると、という仮定です。
年3回。
案外少ない。
実際は、5回も6回も着てしまう着物がある一方で、一度も袖を通さないままタンスに眠らせている着物も出てくるのですが。
今年の春、「春にしか着ない」と決めていた着物を思い浮かべながら、わたしはこんなふうに思っていました。
「桜が満開になる前に着て街を歩いたら、すごく気分がいいだろうな」
「父が上京してくるのが3月上旬だから、そのときに着れば喜ぶに違いない」
「今着ないとまた来年まで着られないから、絶対に着なきゃ!」
桜の蕾がようやく膨らみ始めた頃、その着物を着て歩いたら本当に気持ちがよくて、なんだかちょっぴり誇らしくて、浮き立つような気持になったことを鮮明に覚えています。
なんていうんだろう。
季節との一体感。
みたいな?
みんな見て見て!ほら、もうすぐ桜が咲くよ。嬉しいね!
みたいな?
街をいくおばあちゃまに「アラいいわね~」と目を細められ、目で挨拶しちゃう。
みたいな?
結局今年は2回しか袖を通さなかったけれど、来年の3月にはまた必ず着ようと決めています。
そうやって毎年、ある季節になると着たくなる着物があるというのは、悪くない。
友人が言っていました。
「いつでも着られる着物は、いつになっても着ない着物」
「今しか着ない着物は、今絶対に着る着物」
うん、そうかもしれない。
季節限定の着物、いいと思う!
なお、今日のブログに載せた黒地に桜柄の反物は、長羽織に仕立てる予定です。
もちろん、春限定の羽織として♪
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