『あの人も、私と同じ思いでいてくれているのだろうか?』



人が人を好きになると胸に芽生える自然な感情・・・『恋の胸騒ぎ』


好きな人のことを思って眠れない夜。寝返りの数だけ脳裏に浮かぶあの人の笑顔が、容赦なく無垢なハートに火を注ぐ。焦がれ過ぎて千々に乱れる恋心・・・『恋の小火(ぼや)騒ぎ』



こんな夜毎の『胸騒ぎ』『小火騒ぎ』に騒ぎ疲れたとき、人は想い人に真心を吐露するのだろう。



・・・と、いつものように適当な書き出しで始めましたが、恋心を告げるタイミングなど、人それぞれでしょう。どこぞの土着信仰における宗教儀式の如く、ベッドの上で狂ったように寝返りを連打した後でないと告白できない、そんな規制はもちろんありません。


そして、自分の秘めた想いを白日の下に晒すタイミングは千差万別であるように、そのアプローチの手法も種々様々。


先日、こんなことがありました。


友人との待ち合わせ場所の喫茶店。早く到着しすぎた僕は、ひとりでお茶をズルズルと啜っていた。閑散とした店内、僕の真後ろには一組の男女が着座していた。暇を持て余していた僕は、聞くとはなしに二人の会話に耳を傾けてみると、僕の大好物、『恋バナ』だった。


漏れ聞こえる会話から推察するに、男の方が女性に『ラブ・セッション』を持ちかける、そんな設定。足を組んでタバコを燻らせながらの『我、関せず』スタイル。表面上はそんな猿芝居を熱演しながら、己の聴覚をデビル・イヤー(地獄耳)にまで研ぎ澄ます僕。


男:「キミは自分が思っているよりもずっと繊細で傷つきやすい人なんよ」


女:「・・・」


男:「僕には本当の自分を見せていいんよ」


女:「・・・」


抑揚は穏やかながらも、なお渾身の口説きを続ける男。すると、今まで黙っていた女性が、ひとつ咳払いをして彼の力説にカットイン。そして、一撃。


「あの、私ら、言うほど仲良くないやん。あまり、話したこともないし。正直、その『僕だけは知ってる』的な発言、ウザいねん」


背中越しのやり取りゆえ、彼らの表情まで読み取ることは適わなかったが、彼が一瞬にして凍りついたであろうことは想像に難くなかった。


そんな二人の顛末を垣間見る、ではなしに垣間聞いた僕はと言えば・・・件の女神の『鉄槌』に喝采を送りたい衝動に駆られたわけである。


正直、僕もこういう口説き方はあまり好きではない。「繊細で傷つきやすい・・・」、こんなものは人間誰にでも当て嵌まることで、それは外見上、明朗快活な人であっても例外ではない。『光が強ければ強いほど、陰影は濃くなる』ことを考えると、日頃、闊達な人ほど抱える陰の部分はむしろ色濃いのではないだろうか。


そう考えると、彼の主張は陳腐な占い師のテクニックである、相談者が話し出す前に、


「人間関係に悩んでいるでしょ?」


と、さも『何でもお見通し』としたり顔でのたまうロジックに近しい感じがする。


占いに行くほどなのだから、悩みを抱えているのは当たり前で、しかも、健康、人生、恋愛、何に限らず因果を辿れば『人間関係』に帰着させるのは容易、否、このケースでは阿漕(あこぎ)とさえ言いたくなる。


しかも、二人の人間関係を構築する前に、彼女の内心の機微を論ずるなど、『前戯なしの性行為』類似の失礼で尚早な行為ではないだろうか。


人を愛する、好きになる感情は尊い。それを責めるつもりはない。しかし、「好きだから」、これを言い訳にするのも、僕は良くないことだと思っている。


まあ、一番良くないは、他人の秘事に耳をそばだてる暇な男なのですが・・・。


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