こうして夜のカラヤン の指揮の下、第1回「ジャガ恋愛推進委員会」全体会議の幕が切って下ろされた。


水を打ったような静寂と緊迫感が教室全体を覆う。もちろん、サクランボ畑からは物音1つ聞こえてこない。それもそのはずである。ここで己の童貞を棚に上げて非童貞(生き仏)の委員長(勝己)、副委員長(僕)である我々を差し置いて発言するほど不遜な輩はこの畑にはいない。そのサクランボ軍団の恭順の姿勢に満足気な笑みを浮かべた生き仏の1人である勝己が堰(せき)を切って話し始めた。


「ええか、恋の基本は身だしなみと下準備や」


今ならこんな陳腐な発言をしたところでスルーされるのがオチであろうが、この時、僕らは16歳。ここは童貞率96%の男子高。サクランボ達は神の啓示を聞いたとばかりに恍惚の表情を浮かべて一様に勝己を見つめた。

覚えておいて欲しい。サクランボ畑における非童貞(生き仏)の発言は千金の重みがあったという事を。この時、もう1人の生き仏である僕は、「このアホ、前に一緒に立ち読みした雑誌HOT DOG PRESS夏の増刊号『夏の恋は身だしなみと下準備』をそのままパクりやがったな♪」と内心、噴き出しそうになったのだが、悲しいかな恋愛童貞の僕は、ここで勝己の揚げ足を取って笑いを得る事より、対案が思い付かない己を隠すため、「さもありなん」といかにも意味ありげな相槌を打つ方を選んでしまった。今ならこんな猿芝居、誰もが茶番だと気付くのであろう。しかし、覚えておいて欲しい。サクランボ畑における生き仏の相槌も千金の重みがあったという事を。


2人の生き仏の見解が一致した意見に異論を挟むような不信人な者は、日蓮宗を校是とする我が男子高にはいなかった。


さっそく、この方針に従って作戦会議が進められたのだが、まず、身だしなみの項目で最初に目に付いたのが、ジャガのチリチリの天然パーマ。ストレートパーマをあてる提案が、当然のようにサクランボ畑の一員からなされたのだが、ここで揉めたのが日頃、我々を真性ドMと看做しているかの如くガチガチに縛りつけいた厳格な校則の解釈について。もちろん、校則には「パーマ禁止」の条項が掲げてあった。しかし、このパーマは、髪の毛をクリクリにすることを指しているのであって、チリチリを伸ばすのはアリなのでは?こんな下らない事で当時の僕らは激論を交わしていた。


出た結論は、保留。安易な甘読みは体罰全盛のあの時代では絶対に禁物であり、一歩間違えれば一蓮托生、全員がSMルームならぬ生徒指導室に連行され、教員免許がなければヤ●ザにしか見えない生徒指導部長による地獄の責めを負うことになりかねない。


いきなり出だしで躓(つまず)いた我々童貞騎士団は、教室中に充満する己らの下半身から発せられたクリの花類似のむせ返るような悪臭に抗いながらも、次の一手を繰り出すべく、帰宅後のお楽しみ、1人オーケストラの時間を削ってまで友人ジャガのために無い知恵を懸命に絞るのであった。


次回、「イタリアの種馬」につづく


現在、薄氷を踏む感じでオヤジブログ2位☆

「種馬を走らせたい!」と思って下さる方は

クリック、よろしくお願いします♪

      ↓
 にほんブログ村 オヤジ日記ブログへ