- 「生きていることをラッキーだと思った」
- 青い車 (CUE COMICS)/よしもと よしとも
僕は、そのセリフをなぜだかおもいだしていた。
無くしたメガネは意外なところから見つかった。
職場のすぐ近くにタバコ屋さんがある。
タバコ屋さんの角を曲がろうとしたとき、僕は呼び止められた。
「おにいさん、コレね…」
タバコ屋のおばあちゃんは手にビニール袋を持っている。
「さっき床屋さんがね…」
あとで知ったことだがタバコ屋さんと床屋さん(マイクさん)は
どうやら親戚らしいのだ。
僕は、そのビニール袋を受けとる。
中には…そう!、メガネが。
左側のレンズはきれいに割れていて、なぜか半分しかない。
「きのうはたいへんだったんだってね」
そう言うタバコ屋さんに僕は
「そうなんですよ」
と答えたものの…
…実のところ断片的な記憶しかなかった。
「床屋さんは今日は…」
「今日はねえ、お店おやすみだからねぇ…」
「えっ!そうなんですか?」
僕は、それからちょっとだけタバコ屋さんと話した。
僕はようやく自分の身に起こったできごとを、なんとなくにせよ
理解しつつあった。
職場の人たちと別れたあと…、
別れたときには、すでに記憶がなかったわけだが
そんな僕がつぎに覚えているのは、(意識をとりもどしたと言うのが正しいのだろうか?)
僕は背筋を伸ばしてイスに座っていた、ということだ。
やたらに背もたれが直角なイスに、僕は座っていた。
アルコールのせいで頭はぐるぐるしている。
そんな僕が、イスに、背筋をのばして。
ここは、どこ?
「おい、だいじょぶか?」
それは、すぐに判明する。
プーさんみたいなやさしい目をしたおおきな男の人が僕をゆすっている。
僕は、マイクさんのお店、そう、床屋さんの待合室のイスに
座らされて、いや、座らせてもらっていたようだった。
もちろん、とっくに閉店時間はすぎている。
つづく。
では、また。