自分の振袖を織る16歳の挑戦 〜埼玉県深谷市・草木染め手織り工房 志楽〜 | 着物屋さんの中の人

着物屋さんの中の人

埼玉県熊谷市にて今年で創業17年になる着物屋の店主です
毎日着物を着て店頭や街中をウロウロしております

 

私のTwitterのタイムラインに飛び込んできたこのツイートに釘付けになりました。

 

 

 

 

 

 

 

16歳の女の子が自分の着物、振袖を創る。しかもそれは絵を描くのではなく糸から染めて織り上げるとのこと。そんな話は30年着物に携わった私でも聞いたことがありません。

 

 

着物には大きく分けて「染めの着物」と「織りの着物」があります。白い生地の上に筆で直に絵を描いていくのが染めの着物です。織りの着物は最初に糸を染めてから経糸(たていと)と緯糸(よこいと)を機織り機(はたおりき)で混じり合わせながら色や柄を作っていきます。経糸と緯糸の交わり方で織り上がりが変わります。事前の入念な準備と緻密な計算がないと完成しないのが織りの着物です。

 

 

その難易度の高い着物を着物製作未経験の16歳の女の子が自身の振袖製作のために挑戦するこのニュースは驚きの一言です。思わず「草木染め手織り工房 志楽」主宰の國松さんへ電話をして是非その様子を取材させてほしいとお願いしました。

 

 

 

 

 

2020年12月21日13時に埼玉県深谷市の工房へ

 

 

風もなくポカポカ陽気の冬の日

 

 

草木染め手織り工房志楽主宰の國松さん

 

 

染料を煮出しています

 

 

煮出しているのは茜

 

 

濾して染料液を寸胴に

 

 

 

 

 

この方が振袖を作られる16歳のゆずさん

 

 

染料液の温度を80度に

 

 

80度になったところで糸を染料液の入った寸胴へ

 

 

染めムラが出来ないように手早く糸を持ち上げて染料液に浸る部分を回転させます

 

 

この作業は

 

 

何度も

 

 

 

 

 

何度も

 

 

 

 

 

30分間手を止めずに繰り返します

 

 

30分後染料液から糸を引き上げます

 

 

 

 

 

染め上がり具合をチェック

 

 

余分な染料を水で洗い流す

 

 

水の中で踊る天然草木で染められた糸の美しさ

 

 

ひと束づつ絞って糸から水を切ります

 

 

 

 

 

用具の洗浄と後片付け

 

 

染料をしっかり洗い流して

 

 

 

 

 

屋内での乾燥作業。両手でひっぱり糸のシワを取る。本日の作業はここまで。

 

 

 

 

 

午後からの3時間、熱い染料液を含んで重くなった糸を30分間上げ下げをし続ける作業や中腰で冷水を使って染料を洗い流し絞る作業。取材中一言も辛い痛い冷たい重いといった言葉はありませんでした。黙々と作業を続けるゆずさんの姿に製作に対する強い思いを感じました。

 

 

草木染め手織り工房志楽主宰の國松さんは専業で染織(せんしょく)をされています。草木染めと手織りにこだわり日々作品製作を続けています。ひとつの作品に2ヶ月から3ヶ月。長いものでは半年にもなります。もし染織以外で仕事をしていたとしたらの質問に「染織以外の仕事は私にはないです」と答えられた國松さん。

 

 

ゆずさんの作りたいという想いはもちろん大切ですが本格的な染織を教えられる人と出会うことは簡単ではありません。全国的にみて國松さんのような方は数名から十数名程度だと思います。國松さんもいつかは染織を教えたいと思っていたところ今回の話が持ち上がり自身も挑戦のつもりで受けられたそうです。そんな奇跡的な出会いからこの振袖製作はスタートしました。

 

 

細かい振袖のデザインはまだこれからとのこと。学校と平行して完成まで2年から3年間の製作期間を考えているそうです。製作は始まったばかり。どんな振袖が完成するのかとても楽しみです。そしてこの着物製作を通じてゆずさんと國松さん自身もどんな風に変わっていくのかも私は楽しみにしています。

 

 

 

 

 

2020年12月21日 月曜日 15:26

 

 

 

 

 

ゆずさんと國松さんの挑戦をこれからも注目していきます。

 

 

 

 

□取材協力

埼玉県深谷市

草木染め手織り工房 志楽

Facebook

Instagram

Twitter

#振袖を織るゆずちゃん