「まかしてくださいよ。ちゃいちゃいっとやっつけちゃいますよこんなん」
「そう。ありがとう。お願いね」
敬語を使わずにいるのに気がついて、私はなぜか恥ずかしさをおぼえた。
だって…。
「寒くないの?そんなカッコで」
「オレ?だいじょぶッスよ。若いから」
若い、から。そう、若かったのだ。
くたびれたおじさんがやってくるのだと私は勝手に想像していた。
私は『おじさん』は遠慮のない生き物であり)、
その遠慮のない生き物とふたりっきりで過ごさなければいけない、
偏見だといわれても、その状況は不安で仕方なかった。
だから、正直ほっとしていたのだ。
「奥さ~ん」
「えっ」
「あ。すンません、奥さんとかって」
・・・・・・。
奥さん、って…
「なにか?」
「ちょっと頼みあるんスけど、いいッスか?」
エアコンの修理にやってきた若い男。
茶髪の電気屋さんは初対面の私に頼みごとがあると言う。
遠慮のなさと若さはもしかしたら何の関係もないのかもしれない。
私は、率直に、うろたえていた。
しかし、男の声のトーンは低く重く、いかにもな真剣さで、
もうすっかり私をとらえてしまっていた。
「なに?」
「あぁ、その、ラ…、あぁ、そっかわかんねえよな…」
どうやら男は私に道具をとって欲しいらしかった。
「コレ?」
「そうそうそうそう。ソレ。すんません。あざぁーす」
そう言って、無邪気な笑顔をみせる。
あんなにも真剣なトーンで、そんなにも簡単なことを…
思わず笑顔を、私も、していた。
いつしか私は男のつけていた香水のかおりに馴れ始めていた。
つまり、それは、私のどこかが麻痺しはじめていたということだ…
…なんてね。
カコイ電気のおにーさんは(いたとして)
さぞかしカコイイ(かっこいい)んだろうね。
エアコンが壊れたときは電話してみたいと思います。
では、また。