満たされているすべてが。

そう思った次の瞬間から不安を探す。目を閉じて、手を伸ばして、指先でまさぐって。一番触りたくないものを何も聞こえないくらい懸命に探す。見つからないことがさらに不安を、闇を大きくする。

闇の中を走る。探す。それでも、何も見つからない。焦る。焦りがからだを湿らせる。伝う汗が、からだの温度を下げていく。冷えた頭で少しだけ考える。

「ここは、どこ」

自分の場所さえわからなくなった。

からだがどんどん冷たくなってきた。その場に座り込んだ。もう動けない。動けない自分に、すべてがどうでもよくなってきた。

「もう、いいか」

あきらめの声が聞こえたとき、耳を塞いでいた自分に気がついた。目の前が明るくなったとき、目を閉じていた自分に気がついた。冷えたからだに外の風は、暖かかった。ありもしない不安を探して、自分さえも見失う。最初からそこには、なにもなかった。

すべて、自分の仕業(せい)だと気がついた。

あきらめたら、心地よかった。

けど、本当は闇の中を走った時点で、なにもないことに気づいていたのかも。何も見えない場所を走るなんて、ね。

悩みに、考えることに酔う、人間らしい。



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