先の連休中、ツキノワグマに関する特集を偶然テレビで観ました。

温暖化に関連した獣害、里山の問題etc・・・。まあ、そういう難しい問題は行政に丸投げするとして。

見方によっては、プーさんですからなかなか愛らしい容姿してるんですよね、彼ら。でも反面、かの動物は、ニホンオオカミ絶滅後、本州に生息する野生動物の生態系において、食物連鎖の頂点に君臨する獣。

半年ほど前、日本を代表するあるソロクライマーが山中をジョギング中にクマに襲われ大ケガを負ったという出来事がありました。

凍傷により四肢の指11本を失うも、今なおクライミングに対する情熱は衰えしらず。彼のそんな不屈の闘志に、なまくらなぼくなど敬愛することしきりだっただけに、その一報は少なからず衝撃でした。

しかしながら、寒風吹きすさぶ何千メートルの異国の雪山。そこにそびえる断崖氷壁を独り身でガンガン攻める無尽蔵の体力を具備する男に深手を負わせた獣と、テレビに映るクマのイメージが今一つ重ならない。その事故も場所は奥多摩ですから、クマもツキノワグマのはずなんです。

まあね、端的に言うと、テレビ観てて、

「オレ・・・勝てるんちゃうかな?」

と思ったわけです。

加えて、20代の頃は、友人宅の玄関に飾られたクリスマスツリーにすら気がつかないほど自然に興味を示さなかったんですが、加齢とともに花鳥風月、草花を愛でるマインドの芽吹きをわが身に感じる昨今。この勢いはとどまるところを知らず、予想では、あと10年も経れば、トレッキングなんてしたくなる手応え。

ゆえに、明るい未来のため、クマとの遭遇戦に備えるため、成人の日に動物園へ敵情視察に行って参りました。

『敵を知り、己を知れば百戦して危うからず』

孫子の兵法の実践ですね。

結論から言いますと、岡崎動物園にいるツキノワグマには、なにひとつ負ける気がしませんでした。ていうか、人に飼われる環境に見事に適応し、微塵も野性を感じさせないそのだらけきった楽隠居の風情では、『仮想ワイルド・ベアー』をイメージするのにまったく参考になりませんでした。ガッカリだぜ。

まあ、「腕立て100回」可能な肉体を堅持していればなんとかなりそう、そんなニュアンスでしょうか。もちろん、遭遇したときは、『遁走第一』、奇襲を喰らうなどもってのほかなのは言わずもがな。

こうして、『机上の空想戦』に圧勝して気を良くしたぼく。

「近場でのトレッキングに熟練したら、次は『より大きな自然と対峙するため、北海道へ!』なんて思うかもしれないな」

ということで、KING of KINGSヒグマの動向を探りに、ヒグマのおるオリに移動してみました。

オリに近づくにつれ濃くなる肉食獣特有の強烈な獣臭。ツキノワグマを二周りほどデカくした雄大なフォルム。狭いオリを八の字に移動するときに体毛の上からも容易に見てとれる発達した筋肉群。そして何より、それ自体が凶器のような引くくらいの悪人ヅラ。かつ、粗暴の枠に収まらない知能を感じさせる怜悧な眼差し。

結論を申すと・・・なにひとつ勝てる気がしませんでした。

野生のエナジー全開で獲物を粉砕しているときも、頭のどこかは常に冷え切ってる。規格外のパワーにいやらしい狡猾さを兼ね備えた完璧な殺戮マシーンですね、ヤツは。

あの圧倒的な存在感。鉄格子に守られたオリの前で対峙するだけで、ぼくの尿道が破裂しそうでしたもん。

『君子危うきに近寄らず」』

ぼくは北海道には絶対行きません。

最後に、黙ってクマを睨みつけるぼくのニヒルな佇まいに魅了された家族連れのちびっ子に、

「なにしてんの?」

と尋ねられたとき、

「将来の遭遇戦に備えて、クマの実力を測りに・・・」

なんて回答が、保護者各位からヒグマ以上の『危険なヤツ』と認定されることくらいは、わかっているつもりです。


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