我が街、京都もそこかしこにクリスマスの装いが施されることしきりであります。
そんな浮かれた街並みを、38歳と35歳のおっさん二人でランデヴー。
いまだ何らクリスマスの見通しを持たない僕たち。来るべき日のための秘策を互いの胸に温め合うカポウたちとすれ違うたびに、彼ら彼女らが身にまとった幸福の光に目を細め、なぜか己らも浮き足だってしまう僕たち。
ゴミ先輩:「副隊長、オレらは間違いなく負け組やな」
副隊長:「ゴミさんは、やっぱり寂しいですか?」
ゴミ:「いや、困ったことに、なにひとつ口惜しくない・・・」
副:「でしょ。僕たちには勝ちも負けもないんですよ」
ゴミ:「達観か・・・」
副:「違いますよ。試合にも出してもらえない。勝敗もつかない蚊帳の外。負け組のさらにワンランク下の男ですよ、僕らは」
ゴミ:「なるほど、オレらは恋愛的に死人(しびと)か」
副:「そうそう。戦いの盆の上にすら立ってないから、敗北感にまみれることもないし、そもそも、死人ですから口惜しいなんて感覚すらないわけです」
ゴミ:「副隊長、実は3日ほど前に会社の女の子にフラれたんよ」
この人は、学生の時から大切なことも、そうでないことも同じ抑揚で話す。だから、聞いている方は常に集中を強いられる。
副:「そうなんですか。じゃあ、ゴミさんは負け組じゃないですか。良かったですね」
ゴミ:「うん、そうやな」
負け組にカテゴライズされ、存外に嬉しそうなゴミさん。僕は、この人が好きだ。
ゴミ:「でもな、フラれたと言っても、別に告ったわけでもなくオレの心の中で終わった。そういうことや」
副:「38歳のおっさんの片思いですか」
ゴミ:「そうや、気持ち悪いやろ」
副:「そんなことないですよ」
ゴミ:「おまえは、いいヤツやな」
副:「いや、興味すら湧かない。それだけです」
ゴミ:「・・・」
副:「ちなみに、どうして気持ちを伝えなかったんです?」
ゴミ:「うん、彼女の自意識、心象風景を自分の中に再現したときに、オレのことを好きになってくれる要素を見出せなかったんや」
副:「その彼女、いくつ?」
ゴミ:「短大卒やから、20歳かな」
副:「ゴミさん、先に失礼を謝っておきますね」
ゴミ:「うん?」
副:「死ね」
ゴミさんはM心がくすぐられるからか、昔からこの類の言葉責めを富みに喜ぶ。
ゴミ:「でも、やっぱり、好きくらいは言ってもよかったかな」
副:「ゴミさん、その娘のこと、本当に好きやったんですか?」
ゴミ:「うん、たぶん」
副:「じゃあ、言わなくて良かったんじゃないですか。好きな女の心象を読み違えるなんて、まず、あり得ないでしょ。それに興味すらない38歳のおっさんの恋心なんて、20歳の娘からしたら公害以外の何物でもないですよ」
ゴミ:「そうか、なるほど」
副:「でしょ。告訴されなくて良かったですね」
ゴミ:「副隊長」
副:「はい?」
ゴミ:「あとで、キスしていい?」
副:「ダメです。殴るのはアリですが」
僕は、ゴミさんの笑う顔が好きだ。
ゴミ:「ねばり強さと、あきらめの良さ。どっちが大切なんやろなぁ」
副:「そういう難しいことは、暖かくなってから考えましょうよ」
ゴミ:「オレにも、春はやって来るんかな」
副:「季節はね」
そのあと、ゴミさんといつもの店でしたたかに飲んだ。きっかけは忘れたが、僕はゴミさんの手相を見てあげた。むろん、僕に占いの素養など微塵もない。
しかし、酩酊していたからか、持前の天然ゆえか、泥酔していた僕には判断できなかったが、存外にゴミさんが喰いついてきたので、この試みは意外に盛り上がった。隣のスツールに腰掛けた見知らぬ女性を巻き込むほどに・・・。
結果、今週末にゴミさんは、その見知らぬ女性客とデートすることになった。
ゴミさん、これから僕のことを『ハル』って呼んでください。そして、次は、僕をこの『恋の昭和基地』から救助しろ。
寒いわ。
※mixiからの転載